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放蕩王子は勉強の重要性を説く


「さて、この作戦において、まずは何をすべきかわかるか?」


 クリスハルトは二人に問いかける。

 その問いかけに二人はお互いの顔を見合わせ、少ししてから答える。


「私と殿下の誤解の仲を周知させる、かしら?」

「それよりも三角関係に見せる方が大事なんじゃないのか?」


「二人とも違うな」

「「えっ!?」」


 クリスハルトの言葉に二人は驚く。

 どちらかは合っていると思っていたのだろうが、クリスハルトの求めていた答えとは違っていた。


「たしかに、俺とセシリア嬢の誤解の仲を周知させることは重要だろう。だが、それは時間をかけてやっていくことであり、早急にやるものではない」

「……なるほど」


「そして、三角関係はそのさらにあとだ。二人の関係が周知していないのに、三角関係が成り立つわけがないだろう?」

「……たしかに」


 クリスハルトの説明に二人は納得する。

 先を見据えていろいろと考えている辺り、頭がいいということは二人も理解できた。


「まずは、二人の成績を上げることだ。つまり、勉強を行う」

「「は?」」


 だが、その頭の良さは時に常人を置き去りにしてしまう。

 クリスハルトから告げられた内容に二人は思わず呆けた声を出してしまう。

 そして、少ししてからセシリアが文句を言い始める。


「なんで勉強なんですか? それこそ時間をかけてやるものでは……」

「その通りではあるが、これは早めにやるに越したことはない。勉強は時間をかけて身に付けることが大事なことぐらい理解できているだろう?」

「う……」


 クリスハルトの指摘にセシリアは反論できない。

 Aクラスに入ることができた彼女は勉強のやり方を理解している。

 一朝一夕で短期的に身に付けることよりも、何度も繰り返し勉強をして長期的に身に付けることの方が自分のためになることも……

 彼女はそれを繰り返してきたからこそ、今の成績なのだ。


「でも、勉強なんて必要なのか? この作戦で必要だとは到底思えないんだけど……」

「ほとんどがお前のためだがな」

「は? なんで?」


 疑問に思うフィルにクリスハルトははっきりと告げる。

 その言葉にフィルは驚いてしまう。

 どうして自分のためなのか、まったく理解できていなかった。


「正確に言うと、作戦には直接関係はない。これは作戦が成功した後、二人に必要になるからこその勉強だ」

「……商会の経営のため、ですか?」

「ああ、そういうことだ」


 クリスハルトの言葉にセシリアは気付く。

 流石にここまで伝えれば、彼女なら推測することができたようだ。


「商会? それって、クラウド商会のことだよな?」


 流石にフィルはまだ気づいていないようだった。

 クリスハルトはため息をつくと、説明を始める。


「この作戦において、お前とセシリア嬢の仲がレイニー男爵家とクラウド商会の間で認められないといけないことは理解できているな?」

「それぐらいは理解できているよ」

「そのために必要なことはわかるか?」

「え? それはレイニー男爵がセシリアを任せてもいいと思う男になること?」


 クリスハルトの質問にフィルは答える。

 その答えは漠然としているが、あながち間違ってはいない。

 うっすらとは理解できているようだった。


「お前がいくら成長したところで、レイニー男爵が認めることはないだろう。必要なのはセシリア嬢を任せても大丈夫だという要素──クラウド商会が大きくなることが大事なんだよ」

「それは殿下が手伝ってくれるんだよな? だったら、俺たちが勉強をする必要はないんじゃ……」

「お前は馬鹿なのか?」

「は?」


 フィルの言葉にクリスハルトは盛大にため息をつく。

 あまりにも馬鹿なことを言うので、呆れずにはいられなかったのだ。

 そして、「馬鹿」という言葉に反応して、フィルもキレそうになっていた。


「たしかに、クラウド商会を大きくするために俺も手伝いはする。この作戦を成功させるために必要なことだからな」

「じゃあ、俺の言っていることは間違いじゃ……」

「俺がいなくなった後はどうするつもりだ?」

「え?」


 クリスハルトの指摘にフィルは呆けた声を出す。

 咄嗟の質問に頭が回らず、答えを導くことができなかった。

 そんなフィルにも理解できるよう、セシリアがかみ砕いて説明をする。


「この作戦が成功すれば、殿下はいなくなってしまうの。つまり、大きくなったクラウド商会の運営を私たちがしなくちゃいけないのよ。というか、そもそも私たちが運営するのが当たり前なんだけどね」

「あっ!?」


 ここでフィルもようやく気付いたようだ。

 クリスハルトに商会を大きくしてもらうという話の印象が強すぎて、その後のことを考えられていなかったのだ。

 これはフィルの悪いところでもある。


「とりあえず、セシリア嬢にはAクラスの上位、フィルにはBクラス入りを目指してもらう。学年末のテストで次の年のクラス替えが決められるから、それを目指して頑張らないといけないわけだ」

「わかりました……ですが、大丈夫ですか?」

「何がだ?」


 クリスハルトの言葉に納得しつつも、セシリアは不安そうな声を出す。

 一体、彼女は何を不安に思っているのだろうか?


「私がAクラスの上位になることはできるのでしょうか? 上位陣の人たちは幼いころから家庭教師による授業を受けているため、とても頭がいいと思うんですけど……」

「それなら大丈夫だろう」

「どうしてですか?」


 クリスハルトが自信満々に言うので、セシリアは思わず聞き返してしまう。

 本人がここまで不安に思っているのに、何を根拠にそんなことを言えるのだろうか?


「セシリア嬢の言う通りだ。基本的に上位にいる者達は幼いころから家庭教師の授業を受け、それをほとんど身に付けることができた奴らばかりだ」

「だったら、途中から──しかも、男爵令嬢程度の私が敵う相手じゃ……」

「いや、そんなことはない。少なくとも、俺はセシリア嬢なら学年首席だって夢じゃないと思っている」

「どういうことですか?」

「セシリア嬢はわずか二年でAクラス入りするほどの学力を身に付けることができた。だったら、後二年頑張って勉強すればトップ入りだってできるはずだ」

「……そう言われると、できそうな気がしてきた」

「もちろん、俺もフォローはするさ。こう見えても、かつて弟の教育について提案していたぐらいだからな」

「……ちなみに何歳のころですか?」

「8歳だな」

「はやっ!?」


 クリスハルトの言葉にセシリアは驚く。

 まさかそんな早くから人に教えることを考えていたとは、本当に末恐ろしい天才である。

 たしかに、クリスハルトがここまで優秀であることが知れ渡れば、次期国王に推す人が現れるのもセシリアは理解できた。


「それで、なんで俺はBクラスなんだ?」


 フィルが不満気に聞いてくる。

 なぜトップのAクラスではなく、その一つ下のBクラスが目標なのか……そこに不満があるようだ。


「現在、お前は最も下のDクラスだ。もちろん、勉強をすれば簡単に抜け出すことができるはずだ」

「だったら、Aクラスを目指しても……」

「だが、勉強をしてない状態でDクラスなら、その学力もたかが知れている。どれだけ頑張っても、Aクラスに上がる実力はないだろうな」

「なんだとっ!?」


 クリスハルトの指摘にフィルは怒る。

 だが、クリスハルトは決して馬鹿にしているのではなく、現実的に考えてその事実を告げただけなのだ。

 何事にも「才能」と言う者が存在しており、当然勉強にもそれはある。

 勉強において「才能」を持っているのであれば、たとえ勉強を全くしていなくてもCクラス程度には入ることができるとクリスハルトは考えていた。

 だが、フィルは残念ながらDクラス──その「才能」はあまりないと考えるのが当然だろう。

 だからこそ、Bクラスを目指すように告げたのだが……


「見てやがれ。絶対にAクラスに上がってやるからなっ!」


 フィルはクリスハルトに指を突き付けながら宣言し、そのまま立ち去ってしまった。

 馬鹿にされたままで我慢できないたちなのだろう。

 Aクラスになる──どんなに厳しい道のりだったとしても、クリスハルトを見返すために彼は努力をおしまないつもりだった。


「別に俺を見返すことが目的じゃないんだがな。あと、説明がまだ途中だったんだが……」

「説明はあとで私が伝えておきます」

「ああ、そうしてくれ。だが、本当にAクラスに上がるかもな」

「殿下が一度言ったことを翻すのですか?」


 クリスハルトの言葉にセシリアは茶化すように告げる。

 だが、そんなことを気にした様子もなく、クリスハルトは説明する。


「「才能」も大事ではあるが、「本人のやる気」も案外馬鹿にはならないんだよ。あそこまでやる気を出しているんだったら、「もしかしたら」といった可能性もあるわけだよ」

「確かにそれは否定できませんね」


 クリスハルトの説明にセシリアも納得する。

 フィルの最終的な結果を二人は楽しみに思ってしまった。






 勉強については作者の個人的な見解です。

 作者は努力で成績を上げたので、あながち間違いではないと思います。


 作者の執筆のモチベーションに繋がりますので、読んでくださった方はぜひともブックマークと評価をお願いします。

 勝手にランキングの方もよろしくお願いします。

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