図書室の管理人は友人を元気づけようとする
元々考えてた話があって、そこに新たに追加したせいで変な感じに…
まあ、これも一興かな?
ちなみに今回出てくる内容はあくまでも作者の個人的見解です。
好きなものだったらやる気も出るよね?
「へぇ、世界にはこんなにいろいろいるんだ」
少年──ハルトは本を読みながら、感嘆の声をもらしていた。
彼が呼んでいるのは図鑑であった。
図書室にある蔵書の一つで世界中にいる動物たちの絵が描かれてある図鑑であった。
しかし、一つだけ注意しておくことがあった。
「だが、ここに書かれてあることだけがすべてじゃないぞ」
「どういうこと?」
私の言葉にハルトは首を傾げる。
言っている意味が分からなかったのだろう。
だが、彼ならすぐに理解できると思ったので、私はそのまま説明することにした。
「ここに書かれてある動物の絵は今まで人間によって発見されてきたすべての生き物が描かれてある。だが、逆に言うと未発見の生き物は描かれていないことになる」
「あ、そういうことか……でも、見つかっていない動物なんているの?」
私の説明に納得しつつもハルトはそんな疑問を投げかけてきた。
頭は良いかもしれないが、やはりまだまだ子供である。
まあ、それぐらいの方が可愛らしいが……
「もちろんだ。どのような学問でもまだまだ分かっていないことはたくさんある」
「そうなんだ……でも、それって楽しみだね」
「楽しみ?」
ハルトの言葉に今度は私が首を傾げる番であった。
楽しい、とはいったいどういうことだろうか?
そんな私にハルトは笑顔で告げる。
「未発見のものを見つけることは一番最初に見ることができるってことでしょ? それって、とても楽しい事だと思うんだ」
「ふむ……なるほど」
私は思わず納得してしまう。
たしかに彼の言う通りかもしれない。
一番という響きに私は心惹かれてしまった。
私には手に入れることができなかったものであったからである。
「でも、僕にはそれが無理なんだよね」
「む? どうしてだ?」
急にハルトの顔が暗くなる。
私は思わず心配になって声をかける。
ここに来るようになって元気になったとはいえ、時折暗くなってしまう。
やはり今の生活が合っていないのではないだろうか──そんな心配をしてしまう。
「僕は王族──その立場のせいで僕は自分勝手な行動ができなくなる」
「本当にそうかな?」
「え?」
私の言葉にハルトは驚く。
まさか否定されるとは思っていなかったのだろう。
しかし、これは否定せざるを得なかった。
「もちろん、王族という地位にはそれ相応の責任が伴ってくるだろう。まあ、これは貴族も同じではあるがな」
「だよね。そのせいで自分のしたい事ができない……」
「それが間違いだ」
「え?」
納得しそうになったハルトが再び驚く。
自分の納得しようとした内容を否定されたのだから当然であろう。
「たしかにその地位に縛られることでできないことも増えてくるだろう。だが、だからといって何もできないわけじゃない」
「どういうこと?」
「例えば、未発見のものを見つけに行くことができないかもしれないが、それをしようとしている者達を手助けすることはできるはずだ」
「……たしかに」
私の説明を聞き、ハルトは納得したように頷く。
その状況を思い浮かべてみたのだろう。
彼の望む形ではないかもしれないが、その一助となることができているはずだ。
「まあ、あまり無茶なことはできないがな。王族としての行動だったら、そのお金は国民たちから集めた税金が使われる。それを王族の道楽のために使ったと知られれば、国民からの不信の元になる」
「じゃあ、結局できないじゃん」
私の説明にハルトは頬を膨らませる。
こういう姿は年相応である。
思わず可愛らしいと思ってしまう。
「それはあくまでも国民の税金を使った場合だ。自分で稼いだお金を使えば、そんな批判はされなくなる」
「理屈は分かるけど、そんなことできるの?」
ハルトは怪訝そうな表情を浮かべる。
そんなことはできないと思っているのだろう。
まあ、そう思うのが当然である。
だが、現実はそうではないのだ。
「当主を引退した貴族などが第二の人生として今までやりたかったことを市井でやろうとすることはあるんだぞ?」
「本当に?」
「しっかりと跡継ぎが育ってからの話ではあるけどな。今まで貴族の当主などの責務のせいでしたくてもできなかったことを引退後に解放されたことで始めるわけだ」
「上手くいくの?」
ハルトは不安げな表情を浮かべる。
どうやら彼はこの話の問題点に気づいたらしい。
やってみたい、というだけで物事が上手くいくわけではない。
何をやるにしても、今まで貴族の責務のせいでできなかったことをしようとしているわけで、引退後の貴族たちが何の知識もない状況なのだ。
上手くいかないと思っても仕方がないだろう。
「すべてが上手くいくわけじゃないだろうな。だが、意外と上手くいく場合が多い」
「なんで?」
「それはもちろん、自分のしたかったことだからだ」
「……あ」
ハルトは少し考え、気づいたようだった。
なので、私はそのまま説明することにする。
「人間というのはやりたいことなら頑張ってやろうとするもんだ。諦めずにいろいろ考えながら続けていけば、上手くいくことも増えるだろうよ」
「好きだからこそ頑張れるわけだね」
「ああ、そういうことだ」
私は頷く。
これでハルトを元気づけることができた、私はそう思ったのだが……
「でも、やっぱり無理だよ」
「む?」
ハルトは弱音を吐く。
少し驚く私にハルトはさらに言葉を続けた。
「そういうのは引退した王族貴族だからこそできることでしょう? 僕が引退する頃って、何時になる?」
「……それは考えてなかった」
ハルトの指摘に私は思わず頭を抱えてしまう。
王族や貴族でも好きなことをできるのを説明したかったのだが、それが逆にハルトを傷つける結果になってしまったわけだ。
これは私の失態である。
「すまない」
「……別にいいよ。ツヴァイ爺だって、僕のことを元気づけようとしてくれたわけだし」
「……」
ハルトの言葉に私は何とも言えない表情になってしまう。
幼い子供にフォローされてしまった。
こういう所は子供っぽくないな。
「僕が王族じゃなくなったら、好きなことができるのかな?」
「……」
ハルトの呟きに私は答えることはできなかった。
この言葉でハルトにとって王族となることは決して喜ばしい事ではないことが理解できた。
そして、そんな彼の気持ちとは裏腹にこの希望が叶わないことは独自に事情を調べた私にはわかっていた。
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