カフェオレ
「ねぇ、ザップがコーヒー初めて飲んだのはいつなの?」
マイが机の上で指を組んで話かけてくる。
僕たちは今、リビングで食事の後のコーヒーを楽しんでいる所だ。僕、マイ、あとアンもいる。他のみんなは仕事とかで家を出ている。
「あ、私が飲んだのは、王都で飲んだのが初めてですよ。昔の事はあんまり覚えて居ないんですけど、食べ物飲み物の事は忘れてないですからね。私が昔、外の世界に居た時に飲んだ記憶は無いですね」
アンは長い間、原始の迷宮にいて、その前は全国を回ってたらしい。けど、コーヒーって結構前からあるはずだから、アンが旅してたのはいつの頃なんだろう。百年以上は前だと思われる。お馬鹿だから気にならないけど、実際はアンはかなり年上、おばあちゃんなんだな。
「アンちゃん、カフェオレ好きよね。たまにはブラックは飲まないの?」
「んー、なんですかね。ブラックのコーヒーのどこが美味しいのかわからないです。なんて言いましょうか、岩をかみ砕いて歯磨きしてるような気になります。それに、お腹がすいてどうしようもなくなって土を食べてたのを思いだしますね」
僕の頭に可憐な少女のアンが石や土を食べてるビジョンが浮かぶ。あまりよろしくないな。あ、忘れがちだけど、コイツはドラゴンだ。ドラゴンスタイルのアンだったら何食っててもあんまり違和感ないな。威厳もないけど。
けど、なんにせよ、コーヒーが不味くなる話だな。まあ、僕もブラック苦手だから何も言えないけど。
「まあ、アンの話はおいといて、俺が初めてコーヒー飲んだのは、帝都にいた時だな。なんて言うか、その頃帝都では女の子とカフェに行くのが流行ってて俺も背伸びしてみたんだ。初めて飲んだのはブラックだったけど、まじで毒かと思った」
「へぇー、ザップがカフェ……。それで、誰か女の子誘ったの?」
ん、他の女の子の話するとマイはむくれたりするんだが、今日は引っかからなかったみたいだな。女の子の考えってわからんな。けど、ここで詳しく話すべきなのか? まあ、けど、女の子って言ってもな。
「ああ、そうだ。ティタだよ。妹だよ。なんかカフェに行きたいってせがまれてな」
ピキッ……
ん、なんか辺りの温度が下がったみたいな……
「へぇー、ザップって妹とカフェに行くんだぁー。仲良しさんなのねぇー」
あれ、間違いなくマイが不機嫌に。なんなんだだって妹だろ?
「ご主人様、もっとデリカシーを持った方がいいと思いますよ。妹と言っても血がつながってないんでしょ」
なんと、デリカシー皆無な奴にデリカシーが無いって言われた。ショック……
「おいおい、妹だよ。確かに妹は大事だけど、妹だろ?」
「ふーん、大事な妹ね……」
僕はカフェオレを口にする。いつもよりビターな気がした……
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