無敵の騎士(中)
「おいそこの騎士? ザップと戦いたいならまずは私を倒せ」
ピオンはロマン君の前に立つと小太刀と言われる短い刀の切っ先を向ける。今、騎士が疑問形だったよな。
風が吹き、ピオンの短いメイド服のスカートがたなびく。ピオンは下にワンピースのチェインシャツを着ているから、パンツは見えないんだけど、ギャラリーがどよめく。
「ピオンちゃーん」
「ピオンちゃーん」
「ピオン!」
「「「ピオン! ピオン! ピオン!」」」
ギャラリーのピオンシュプレヒコールが一帯を包み込む。ピオンのコアなファンは特に多い。メイド達は交代で露店をしているので、だいたい2日に1回の出勤でそのスケジュールを見てファンが集まるから戦闘率が高い。特に子供が少ない平日はピオンや忍者パイ、冒険者の魔法使いルルや神官さん、元聖都の大神官シャリーなどの巨乳メンバーが人気がある。逆に土日は家族連れや子供が多く、マイやアン、ラパン、冒険者のアンジュとかのパフォーマンスが派手な者が人気が高い。その中でも、出現するとほぼ戦闘になるのが、北の魔王リナ・アシュガルドだ。レアで人気が高いのと、そのゴールドのビキニアーマーという破格の露出度、あと強そうなチャレンジャーの時には他のメンバーをぶっ倒して戦うからだ。まあ、今日はリナはもう来ないだろうけど。
「「ピオン! ピオン! ピオン!」」
鳴り響くコールをピオンが小太刀で空を薙いで止める。ピオンがロマン君を見てあごを軽く上げる。なんか言えって合図だろう。この横柄さがファンにはたまらないらしい。
「我は女の子や子供とかの弱者と戦うのは好まないが。立ち塞がるならいたしかたない。無敵の剣術を見せてやる。安心しろ手加減はする」
ピオンからピリピリとした空気が流れてくる。殺気的な奴だろう。あ、あいつ半殺し確定だな。
「坊ちゃま、坊ちゃま、待って下さい。あやつめの慰謝料を準備しますじゃ」
仕立てがいいスーツのロマンスグレーの髪を後ろに撫でつけた人物が人混みをかき分けてロマン君の隣に来る。そして、どこからともなくテーブルを出すと、その上に大金貨1枚を置く。なんなんだ?
「爺は優しいな」
「滅相もございません。若が怪我させた相手の治療費くらいは払っておかないと禍根を残す事になります」
爺さんはうやうやしくロマン君と話すと、ピオンに顔を向ける。
「そこの娘さん、安心して戦って下さい。若は手加減していただけますし、負けてもしっかり治療費は払いますよ。これが治療費です」
チーン!
爺さんがどこからともなく大金貨を出すと、先にあった大金貨の上に音を立てて置く。
ざわざわ、ざわざわ。
ギャラリーがどよめく。ピオンの殺気が霧散する。
「強い、強すぎる……」
ピオンの口から言葉が漏れる。要は爺さんは八百長で負けてくれたらこれだけ払いますよって言ってるようなもんだ。大金貨2枚。多分チップなしのピオンのレストランでの1ヶ月分の給料くらいだろう。
ロマン・デューク……
変な名前だけど、間違いなく今までの最強の騎士だろう。
財力だけど……
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