チャクラム
なんでチャクラムかと言いますと、今日は中秋の名月、月と言えば円月輪。(FFの武器ですね。少し強引ですかね?)
とってもお月様綺麗なので、ぜひ外を見てみてください。 かしこ
「なんなんだ? これも武器なのか?」
僕は陳列棚に乗ってる大きな腕輪みたいなものに目を凝らす。
僕の独り言に反応して、店員さんがツカツカ歩いてくる。
ここは王都の武器屋。たまに時間が空いた時に暇つぶしに見ている。その武器? は前回来た時には無かったものだ。
「さすが、ザップ様、お目が高い。手にされてもいいですよ」
紺色のレディスーツに身を包んだシニョンに髪を結った女性が僕に対応する。ここは武器屋と言っても冒険者とかでは無く、騎士や貴族を相手にしている店で、あんまファンキーな格好をしてたら入店拒否されたりする。
僕は言葉に甘えてそれを手にする。手のひらくらいの輪っかで、花のような装飾を施されていて、外側には刃がついている。
「なんて名前なんだ?」
「チャクラムって言うらしいですよ」
「幾らするんだ?」
「ザップ様ですからまけといて金貨3枚ぴったりでいいですよ」
「金貨3枚か……」
因みに金貨は2種類、大と小があるけど、大金貨が貨幣として使われることはあまり無いから、普通に金貨と言うと小金貨の事を指す。
金貨1枚なら即買いだったのにな。3枚か……数打ちのブロードソード3本は買えるな……3枚か……担々麺60杯食えるな……
いやいや、その前に……
「これ、どうやって使うんだ?」
「それはザップ様次第でしょう。色々あると思いますが、投げて使うのが一般的では無いでしょうか」
なんか上手く煙に巻かれた気がする。要は使い方が解らないのだろう。まあ、店員さんは見た所接客のプロで武器のプロでは無いのだろう。
僕は想像力を働かせてみる。輪の内側を握って殴るように斬りつける……
駄目だ。間違いなく自分の指を切りそうだ。やっぱり投げるがスタンダードだろう。
「ザップー、まだ武器見てたのー?」
僕に声が投げられる。マイだ。集中していて店に入って来たのに気付かなかった。その後ろにはドラゴン娘アンもいる。
「マイ、早いな。まだゆっくり買い物してていいぞ」
「何言ってるのよ。かなり長い時間買い物してたわよ」
え、そんな長い時間僕は武器を見てたのか?
「マイ姉様の買い物長すぎですよ。そんなに迷うなら全部買えばいいじゃないですか」
「何言ってるのよ。だって体は1つでしょ。1日に何回も着替える訳じゃないから本当に着たいものを買わないと。買っても着なかったりしたら服が可哀想だわ」
と言う事は、マイは散財してきた訳じゃないのか……もっとパァーっとお金使って来てたらよかったのに……
「それで、ご主人様、それ何ですか? 玩具かなんかですか?」
「武器だ。チャクラムって言うらしい。多分投げて使うんだろう」
「ん、武器、それで幾らなの?」
「……金貨3枚……」
「じゃ、ザップ帰りましょ。今日は王都で夜ご飯食べましょ」
「待てっマイ。ほら良くないか、いきなりシュバッと敵に向けて投げつけたら」
「投げました。飛んできました。ザップの力だとそんな小さなものだったらどっかに行って見つけられないと思うわ。たったそれだけのために金貨3枚は無いわ」
「お、屋内なら?」
「乱反射したそれをかわすの?」
「そうだ。思いっきり回転かけたらフリスビーみたく戻ってくるかも?」
「そんな鉄の塊が戻ってくる訳ないでしょ」
「その前にご主人様、私たちならいざ知らず、ご主人様が投げたものが命中すると思いますか?」
グウッ。アンまでも敵に……
「そうだ、フリスビーのように投げたのを犬やオブに取らせるってのはどうだ?」
「それ、楽しそうですね。オブも喜びますよ」
お、アンが食いついてきた。
「ダメよ、アンちゃん。オブ君の口が裂けちゃうわ」
リトルドラゴンのオブにアンがチャクラムを投げるのが頭に浮かぶ。アンの馬鹿力だと間違いなくオブの口から上は無くなってしまう事だろう。それは少し可哀想だ。
「そ、そうだ。ほら、よく見ろよ。花とか書いてあって腕につけたらお洒落じゃないか?」
「それ、本気で言ってるの。それ貸してみて」
マイは僕からチャクラムを取ると、アンの腕にそれをつける。
「どうですか? 似合ってるですか?」
アンはチャクラムを装備した腕を上げてポーズを取る。緑のワンピースの可憐な少女の手にはまる無骨な腕輪。
「違和感しか無いわよね。じゃ帰るわよ。隠れて買っても解るからね」
「は、はい」
完敗だ。1人の時に買いに来るのも禁じられた。
ああチャクラム投げて見たかった……
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