竜魔法『ドラゴンワンピース』
あたしの名前はマイ。最強の荷物持ちザップ・グッドフェローの実はただの家政婦さんなのではと少し悩む今日この頃。最近のあたしの行動を思い出すと、一緒に冒険してる時間より、炊事洗濯掃除買い物など、家事をしてる時間の方が長い気がする。それは嫌じゃないけど、なんて言うか、ザップとあたしの関係は全く進まない。そう言えば、ザップ、少し前には『護衛』とか言って、なんか知らない女の子と同棲してたみたいだし……
朝の日課の素振りの時間より、かなり早く起きたので、ボーッと横になって考えていた。やっぱり、あたしってば少しアピールが足りないのかもね。もっと露出度が高い服着たらいいかな。けど、ザップはビーチで水着のあたしをチラチラ見てたし。もっと普段着、大胆な方がいいかな? けど、お腹出してるのは嫌って昔言ってたような。ま、とりあえずそろそろ起きよ。
あたしはベッドから身を起こす。あたしは1人で寝る時はパンツだけ派だ。収納からブラジャーを出してつける。ん、なんか今日は暑いわね。今日は冒険には出ないからアレ着よう。
『ドラゴンワンピース』
心の中で呪文を口にする。竜魔法、ドラゴンが行使するこの世の理を曲げる奇蹟。あたしの体を緑色のワンピースが覆う。今日は肩にフリルがついたちょっと可愛らしい型だ。これってとっても便利で、見えるけど存在しない服を作る魔法。けど、消費するエネルギーが多いから、オフの日しか使えない。ドラゴンのアンちゃんに教えてもらったものだ。そう言えば、この魔法を初めて見たのはいつだったっけ。あ、あの時だわ。そう言えばまだアンちゃんの事をアイちゃんって呼んでた時。たしか、迷宮から出て、村でゴブリンを倒したあと……
あたしたちは夕焼けの中歩いている。さすがにそろそろ野営の準備しないと日が沈んでしまう。けど、もしかしたらザップに何か考えがあるのかも。あたしは荒野の中の道を赤いザップの背中をついていく。
けど、徐々に暗くなってくる。あたしはザップの横に並ぶ。
「ザップ、いつまで歩くの?」
あたしの問いに、渋面でザップがこっちを向く。けど、すぐにその顔は優しいものに戻る。
「マイ、寒くないのか?」
ザップは立ち止まる。
「全然。あたしは寒いのには強いけど、暑いのはだめなのよ。寒いのは着ればしのげるけど、暑いのは脱いでも暑いから」
ザップは軽くゆっくりと頷く。あたしたちの横にアイちゃんも並ぶ。
「ん、ご主人様、寒いのですか? 私は昼と全く気温が変わってない気がするのですが?」
ザップはアイちゃんをジロジロ見る。
「アイ、その服は暖かいのか?」
「そうですね、服のどこか触ってみて下さい」
触るって、ザップ、どこ触るんだろう?
ザップはアイちゃんのお腹をつつく。
「キャッ、くすぐったいですよ! ご主人様……」
なにじゃれあってるのよ……
「なかよし、な・の・ね」
あたしの口からは思ったより低い声がでる。
「マイ、お前も見ただろう、指が突き抜けたんだ!」
「そんな事あるわけないでしょ!」
あたしはアイちゃんの胸に手を伸ばす。え、突き抜けた? あたしの手に柔らかいものが……柔らかくて意外に大っきい!
「アイちゃん! 説明して!」
「あ、あの、手を離して欲しいです……」
「ごめんなさい」
あたしは手を引っこめる。
「あのですねー、この服、魔力で出来てるので、実体がないんですよ」
「あのね、アイちゃん、女の子なんだからせめて下着はつけなさい」
「おいおい、それよりも、要はお前裸で歩いてるのか?」
「はい、そういうことになりますね、意識がない時には無くなりますし」
なんか便利なようなそうじゃないような。それがあたしと『ドラゴンワンピース』の魔法との出会いだった。
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