うさぎの足
「ザップさん、この依頼なんていかがですか?」
気が弱そうなギルド職員が僕に紙を差し出す。それをマイが覗き込む。コイツ間違い無くマイがいる時を狙ってやがるな。マイは押しに弱いし、困ってる人を放置出来ないからな。
僕、マイ、アンの3人で王都のギルドに近くに寄ったついでに立ち寄ったのだけど、案の定、時間も遅いので大した依頼が無い。
「え? X依頼? 盗賊退治が?」
ちなみにX依頼というのは、引き受ける者が居なかったり、みんな失敗しまくったりして塩漬け状態になってる依頼だ。
「そうなんですよ。そこまで大した盗賊団じゃないんですけど、何故か誰も討伐出来ないんですよ」
「活動区域もねぐらも解ってるのね。なんで摑まらないんだろ」
「そうなんですよ。どう見ても運、強運で生き延びてるみたいなんですよ」
職員はマイに同意しながら少しづつマイを引き込んでいく。もしかして、コイツ結構偉い人なんじゃ?
「じゃあ、俺は遠慮したいな。運の悪さなら自慢できる」
「それなら、好都合じゃない? 普通盗賊に襲われる事ってとっても不幸な事よ」
ああ、明らかにマイはその盗賊退治受ける気満々だな。僕も別に受けても構わないんだけど、なんか職員にのせられてるみたいで嫌だ。
「え、何々? ラピッドフット盗賊団? 結構近くですね。じゃ契約して早くいきましょ」
ドラゴン娘アンが紙をとって受付へ向かう。
「おいおい、俺は受けるって言ってないぞ」
「何言ってるんですかご主人様。マイ姉様が興味を示した時点で未来は決まってます。今日は出遅れてるからさっさと行きましょ」
まあ、そうだな。僕たちは契約して討伐に向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なんだありゃ? 新手の変態か?」
僕たちの目の前にはやたら良い装備に身を包んだ盗賊団がいる。その中央には全身にモフモフしたものをぶら下げてる禿頭の人物がいる。なんかみの虫がいっぱいたかってるみたいだ。まだ暑いのに大丈夫か?
「お前ら、冒険者か? よく俺達を見つける事が出来たな。だが残念だな。返り討ちにしてくれるわ」
みの虫禿頭が前に出て声を張る。その手にはバトルアックス。
奴が言うとおり見つけるのは厄介だった。奴らのねぐらは3つあり、転々と移動してるらしく、どこに行ってももぬけの空。それを高速移動で行ったり来たりしてようやく見つける事が出来た。
「ザップ、あれって全部魔道具のうさぎの尻尾よ。ほんの少し幸運になるアイテムを山ほど着けてるみたいね」
「マジか。僕の大好きなうさぎちゃんを、許せん! 行くぞアン!」
「はい! ご主人様!」
「あっ、あたしも戦うわ」
「厄介な敵だった……」
やっと全員地面に伸びている。このあと運んで犯罪奴隷として売りさばく。
大したこと無い奴らだったが、みの虫禿は別格だった。強くはないけど、運良くこっちの攻撃をかわすし、運良く相手の攻撃が当たる。幸運やべー。けど、どんなに幸運でも実力差があり過ぎると関係ない。なんとか一発あてて昏倒させてやった。
「うわ、凄いわね。幾つうさぎの足つけてるのかしら?」
マイがみの虫をまじまじ見ている。
「もしかして、俺も同じ事したら幸運になれるんじゃ?」
「幸運にはなれるかもしれないけど、多分普通の人はそばに寄って来なくなると思うわ」
「そうだな。止めとくか……」
ちなみにコイツらの隠し財産はほぼ無く、殆どのお金をうさぎの足の魔道具集めに使っていたみたいだ。なんか不毛な奴らだったな。はげ頭なだけに。
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