十五夜
今年の十五夜は9月10日だそうです。雨、降らなければいいんですけど。私はその日は仕事ですので、晴れたら帰りに1人で月見て一杯させてもらおうと思います。皆様も是非いかがでしょうか?
「あとは月を見ながら、団子食べたり、酒を飲む」
忍者ピオンはテーブルの上を指差す。そこにはピラミッド型に積んだ団子ととっくりに入ったお酒とススキと言う草が飾ってある。まあ、酒は少しだけだな。けど、団子は凄まじい。テーブルいっぱいの大きさのお盆に山のように積んである。普通はそこまでしないそうなのだが、うちの大食ドラゴンのリクエストでこうなってる。団子をここまで積んでるのは初めて見るし、コレってめっちゃ大変なんじゃないか?
今晩の月は中秋の名月と言い、それを鑑賞する『月見』というイベントに僕たちは参加している。秋の満月が1年で1番綺麗だと言われていて、それを楽しむものだそうだ。ん、そう言えば4月の満月のピンクムーンもそう言われていたような? どっちがより綺麗なんだ?
メンバーは僕、マイ、アン、オブ、ノノで、発起人は隣に住んでる忍者ピオンだ。これは東方和国から伝わった行事で、9月の満月の日に月を見ながら団子を食べたり、月の美しさを肴にお酒を飲むそうだ。忍者ピオンは東方和国の出身ではなく、犯罪都市ドバンだけど、彼女のいた忍者の里は東方和国から流れて来た者が作ったそうで、そこの文化が定着してたそうだ。月見をする忍者。黒装束で月を見て団子を食べる忍者。なんかシュールでほっこりする。
ちなみに隣の店では、忍者パイが主催で月見パーティーと言う名のイベントが行われている。
そこでは参加者の女性はみんな、月のウサギにちなんでバニーガールに扮しているそうだ。楽しそうなイベントではあるが、マイが渋ったのと、僕もスキルで女性化しての参加を迫られたので、参加をお断りした。
そして、僕たちは家の庭にテーブルを出して落ち着いた『月見』を楽しんでいる。
「月が綺麗ね……」
マイが空を仰ぐ。僕もそれに倣う。
白い満月が僕らを照らしている。今は夜も涼しくなって過ごし易い。なんか夏も終わりなんて言うか寂しい感じがする。隣の店から流れて来る楽しそうな声が、よりそれに拍車をかけている。
風がそよぎ、テーブルのススキを揺らす。たまにはこんなしんみりしたのもいいな。けど、変だうちのやかましいメンバーが何故こんなに大人しいんだ? アンの視線の先は団子。オブも、ノノも……おいおい、月を見ろよ。
「それでは、用意、スタート!」
ピオンの号令の下、アン、オブ、ノノは団子をがっつき始める。多分コイツらの頭の中には『月見』とは団子をしこたま食べるイベントだとすり込まれてしまった事だろう。
「これで、ゆっくり月見を楽しめるな」
ピオンが盃を傾ける。アンとオブとノノは机に突っ伏している。
「何したんだ?」
「団子の幾つかに睡眠薬と痺れ薬を仕込ませてもらった。まさか全員当たりを引くとは……」
そりゃそうだ。団子はほぼ無くなっている。それだけ食えば下手な鉄砲数打ちゃ当たるだ。
「はい、ザップ。一杯だけよ」
マイからもらった盃を月を見ながら口にする。綺麗なものを見ながら口にするお酒は最高だ。2口目はマイを見ながら……
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