男らしいパーティー名
「なんか、気を使わなくていいからいい感じだな」
僕は目の前で背筋を伸ばしている大男に話しかける。彼の名前はレリーフ。王都では珍しい種族のダークエルフにして、またこれも多分彼しか王都に居ない職業で死霊術士だ。
「それはザップさんはそうかも知れませんが、私達はザップさんと一緒に冒険ってだけで緊張しますよ」
嘘をつけ。慇懃な態度から少しは緊張してるのかもしれないが、僕は気付いているぞ。奴のタンクトップの下の大胸筋が動いているのを。力を入れる抜くを繰り返して鍛えているのだろう。奴は僕と話しながらでさえ、筋肉の育成してやがる。相変わらず筋肉の事しか考えてもないバカだ。
「ザップさーん。オイラ達のパーティー名の登録終わったっすよ。受付嬢さんがべっぴんさんなんでちょっと時間かかっちゃったや」
見た者誰もが心を許すような可愛らしい笑顔で少年が口を開く。彼の名前はパム。10才前後にしか見えない容姿をしているが、中身はれっきとした大人だ。子供族と呼ばれている種族で、成人しても子供の背丈くらいだ。職業は吟遊詩人で、歌う事で様々な奇蹟を起こしたりすると言われているが、奴がそんな事するのを見たことないから多分嘘だろう。実際はすばしっこさを生かして盗賊のような働きをしている。受付の方を見ると、受付嬢がこっちを見て引き攣った笑みを浮かべている。また、やりやがったな……その可愛らしい見てくれを悪用して、いついかなる時でもセクハラしまくるバカだ。
ここは王都の冒険者ギルド。僕は今日は前々から約束していたけどなかなか日取りが合わなくて実現していなかった、レリーフとパムと冒険に出る所だ。レリーフとパムは王都最強の冒険者パーティー『地獄の愚者』に所属していて、あと2人戦士と聖騎士の仲間がいるが、食中毒で休養中だそうだ。間違って毒キノコを口にしたらしい。キノコ怖え。ていうか怪しいキノコ食うなよ。で、この2人はなんで無事なんだ?
「で、かっこよくて男らしくて斬新で皆が畏怖するようなパーティー名、付けてきてくれたんだろうな」
パムはたくさんの英雄譚を諳んじる事が出来る。そのボキャブラリーゆえにパーティー名を付けるのは奴が適任だろう。勇者パーティーを追放されてから、僕はパーティー名を付けた事は無いが、今はなんか特典があるらしいので付ける事にした。
「当然じゃないですか、男らしくて、斬新でみんなぶったまげるようなのをつけてきましたよ」
ほう、大した自信だな。さすが吟遊詩人。
「で、なんて名前なんだ?」
「そりゃ、帰って来て、報酬受け取りの時に呼ばれる時のお楽しみですよ」
そして僕らは冒険に出発した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「もう、全部処理は終わったので、あとは呼ばれて報酬もらうだけですよ」
さすがパムは段取りがいい。獲物の納品や書類手続きとかをあっと言う間に終わらせてしまった。セクハラさえなければ有能だ。さすが王都ナンバーワン。
僕たちが受けた依頼はオークの討伐で、どうも亜種が居るみたいで滞っていたものだ。果たしてそこにはでっかいオークがいて、レリーフが嬉しそうに相撲してていた。気持ち悪い事この上ない戦いだった。どうもそのオークは今までで1番大きかったらしく、キングサイズレコードで報酬に色がついた。しかも名前がギルドに張り出されるらしい。
「……たい様……」
ギルドの受付嬢がこっちを見てなんか言っている。声小っさくて聞こえねーよ。パムが立ち上がってそのとても綺麗な受付嬢の所へ行く。
「そんなんじゃ聞こえないよ。もっと大きな声で早く!」
パムが煽っている。受付嬢、真っ赤になってるな? またなんかしたのか?
「やばんたい様」
ん、やばんたい? なんだそりゃ?
「ほら、全部口から出して、その可愛らしいお口から全部吐き出して」
これは、そろそろパムをたしなめるべきか?
「やばんたい様、受付のカウンターへ」
「失礼だな、ザップさんがいるパーティー名をはしょっちゃダメだよ。はい、やり直し!」
「ち○ぽこ野蛮隊様、ちん○こ野蛮隊様、受付のカウンターまでお越し下さい!」
受付嬢が顔を真っ赤にして叫ぶ。ち○ぽこ野蛮隊? なんだそりゃ、僕らのパーティー名なのか? 確かにある意味男らしくて、斬新で、変な意味で聞いた者は畏怖するだろう。けど、決してかっこよくは無い。変態の代名詞にしか聞こえない。子供のイタズラのような名前だ。最低だ……
とりあえずパムをどついたが、今回はキングサイズレコードのために名前は変えられないそうだ。コイツらとは金輪際一緒に冒険に出てたまるか!
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