ボマー (終)
「そうだなー。何をやって貰おうかな? ザップ君、君が美少女だったらやってもらいたい事はたくさんあるんだけど。正直、男にやって欲しい事なんてあまりないんだよね。やっぱ、定番は裸になってもらうとか、この場でうんこしてもらうとかだと思うけど、そんなの見ても楽しくもなんともないんだよね」
男は腕を組んで思案している。なんで定番がうんこかは解らないが、ツッコんだら気持ち悪い話を聞かされそうだから止めておく。要はコイツは行き着くとこまで行き着いた変態だという事だろう。
「そうだね。まずは土下座でもして貰おうかな」
イラッとするけど、とりあえず土下座する。
「本当の所は頭を踏みつけてやりたい所だけど、踏んだら爆発するからね。それと、謝罪が足りないんじゃないかな? 『私のようなクソ虫が生まれてきて申し訳ございません』。はい復唱!」
まじで調子に乗りやがって。
「わ、私のようなクソ虫が生まれてきて申し訳ございません」
「おやおや、君のその頭は飾りかなんかなのか? もう少しオリジナリティを発揮して欲しいものだな。僕が言った事を復唱する事なんか猿でも出来る。最強の荷物持ちの名に恥じないもっと卑屈な謝り方をして欲しいものだねぇ」
そう言うと、男はニチャーっと笑う。復唱は猿には出来ないぞとツッコんでやりたいのをこらえる。もしかしたらコイツの故郷では猿が喋るのかもしれないしな。
「私めのような、大便にたかる臭くて汚いうんこバエのような害悪でしかない者が、あなた様と同じ世界で呼吸をしていて申し訳ございません」
奴の好きそうな言葉をてんこ盛りにしてやったので、多分満足してくれたはずだ。なんか昔、勇者パーティーでいたぶられていた時の事を思い出して腹が立ってきた。ところで、僕はなんでこんな事をしてるのだろう?
「最高だね。ザップ君、君のような冒険譚にも謳われるような絶対強者が僕のようなクソ雑魚の前で這いつくばって頭を下げている。君がクソのようなガキを助けるような偽善者で良かったよ。ほら顔を上げてごらん」
言われた通りに顔を上げると、さっきの子供が虚ろな顔でこっちを見ている。
「僕は絶望する人の顔を見るのが大好きなんだ。あのガキには最後の命令で、僕が手を叩くとザップ君に触れるように命令している。おいおい、その目つきは良くないんじゃないかな。おおっと、動くなよ。僕をぶん殴りたいって顔してるけど。止めた方がいいねー。その君の頭の魔方陣にはもう一つ発動条件が付けてあるんだ。僕が痛みを感じても爆発するように」
そう言うと、男は腰に差したダガーを抜く。
「ザップ君、動くなよ。動くと僕を刺すぞ。そしたら君の頭はバーンだ」
奴は逆手にダガーを持って自分の腹に当てる。
斬新だな。今までの人生で、自分を人質に脅迫してくる馬鹿は見た事が無い。ついつい噴き出しそうになるのをこらえる。
「それで、どうやって手を叩くんだ?」
「ザップ君、口のきき方に気を付けたまえ。そうだな。こうふるか」
パーン!
男はダガーを口に咥えて手を叩く。子供がゆっくりと歩き始める。そして、男は再びダガーを腹に当てる。
「動くなよ。少しでも動いたら僕を刺すからな」
もう飽きたな。終わらせるとするか。
「最後に何か言い残す事はないかい? 君が一緒に住んでる女共をメチャメチャにしたあとに言づててあげるよ」
もう限界だ。コイツは不愉快すぎる。
僕はパンパンと膝を払って立ち上がる。
「え、お前、いつの間に裸に? 僕は脱ぐなって言っただろ」
そうなんだよ。コレをしたら服がダメになるんだもんな。
「やっぱり英雄って言われてもクソだな。それ以上動いてみろ、即座に腹をさすから……ギャアーーーッ!」
僕は前に出て、奴のダガーを蹴り込んでやる。渡りに船ってやつだな。
「い、いってーっ。な、なんでお前は爆発しないんだ?」
僕は髪を掻き上げて額を見せてやる。僕の必殺魔法『太古の世界』最小出力で、僕の体に触れている無生物を全て塩に変えてやった。
「魔法陣が無い! な、何故だ?」
「自分で考えろ」
「やっぱ。お前おかしいぞ。俺はなんとも思わないな。クズヤローが絶望するのを見ても」
ゴゴゴゴゴーーーーーッ!
収納からドラゴンブレスを出す。炎の濁流に奴は呑み込まれる。
「ギャアアアアアーッ!」
悲鳴のあとには何も残って居ない。若干愉快な奴ではあったけど、そのスキルが凶悪過ぎる。なんか無駄に疲れた。
そして、僕は子供を抱えて王都に戻った。なんかボマーが色々破壊しまくったけど、僕は弁償しなくてすんだ。けど、悲しい事にもうあのカフェには行けないな。気にいってたのに……
ボマー 終わり
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