ボマー (4)
僕はこちらに向かって歩いてくる男の子を見ながら頭をフル回転させる。まるで時が止まったかのように男の子が動かなくなる。思考加速。いつの間にか手に入れていたスキルだと思われるが、集中すると時間の流れが緩やかになる。
爆発を付与している人物を仮に『ボマー』と名付ける。
まず、ボマーは個人なのか、複数人なのか?
多分、爆発付与は魔法かスキルだ。こんな厄介な技術を持った者が複数人いるとは考えにくい。確定ではないがボマーは1人だと思われる。
目の前の男の子がボマーか? 誰かが僕を狙っているとして、ボマー程の強力な者を使い捨てにするだろうか? 多分否だ。と言う事は目の前の男の子はボマーに操られているのだろう。
人を操る方法はだいたい2種類あるとうちに住んでる導師ジブルが昔言っていた。
『傀儡』と『魅了』。
傀儡は対象を術者の操り人形のようにするもの。対象者は対象者の命令を何でも聞くが思考能力が低下して判断能力が無くなる。
魅了は程度はあるが対象者が術者に好意をもって言う事を聞いてくれるようになるもので、対象者は術中にあってもそれまでとは変わらない思考能力をもつけど、対象者は隷属する訳じゃない。その一人が望まない事はしない。例えば自殺特攻とか。
と言う訳でこの子供はボマーの傀儡の術中にあると思われる。けど、チキングリルに爆発を付与したのはこの子供だと思われる。今までも数回地面とかにも付与していた。ボマーはその爆発付与の能力を人1人に与える事が出来ると思われる。1人だと思うのは複数人に渡せるのならば、そうしていて今はもっとヤバい状況になってたはずだ。
あと、傀儡の術とするならば、子供に命令を与えていた者がいるはず。声はしなかったという事は念話。チキングリルに細かい爆発付与をしていたから、あれはそばで見ながらじゃないと出来ない。不可視の魔法やスキルで隠れている。それは無いな。鈍いと言っても僕は高ランクの冒険者の端くれ。何らかの気配ないし違和感をそれならここまでで感じるはずだ。
そこで思い浮かぶ能力が『憑依』。多分ボマーはこの子供に憑依している。思考能力を奪った子供に取り憑いてその体を操っているのではないか? そう考えると辻褄が合う。そしてここに僕を連れて来たのはそばに本体がいる。子供を特攻させたあとに、本体で僕を攻撃するつもりだろう。辺り一帯目立つものは何もない。という事は本体がそばにいるとすれば、不可視の魔法とかで隠れているか、土の中に潜ってるのかどちらかかな。
まあ、一瞬でグダグダ考えまくったが、仮定に過ぎない。今、出来る事の選択肢は少ない。目の前の子供をどうにかするだけだ。
「すまないな」
僕は口に出して謝る。僕が悪い訳では無いのだが。
子供がこちらに向かって駆けてくる。不愉快だな。子供をこんな事に使いやがって。
僕は子供に駆け寄り抱き締める。
ドゴン!
案の定爆発しやがった。もしかしたら子供が本体かも知れないとは思ったがそれは違うな。体が吹っ飛ばされそうになるのを耐える。
少しでも爆発の力を抑えるため、強く抱き締める。
そして、収納からエリクサーを出してかけ続ける。
「はぁ、はぁ」
なんとか僕も子供も無事だ。
小さな手が伸びて僕の頭を触る。僕は子供を離し跳び退る。子供はカクンとその場に座り込みそのまま横になる。
僕は額に触れる。熱を持っている。
「ザップ・グッドフェロー。さよならだな」
聞いた事が無い低い男の声がする。
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