ボマー (1)
「お待たせしました。チキングリルです」
僕の前に料理が運ばれてくる。ここは王都の僕のお気に入りのカフェ。あんまりカフェというものは好きではないのだが、前にたまたまここに入ったら料理がメチャメチャ美味かった。それだけじゃなく、店員さんがみんな可愛いのだ。それで1人の時はここで飯を食っている。他の女の子とここに来たら、なんかからかわれそうだからな。
「ありがとうございます」
何気に見ると、子供くらいの背丈の黒いフード付きのマントの人物が会計をして扉をくぐった所だ。奴はさっき僕の料理が運ばれくる時に給仕さんとぶつかりそうになっていた。鈍くさい奴だな。店にはそぐわないな。まあ、とは言っても、この店のお客さんの大多数は女性。しかも複数で話に興じている。そこで男1人で飯を食ってる僕も異物感がハンパないんだが……
まあ、それは置いといて、チキングリルに手を伸ばす。カットしてあるからフォークで突き刺して食べるだけだ。
口に入れると表面カリカリで中はジューシー。爆発的な旨味が……
ドゴン!
僕は大きく仰け反る。顔の下半分に焼け付くような痛みが!
訳が解らないまま、瞬時にエリクサーを収納から出して顔にかける。危ねー。下手したら死んでたぞ。脅威的な防御力を誇る僕だからなんとか生き延びたけど、普通の人だったら頭吹っ飛んでたぞ。
爆発的に美味かったが、まさか本当に爆発するとはな。
冗談は置いとくとして、店内はパニックに陥っている。そりゃそうだ。僕は血塗れだしテーブルの上には僕の顎付近だと思われる肉片とかも飛び散っている。グロ耐性が強い僕でさえもドン引きだ。しかもまだ衝撃で頭がチカチカする。
ドゴーーーン!!
大きな爆発音の方に目をやると、入り口の方が爆炎に包まれて女性が吹っ飛ばされている。しかもその右手が無くなっている。僕は瞬時に立ち上がり飛びだして彼女を抱き止めてその負傷した右手をエリクサーで癒す。見ず知らずの女性にそこまでする義理はないかもしれないが、なんかどうも標的は僕のような気がする。巻き込まれて腕を無くするのは可哀相だし、元の腕は木っ端微塵なので癒した証拠は残らないだろう。
「何があったんだ?」
「とっ、扉を開けようとしたら……」
そう言うと女性は気を失った。エリクサーで治しても痛みは残る。僕は静かに女性を床に横たわらせる。
何が起こってるんだ? よく考えてみる。
「お客様、お怪我は大丈夫ですか?」
ウェイトレスの1人がおしぼりを持って来てくれる。けど、そのおしぼりを出す手はガクガク震えている。まあ、そりゃそうだよな。僕は血塗れだし、店の入り口が爆発したんだもんな。
僕はそのおしぼりで顔を拭いながら、僕のいた席に戻る。テーブルの上には水が入ったコップとチキングリルの皿と僕の血と肉片。
「ヒイッ」
ついて来たウェイトレスが声を上げる。テーブルの惨状を見たのだろう。
僕は恐る恐るフォークを手にチキングリルをつつく。何も起こらない。けど、確かにチキングリルは僕の口の中で爆発した。今触れたのはカットされたチキングリルの真ん中。僕は棒状のそれを真ん中から僕の側に向かってつついてみる。何も起こらない。次は真ん中から奥に向かって……
ドゴン!
チキングリルが爆発して、僕の右手も巻き込まれる。痛ってー! 指何本か吹っ飛んでったぞ。くそっ! 収納から即座にエリクサーを出して癒す。
「う……あ……」
声の方を見ると、ウェイトレスさんが上を向いて、いや後ろに倒れ込みそう。僕は手を伸ばし抱き支える。不謹慎だけど役得だ。当然彼女もかなり可愛い。
けど、確かに今見えた。爆発する瞬間に小さな魔方陣みたいなものがチキングリルに浮かび上がった。僕の頭に1つの単語が思い浮かぶ。
『付与魔術』
色んなものに魔法を付与して行使するものだ。ダンジョンにある魔法罠とかによく使われているヤツだ。多分誰かがそのスキルで爆発の魔法を色んなものに付与しているんだろう。厄介だな……
魔力感知の魔法があれば簡単に見つけられるんだが。それを使える仲間を呼ぶ事を考えるけど、危険すぎる。相手は狡猾だ。わざわざチキングリルを呑み込んだ時に発動するような仕掛けを打つような奴だ。僕1人で解決するしかないか。僕は抱えていたウェイトレスを近くの椅子に座らせる。
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