海、海月
「もう、夏も終わりそうだな……」
僕は海を見つめる。
「そうね、夜は涼しくなってきたし」
マイがこっちに首を向ける。
僕とマイはビーチチェアに寝転んでいる。
ここはザップ海のビーチ。多分今年最後の海を楽しんでる所だ。何もせず、何も考えずゆっくりする。最高だ。
「もう、泳げないんだな」
泳ぐも泳がないも、僕は泳げないんだがその事は置いておく。今年は裕福で、のんびりしてたので、あんまり冒険していない。
僕たちの目の前では、ドラゴンの化身アンと、黒竜王の化身オブが海の中で戯れているというか、アンがオブをいたぶっている。
「そうね。クラゲたくさんいるから……」
マイが悲しそうに答える。海に入りたかったんだろう。今は海の中には数え切れない程のクラゲがいる。ドラゴン2匹はその中で戯れている。奴らの皮膚はクラゲの針を通さないみたいだ。けど、僕ももしかしたらクラゲに刺されないのかもしれないが、あの海で泳ぐのは無理だ。なんか色んな所にクラゲがヌルヌル当たってきそうだ。ここからは綺麗な海にしか見えないが、海の中にはそばで見るのも気持ち悪い程、クラゲがうじゃうじゃといる。やっぱ、ドラゴンはメンタルもドラゴン、要は強靱なんだろう。ていうか鈍いだけかもしれないが。
「けど、なんで盆を過ぎるとクラゲが大量発生するんだ?」
ちなみに盆というのは8月の半ばの事をさす、東方から伝わって来た言い方だ。盆には自分の祖先のお墓に参るという東方の風習が、花火や夏祭りという文化と共に王国では流行している。夏祭りの時に着る浴衣という前で閉じる服と共に。
なぜ、東方の文化が王国で流行しているかと言うと、僕たちが今いるザップ海にある港から東方諸国連合の臨海都市シートルへと海路が繋がり、それによりシートルに輸入されている東方和国の品々が王国にもたらされるようになったからだ。刀と言われる切る事に特化された剣、蕎麦、うどんなどの麺類。醤油や味噌などの今までは超高級調味料だったものがリーズナブルな価格になった。それにより、東方文化が今大流行している。
「んー、お盆くらいから、クラゲが育つのに丁度いい温度に海がなるからってジブルが言ってたわ」
マイがクラゲの疑問に答えてくれる。そういうわけなのか。どっかから大量に流れて来てるのかと思っていた。ちなみに導師ジブルと廃エルフのノノは魔道都市でお仕事だ。新しい魔法技術を開発しているらしい。
「じゃ、そろそろ飯の準備でもするか」
「うん」
今日はこれからこの夏最後のバーベキュー大会をする予定だ。知り合い皆呼んでいる。夏は終わっても、楽しい事はたくさんある。それと、もうじき秋。冬が来るまでにしっかり働かないとな。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。