姫と筋肉 死霊大戦争(7)
「それでは進軍開始だ。逃げて助けを呼びに行ってもいいぞ。まあ、無駄だと思うがな。ハハハハハハハハハッ」
バッカは哄笑を上げながら地を滑るように下がっていく。雲霞のようなアンデッド達がゆっくりと進み始める。
「ケイト、スザンナ、ケイト、スザンナ」
「ケイト、スザンナじゃないわ!」
僕は跳び上がり腕立て伏せをしているレリーフに渾身のドロップキックをかませてやる。だが、レリーフは微動だにしない。僕がその背に乗ってもそのまま腕立て伏せを続けている。足下がひょこひょこしててバランスとるのが難しい。
「すまんな、負荷を増やしてくれてるのか。だが、お前軽すぎだろ。全く足しにならんな」
「おい、お前馬鹿なのか? 見ろよ、しこたまアンデッドいるぞ。取りあえず『インフェルノ!』」
僕たちを中心に放射状に放ち、近場にいたアンデッドを焼き払う。けど、ゴーストには炎は効かない。フヨフヨ浮いてやがる。
「解ってる。だが、お前がさっき言ってたように、雑魚はどれだけいても居ないのと同じくだ。まあ、けど鬱陶しいのは確かだな」
僕がレリーフの背を降りると、奴は立ち上がる。
「私の部下たちでもなんとかなりそうだが、せっかくだから私の奥の手を見せてやろう」
「お前、また厄介な奴を呼ぶんじゃないか?」
「いや、だから部下じゃなく私が手を下そうって言ってるじゃないか」
「それって大丈夫だろうな? 他人様の迷惑にならないか?」
「お前、私をなんだと思ってるんだ? 私が他人様に迷惑をかけた事があるか?」
おい、いっつもどこでも人の迷惑考えず筋トレしてるだろ。それに、災厄クラスのアンデッドを生活魔法と言い張ってぱしらせてるだろ。むしろ、常にレリーフは人に迷惑かけてると思うが、なんかやる気を出してるっぽいので、気勢をそぐような事は言わない事にする。
まあ、だけど、アンデッド退治でレリーフがやらかす事は無いだろう。それに、上手くいかなかったら、いったん戻って元大神官のシャリーちゃんを連れて来たらアンデッドなんて即座に全て成仏させてくれるしね。けど、なんか嫌な予感がする。
「では、見とけラパン。私の新必殺技!」
え、新必殺技?
「もしかして、初めて使う技なのか?」
「気にするな。いくぞ」
レリーフは騎馬立ちになり腰を落とす。レリーフの魔力が凝縮していく。手を開き右手を上、左手を下に構えて両手で円を描く。集まった黒く染まった魔力が螺旋を描きレリーフの前に渦巻く。そして、右足を引き、両手で魔力を球状に圧縮して、腰に溜める。これって『波』を撃つ構えだ。圧縮された魔力からバチバチ稲妻みたいなものがほとばしってる。なんか少し格好いい。ワラワラとアンデッド共がレリーフに向かって集まって来る。
「喰らえ! 筋肉冥界波!」
レリーフが圧縮した魔力を手を開き突き出し放つ。それは黒い巨大な球体となり、突き進む。ん、なんかその球の中に無数の顔のようなものが見えたのは気のせいだよな?
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