姫と筋肉 死霊大戦争(5)
「レリーフ! くたばれいっ!」
僕の黄金の右がレリーフに突き刺さる。ゲッ! また大胸筋に阻まれた。木、いや大木。まるででっかい木か何かを殴ったみたいだ。これはダメージが通って無い。
「ラパン。仮にも女の子がそんな言葉遣いをするもんじゃない。スザンナが怒ってるぞ」
僕の目の前でピクピクするレリーフの左大胸筋。咄嗟に殴りかかってしまう。
「ケイト、スザンナ、ケイト、スザンナ、スザンナ、からのケイト、ケイト、ケイト。流石だなパーフェクトだ。いい刺激だ」
僕は過たずレリーフの動かした大胸筋を叩き捲る。ちなみに、ケイトが右の大胸筋、スザンナが左の大胸筋だ。意外にこれが楽しい。よく考えてみると、何の躊躇いもなく人を殴る機会なんてそうそう無い。特に僕は剛力のスキルで攻撃力がパない。それを微動だにせずに受け止めつづけるレリーフは正真正銘の化け物だ。
「あのー、2人でイチャついてるところ申し訳無いが、少しは私の話も聞いてくれないか?」
「イチャついとらんわ!」
フードの人の言葉についつい食い目に噛み付いてしまう。決してイチャついてない。なんと言うかこれはお約束、いやトレーニングだ。
「お前の話なんか興味ない。後で相手してやるから、ラパン、さあ続きをするぞ」
ん、そう言えば、僕たちはアンデッドの確認ないし討伐しに来たはず。僕はこんな暑い中レリーフと何遊んでるんだろうか? 早く終わらせて帰って涼しい所でジュースでも飲も。
「黙れレリーフ。1人で筋肉いじって遊んでろ。で、お前話って何なんだ?」
「フフフフフッ。よくぞ聞いてくれた」
ローブの人物はフードを取る。そこには骸骨に薄皮が貼り付いたような顔。その双眸は落ちくぼみ暗い闇を湛えている。やっぱアンデッドか道理で干物臭い訳だ。
「我が名は、アール・ビーン・バッカ。闇の知識の深淵にたどり着きし、大いなる者の内の1人だ」
「バッカ? いい名前だな。バッカ、バッカなのか?」
ついついツッコんじまう。我慢出来なかった。
「人をバッカ、バッカ言うな」
「けど、バッカなんだろう?」
「うるさい黙れ、我が名は古の言葉で再び戻り来る者という意味だ」
「という事は、バッカは自分で自分にバッカって名前をつけたんだろう? バッカなのか?」
「うるさい! 黙れ! 我が生きていた時代には馬鹿って言葉は流行って無かったんだ。事故だ事故!」
そうなのか。昔は馬鹿って言葉は無かったのか。どうでも良い事で、はしゃぎすぎちまった。
「で、そやつは何をしておるのだ?」
腕立て伏せに精を出すレリーフをバッカが指差す。筋肉いじれって言葉にいじけたのか無言だ。
「気にするな。それよりバッカ、話したい事があるんだろ。聞いてやるからとっとと話せ」
「お主、何も聞いとらんかったのか? 我は闇を統べる者。畏怖せよ。恐怖せよ」
バッカが凄んでくる。なかなか強いアンデッドだと思うが、残念ながらレリーフの部下の変態たちに比べたら全く圧が無い。
「解った。畏怖するし、恐怖してるよ」
「……」
バッカは何か不満みたいだ面倒くさいから焼却してやるべきか?
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