姫と筋肉 死霊大戦争(2)
「待て、レリーフ」
まずは状況確認したい。レリーフは1人にしたら何をしでかすか解らない。僕も急いで馬車の外に飛び出す。
「これは厄介だな」
立ち尽くしているレリーフ。
うん、厄介だ。
その前方には数え切れぬ程の群衆。いや、よく見るとボロを纏った緩慢な動き。なんか水や肉が腐ったような臭いがする。
職場のお店でめっちゃ臭いニオイがして、元凶をさがしたら、冷蔵庫の下から唐揚げが見つかったりする。たった1個の唐揚げでも腐ったら、そこを通ったら鼻が曲がるような悪臭を放つ。それが目の前に雲霞のように集まってる。まだ、距離はあるが風に乗って耐え難い臭いがする。まじで最悪だ。
真夏のゾンビとかホラー小説とかで流行ったりしてて、ヒロインが『キャーゾンビー!』とか言ってキャッキャしてるけど、実際それを体験すると、不愉快この上ない。多分実際は『キャー、ゾンビ!』じゃなくて、『キャー、くさいーっ!』になるはずだ。
ここでこの臭いだ。アイツらと接近戦しようものなら、僕はもどす自信がある。しかも僕のメインウェポンはハンマー。絶対に返り血ならぬ返り腐肉や腐汁をくらいそうだ。もしそうなったら、服は死ぬと思うし、体に浴びたら3日くらいは臭いが取れないって聞いた事がある。今日着ているのはおきにのワンピースなので、とりあえず着替えないとな。
「凄い数だな。そうだな、今日は手数を重視して、二刀流で行くか」
なんかレリーフがブツブツ言っている。え、コイツ、あれと物理で戦う気なのか? 臭いは気にならないのか?
「まて、レリーフ。お前、アレと戦う気か? ゾンビの大軍を操ってる奴とかが居るならソイツと話して戦いは避けられないかな?」
「おい、ラパン。何言ってる。アンデッドは人とは相容れないもの。見たら成仏させてやるしかないじゃないか。それに、もしそれらを使役している者がいるなら邪悪な者に決まってるだろ」
「おい、お前がそれを言うか? お前も『死霊術士』だろ?」
「それこそ愚問だな。私の部下たちが、何か人様に迷惑かけた事があるか? 私は死霊術を悪事に使った事など無い」
僕はお前のアンデッド達にいつも迷惑かけられてるよという言葉を呑み込む。そう言えば、レリーフの召喚する奴らは悪い事はしないな。気持ち悪い事はいつもしてるけど。
死霊術士は邪悪、けど、自分は邪悪じゃないってレリーフは言ってる訳だけど、なんか釈然としない。
「その前に、お前死霊術士だろ。あのゾンビを操ったりできないのか?」
「多分可能だ」
「じゃ、やってくれよ」
「たかだかゾンビ。私なら問題無いだろう。だが断る。何が悲しくてゾンビなどを配下にせにゃならんのだ。臭いしかっこ悪いだろ」
ん、なんかこだわりがあるのか。死霊を操らない死霊術士。なんの価値があるんだろう。
「ラパン。おしゃべりはここまでだ。よし、現れろ。ソード達」
大地に2つの魔方陣が浮かび上がり、そこに跪いたスケルトンが現れる。立ち上がるスケルトン。大剣を両手でしっかりと握りしめている。けど、ゾンビの軍団相手に、スケルトンたった2体でどうするつもりなんだ?
ゾンビ達の方に向かって走り出すスケルトン。レリーフも走り出し追いついたかと思ったら、しゃがんでスケルトン達の足を掴み振り上げる。そしてゾンビ達にエンゲージすると、両手に1体づつ持ったスケルトン達を軽々とぶん回し始めた。あ、あのスケルトン達はレリーフの武器だった訳ね。生意気な事に頭使ってやがるな。リーチが長いからあれなら返り血浴びない。レリーフが巨体に似合わないすばやい動きでスケルトンを振り回す。レリーフに群がってきたゾンビ達は一刀の下に吹っ飛ばされて行く。
けどレリーフ、もしかして、全てのゾンビをこれで退治するつもりなのか?
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