ごちそう
「何か美味いもん食いたいな」
僕の何気ない呟きにみんながこっちを見る。
今リビングには全員集合している。マイ、アン、ジブルにノノとオブだ。導師ジブルは夏休みで仕事が休みで、うちで唯一冷却系の魔法を使える彼女が、リビングをキンキンに冷やしているのでみんな集まってる次第だ。
「美味しいものねー。じゃみんなで食べたいもの言ってきましょう。ノノちゃんとオブ君は抜きで、2人が食べた事ないもの食べましょ」
マイの提案にみんな頷く。
「ステーキ! ステーキが食べたいです!」
まずはアン。
「それは言い考えですけど、僕、ステーキは食べた事ありますよ」
「じゃあ、焼き肉は?」
次はジブル。暑いのに焼き肉はなんだかなぁ。けど、肉ばっかだな。
「焼き肉はよく食べてるわよ。もっとあっさりしたものがいいわ」
ノノが次は答える。
「熱くないごちそうねー」
マイが考え込む。
「お寿司、お寿司はどうかなー?」
「えー、寿司ってあれよね。腐った魚とご飯をまぜたヤツ。あれって美味しいって言えば美味しいけど、めっちゃ臭いわよ」
ノノが顔をしかめる。ん、腐った魚? 臭い?
「あっ。そっか、ノノちゃんってお婆ちゃんだから、寿司っていったら鮒寿司とかしか知らないのね。昔は寿司って言ったら、魚とご飯とかを漬け込んで醗酵させたものしかなかったけど、今はご飯の上に具材をのっけたものもあるのよ」
「へー、それ、食べてみたいです」
「ノノも食べたいかしら」
と言う訳で寿司に決定した。僕も異論はない。
まずは冒険者パーティー『地獄の愚者』の1人、子供属のパムに連絡して、材料を売って貰う。奴にも僕の収納の権限を渡しているから、収納内の個人スペースで物とお金のやり取りをするだけだ。ちなみにそれも見てるだけで、マイが購入している。どんなものが寿司にいいかなんて僕にはわからないからな。夏にはパムは海沿いの街に行って魚介を仕入れて王都で売るというのをコツコツと続けている。他のパーティーメンバーは遊んでばかりなのに偉い奴だ。
そして、調理はうちの隣のレストラン『みみずくの横ばい亭』の忍者ピオンにお願いする事になった。やって来たピオンの恰好は作務衣と言われる前で閉じる形の東方の服で胸にはさらしを巻いている。相変わらず無駄に凝り性だ。リビングに寿司カウンターが作られ、あらよあらよと準備が進んでいく。そして準備が終わった。
「まずは、芽ネギ」
「「「いただきます!」」」
ピオンが握る。僕らが食べるを無言でエンドレスに繰り返す。僕の好きな芽ネギの次は、鯛、つぶ貝、穴子、サザエ、太刀魚、玉子、ヒラメ、アワビ、そして大好きなマグロがやって来た。
寿司はとっても美味しく、食べた瞬間に次が出てくるのでついまた食べるを繰り返してたので、終始無言だった。そうだよな、別に寿司は逃げないから、少しはカウンターに溜めてもいいよな。けど、マグロは我慢できない。すぐにまた食べてしまった。
「もっとでっかい寿司が食べたいです」
アンが沈黙を破る。そうだよ。ステーキやハンバーグはでっかいのがあるけど、でっかい寿司って聞いた事ないな。
「あ、俺もでっかい寿司食べてみたい」
「ノノも」
「僕も」
「あたしは、遠慮しとくわ」
と言う訳で、僕らの目の前にキングサイズの寿司が現れた。僕の握り拳よりデカい。
「美味しかったです!」
さすがアンはいつも通り一口で寿司を食べている。僕も口に入れるが、一口では無理だ。途中で噛みきるが、手にはべったりシャリがついている。しかも醤油をぶっかけたけど、足りなかった。あんまり味しない。しかも喉につかえそうになる。なんとか必死に食べ尽くしたけど、ネタは落ちるし、味しないしで酢飯だけ食べてる感じだ。
「これって、デカいよりも、普通のをいっぱい食べた方が美味いな……」
ノノとオブも頷く。
「え、そうですか?」
まあ、巨大寿司でも一口で食べられるなら問題ないんだろう。僕には無理だ。
「世間に無いものって、だいたい駄目なものよね」
マイの言う通りだと思う。
それ以降は、僕らは普通サイズの寿司をいただいた。僕たちはいうまでも無くノノもオブも大満足だった。
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