大剣使い (後)
後ろがチョン切れてたので修正しました。
ウォオオオオオオオオオーッ!
闘技場に出ると、歓声、歓声、歓声。もはや雷みたいで何を言われてるのか解らない。けど、雰囲気からブーイングも混じってるように思われる。なんせ今日はヒールだからな。ほぼ8割の人は僕の対戦相手に賭けているはずだ。僕は客席を見渡す。その人の多さに圧倒される。ここのコロシアムは王都よりかなり大きい。その客席が完全に埋め尽くされて、しかも1番外周には立ち見席も設けられて、そこも人で埋め尽くされ超満員状態だ。客席の床が抜けないか、少し心配してしまう。
「今日の最終決戦は、デビューから8連勝、破竹の勢いのコロシアムのニュービー、ハリス・ハミルトンVSジャングルの奥地からの刺客レパードヘルムだーーーーーっ!」
ウォオオオオオオオオオーッ!
司会者からの紹介でコロシアムは熱狂に包まれる。
「ハリス・ハミルトンーッ!」
紹介に応じて、僕の対戦相手ハリスは大剣で天を突く。客席からは黄色い声も飛んでくる。金髪碧眼で背の高い美丈夫。赤いパンツに赤いブーツ。確かに見た目は格好いい。巷でコイツは大人気らしいけど、パンツにブーツだぞ。そこら辺で見たら只の変質者だと思うが。しかもパンツはかなりもっこりしている。そこが人気なのか?
「挑戦者。レパードヘルムーッ」
何をしたらいいか解らないので、剣を地面に刺して、ゴリラみたいに胸を叩いてみる。これで何とかジャングルらしさは演出出来たのでは? ブーイングか歓声か解らないけど、声は上がったので合格点だろう。
そして、僕らは近づく。レフリーがルールを説明する。ルールはシンプル武器を捨ててギブアップするか、気絶か死亡したら負けだ。
「おい、クソ野郎。せいぜい盛り上げてくれよ。あんま手応え無いと場がシラけるからな」
ハリスは口の端を歪めて何か言ってる。調子に乗ってるって言うのは本当だな。まあだけど許容範囲だな。
「ああ、頑張って盛り上げてやるよ」
「つまんねー奴だな。もっと気の利いた事言えねーのか。最後の言葉になるかもしれんのによ」
「言葉じゃ人は斬れないぞ」
「そうだな。俺様の大剣でテメーを膾にしてやんよ」
そして僕達は距離を取り大剣を構える。
「それでは試合開始!」
司会者の声を皮切りにハリスが向かって来る。まずは横薙ぎだ。それを剣を傾けて受けて上に逸らす。それからも続く連撃を弱い攻撃は受け止め、強い攻撃は逸らしていく。面倒くさいからハリスの履歴は調べなかったが、これは間違いなく訓練を受けた者の戦い方だ。足運び、シフトウェイト、姿勢。多分元騎士か騎士を目指していた者だろう。とても滑らかで綺麗な動きだ。これは人気が出るのは頷ける。
隙を見つけたら攻撃し、防戦一方から互角の打ち合いに変わる。お互いほぼ裸に大剣。一撃が致命的になる。まあ、本当は僕は大剣の攻撃を受けたとしても軽い怪我くらいで済むのだが、今日は普通の人設定なので。
長い時間僕らは打ち合い続け、少し応援の声がダレて来た感がある。そろそろ仕掛けるか。
僕の大振りの一撃をハリスが力尽くで打ち払い、僕の大剣は弾き飛ばされる。無防備な僕にハリスは大剣を振り上げて近づく。僕は逃げるのではなく、逆にハリスに踏み込む。真剣白羽取り。そんな事はしない。僕は不器用だから。ハリスの大剣のつばのそばは刃引きしてある。だいたいの大剣は接近戦で刃を握れるようにそうなっている。そこを掴んで、ハリスの切り下ろしを止める。力比べしばし、僕は刃を斜めに逸らしながら、ハリスの手を中心に大剣を回す。こうすると力が入らないので、簡単に相手の武器を奪える。そして、返す刃で斬りつけたら殺してしまうかもしれないので、さらに回し、柄頭でハリスの顎を打ちつける。ハリスは吹っ飛び、動かなくなる。
「おおっと、大番狂わせ。なんと、勝者、レパードヘルム!!」
ウオオオオオオオオオオオオオーッ!
コロシアムは湧き立ち、フォーチュンチケットが宙を舞う。
ミッションコンプリートだ。僕はブーイングの中花道を歩いていく。なんかこれはこれで悪くは無いな。
「お疲れさま。ザップ」
駆け寄って来たマイがタオルを差し出す。受け取り、それで顔を拭うとヒンヤリしてて気持ちいい。
「稼げたか?」
「うん、とっても」
マイはしっかり僕に賭けたみたいだな。
「美味いもの食わせてくれ」
「うん」
そして僕達は美味しい焼き肉を食べた。そのあと聞いた話では、ハリスはあの後めでたく引退したそうだ。そして自分の領地に帰り爵位をついだらしい。貴族の跡取りだったんだな。良いことしたのかな?
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。