大剣使い (前)
今僕は、控え室にいる。ここは傭兵都市オリバンの中央のコロシアムだ。今回の依頼は、このコロシアムで連勝で調子に乗っている剣闘士をぶっ倒してその鼻っ柱を折ってくれというものだ。しかも剣闘士の心を折ってしまわないように、かつ、彼の人気を落とさないように接戦で下して欲しいそうだ。
しかも武器はその剣闘士に合わせて大剣を使って欲しいという。
なんか面倒くさいことこの上なく、報酬も大した事無いが、マイ、アン、ジブル、みんなから頼まれたので渋々引き受けた。その3人を説得出来てるだけで、かなり有能だと思う。まあ、なんか事情があるみたいだけど、複雑そうなの放置しとく事にした。
それに、いつもの僕のメイン武器はハンマーだけど、一時期大剣に憧れてその扱いには習熟している。もっともそれで手に入れた大剣は剣身が30メートルあるという変態大剣ではあるが。
フルフェイスの兜を被り、年季の入った大剣を手にする。兜は豹をイメージした形をしていてちょっと際物っぽい。まあ、なんとかマスクとかがコロシアムで流行ったのは結構前ではあるが。
あと、今日の格好はサンダルに豹皮の腰巻きというなかなか反文明的なスタイルだ。今日の僕の設定はジャングルの奥地から出稼ぎに来た冒険者というものだ。勝っても負けても国に帰るから一回こっきりの戦いだ。
僕は大剣を手にその塩梅を確かめる。一般的に大剣ってめっちゃ重いって思われてるみたいだが、100キロ以上ある僕のハンマーからすると、玩具みたいな重さだ。うちの女性陣が使ってる斧と比べてもめっちゃ軽い。まあ、僕らの武器はもともとミノタウロス用で人間用ではないからな。多分この大剣は五キロくらいだとは思うが、ちゃんと両手で使わないと。今日は僅差で勝たないといけないからな。ゆっくり横薙ぎ、袈裟懸け、振り下ろし、剣のバランスを確かめる。いい感じだ。重心か柄よりなので思ったよりもスピーディーに扱える。けど、普通の人はもっと剣戟が流れるから流れるように旋回させて戦う事にする。なんか力をセーブするものがあればいいんだが、そこは演技力でカバーだ。
ちなみに控え室にいるのはマイだけだ。あとの連中は賭け事に夢中だ。ここオリバンでの賭けのチケットはフォーチュンチケットと呼ばれている。最終的には運営が儲かるようになってるから、痛烈な皮肉ではあるが。そのフォーチュンチケットを僕の知り合いたちは買いまくっている。まあ、トリの僕の試合は結果が見えているので、最終的に負ける奴は居ないからな。ちなみに、集まったお金の3割を運営が取り、あとは勝者に割り振る形だから、僕らがどんだけ勝ったとしても問題は無い。
「ごめんねー、ザップ。面倒くさそうな事頼んじゃって」
「気にするな。まあ、面白そうだから引き受けただけだ。コロシアム久しぶりだな」
「勇者の事思い出すわね」
「ああ、未だに後悔してる。やっぱりパンツも剥いどくべきだったかな?」
「何言ってるのよ」
マイが僕の背中をベシベシ叩く。何気に痛い。
「じゃ、行ってくる。マイ、しっかり俺に賭けとくんだぞ」
「解った。頑張ってね」
僕は右手を上げて花道を歩き始めた。
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