ドラゴンの新必殺技
「なあ、お前って本当は弱いんじゃないか? よく考えると、最近、全く活躍してねーよな」
ビーチでオブ(黒竜王の尻尾の化身の小僧)を虐めているドラゴン娘のアンに疑問をぶつけてみた。
「何言ってるんですか、ご主人様。私は誇り高い古竜に末席ながら名を連ねるもの。弱い訳ないじゃないですか?」
「確かに、俺もまだ弱かった時にはお前のブレスに助けられた。お前のおかげで今の俺があると言っても過言じゃない」
「そうですよね。私のブレスはミノタウロス王ですら一撃ですからね」
「けど、それは過去の話。黒竜王オブシワン、神竜王ゴルドラン。それに天使。それらとの戦いでお前、全く役に立ってないだろ。最近のお前の見せ場といったら、大食いのみじゃねーか。冬は寒いといって炬燵に籠もりっきり。夏は暑いと言って氷に張り付きっぱなし。いいとこ無しじゃねーか」
「何言ってるんですか。今は夏なのに活動してるじゃないですか?」
「でも、やってるのは雑魚いびり」
「む、むぅ……」
僕は決してアンが嫌いでこういう事を言ってる訳じゃない。僕ですら、今はのんびりしてるけど、いつでもどうやったらもっと強くなれるか考えている。最近のアンには向上心があまり見られない。マイ、少女冒険者4人、あとメイド軍団。みんな少しづつ成長している。だから少しでもアンも前に進んで貰いたいんだ。
「多分、今のお前はノノよりもジブルよりも弱い」
僕とアンは見つめ合う。先に目を逸らしたのはアンで、そして僕に背を向けると走り去った。けど、大丈夫だろう。なぜならアンの目は死んでなかったから。それからアンは僕たちの前から姿を消した。
「なによ、コイツ固すぎでしょ!」
マイのデスサイズが硬質な音を立てて弾かれる。
僕たちは今、森林の遺跡を守っているなんか希少な金属で出来たゴーレムと戦っている。奴はノロくて強くはないんだが、メッチャ固い。しかも神聖属性で僕の勇者の剣が効かないときている。これは長期戦になりそうだな。
ザッザッザッザッ。
一端下がった僕たちの前に現れたボロボロのマントの小柄な人物。待ってたぞ、やっと現れたな。
ぶわさっ!
その人物はマントを脱ぎ捨てる。
「お待たせしました。修行の成果を見せてあげます」
ボロボロの緑のワンピースに頭に角が生えた少女。アンだ。けど、その服魔法で出してるんだよね。わざわざ演出のために魔法を進化させたのか?
「とうっ!」
ドラゴン娘は大きくゴーレム目がけて飛び上がる。
「喰らえ! 私の新必殺技!」
ん、新必殺技も何も、アンに必殺技ないよな?
「メテオストライクブーストアタック」
ゴーレムの上に現れた灼熱の巨岩、あ、自家製メテオストライクだ。跳び上がったアンはその巨岩を強烈に打ち据える。さらに加速された巨岩がゴーレムを押しつぶし、巨岩とゴーレムだったものの破片が辺りに飛び散る。
おお、凄まじいな。アンはドラゴン。強い炎熱耐性をもつ。そうじゃないとメテオストライクをさらに加速して威力を増すのんて思いつかない。なんか格好いいな。けど、名前がなんか引っかかる。メテオストライクブーストアタック……
「ご主人様、見ましたか? これが私の新必殺技、メテオストライクブーストアタック。略してメスブタです!」
うーん。どうしようかな? わざとなのか天然なのか? このまま放置するべきか? けど、この技を放つ度にメスブタ、メスブタ言われたら、僕たちの品格が問われるような……
マイの方を見ると頭を押さえている。多分アウトだな。
「ジブル。教育してやれ」
「アンさん。ちょっといいですか」
導師ジブルはアンを奥に引っ張っていく。
「ご主人様。要は、私の新必殺技の名前がギリギリお下品だったのですね……」
それ以降、メテオストライクブーストアタックは封印された。
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