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番外編SS 荷物持ちドラゴンとお金を稼ぐ


「とりゃーっ」


 僕はミノタウロスのハンマーを腰を入れて水平にふるう。巨大な金平糖こんぺいとうみたいな先端が風を切る音がする。


 一振りで三体のゾンビを肉片に変えてやった。


 けど、腐臭がすごい。この依頼を受けた事を僕は少し後悔し始めた。


 ゾンビは動きが鈍く倒すのは容易い。だが、倒した時に腐った汁を浴びようものなら、三日はその臭いが取れない。しかも服についたらシミになって、場合によっては服が死亡してしまう。あと、動けなくなるくらいダメージを与えないと倒す事が出来ない。


 要は、ゾンビ退治は簡単な討伐依頼だけど、報酬は安くて経費はかかる。だから受ける人がほとんどいない。


 それなのになぜ受けたかと言うと、他に依頼が無かったからだ。最近お金を使ってばかりなので稼がないといつか貧乏になってしまう。


 特にドラゴンの化身であるアンにお金がかかっている。炬燵の炭代、食費、あと防寒着。


「せいっ!」


 ゾンビの一体をすくい上げる様な一撃で吹っ飛ばす。これなら汁を喰らわない。収納の中に入ってるドラゴンブレスを使ったら一撃だけど、僕のダイエットのため近接戦を挑んでいる。


「ご主人様、きりが無いですね」


 アンが話しかけてくるが、丸々着込んでもはや誰かわからない。長い棒でゾンビを突いて戦っている。


 ちなみにマイはお留守番だ。ゾンビは苦手らしい。ゾンビは臭いし、元人間でグロテスクだからしょうがないか。ゾンビが大好きという女性がいたらそれはそれで気色悪い。


「キャッ!し、汁が……ゆ、ゆるさん、焼き尽くしてやる!」


「止めろ! アン、ドラゴンになるな」


「グオオオオオオオオーッ」


 僕の制止は間に合わず、ドラゴンになったアンは全てのゾンビを焼き尽くした。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ご主人様、申し訳ございませんでした。つい……ぶるぶる」


 アンはたくさんのミノタウロスの腰巻きに包まって震えている。別にドラゴンになるのは構わないが、きちんと服を全て脱いでから変身してほしい。ゾンビ狩りの報酬はアンの服を買うお金で赤字になるだろう。


「過ぎたことはしょうがない」


「ありがとうございます。けど、マイ姉様には何て言いましょう。きっと激しく怒りますよね……」


「そうだな……」


 僕もとばっちりで絶対怒られる。すぐにお金を稼げる何かいい方法はないだろうか?


 収納に入っている素材とかはほぼ売っぱらってしまったし、エリクサーは出したら1時間位で蒸発してしまう。怪我人を治療してお金を貰うのは、基本的に国への登録が必要になる。


「ご主人様、私を売りませんか?」


「何言ってる。金に困ってもお前を売る訳がないだろ」


「すみません、言葉足らずで、私の鱗を売りましょう。10枚ほど」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ウォォォォォォーン」


 悲しそうなドラゴンの咆哮が辺り一帯の空気を揺らす。


 手でアンの鱗を剥ぐ。そのたびに、この世の終わりの様な叫び声をあげやがる。言いだした割には根性無しだな。傷口にはエリクサーをかけてやる。これでよし。


「ご主人様、ビッて勢いよく剥いでくれないとですね、めっちゃ痛いんですよ」


 人間に戻ったアンはめっちゃ涙目だった。少し可哀相だ。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 



「もう、ザップたち、なにしてるのよ」


 町の入り口ではマイが待っていた。


「あ、またアンちゃんお洋服ダメにしたのね。騒ぎの原因はやっぱりザップたちだったのね」


「悪い、マイ。アンは反省して剥いだ鱗を10枚くれた。これで勘弁してやってくれ」


「マイ姉様、めっちゃ痛かったですぅ」


 アンは上目遣いでマイを見る。なんかムカつくあざとさだ。


「けど、それ、売らない方がいいと思うわ。町に住んでる人のほとんどが、そばでドラゴンが鳴いてるからって隣町に避難しちゃったわ……」

 

 僕とアンはその場で凍りついた。


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