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 醤油湯麺


「ご主人様、いい匂いですね」


 アンが僕の袖をクイクイ引っ張る。今日は隣の店でゆっくりと夜遅くまでお酒を飲んでいた。とは言ってもエール2杯だけだけど、もうみんな家に帰って、僕はアンに肩を借りて帰宅してる所だ。


 いい匂い?


 女の子特有の甘い香りがアンからする。けど、これは違うな。多分コイツについているかき氷やアイスクリームの匂いだ。色んな所に返り血みたく浴びてるんだろう。コイツは事あるごとにその手のものを食べている。太ればいいのに。


 ん、なんかスープのにおいもする。この優しい香りは鶏だな。その香りの出所は隣の店の入り口にある屋台だ。こんな店あったか? 手押し車を改造したような屋台で、大きく『醤油湯麺』と書いてある。なんか酔っ払った時って無償に麺が食べたくなる。今がその時だ。


「しょうゆゆめん? しゃうゆゆーめん?」


 アンが首を傾げている。


「違うぞ、アレは『タンメン』って読むんだ」


 僕の贔屓にしてる、担々麺屋にも湯麺があるから僕は読める。けど、食べた事が無い。いつも食べてみようとは思うがついついお気に入りを頼んでしまう。


「それで湯麺ってなんなんですか?」


「うーむ、詳しくは俺もわからん。食べれば解るだろう」


「ありがとうございます!」


 アンは即座に屋台の椅子に腰掛ける。


「その湯麺を2つ頼む。で、その湯麺って何なんだ?」


 普通は何か聞いてから頼むもんだと思うが、食べる事は決めてるので気にしない。


 座って寝てるように見えた店主のオッサンが立ち上がる。


「家は醤油湯麺だ。まあ、東方の汁が入った麺の事だな。最近流行ってるラーメンと一緒だよ。家は古いから湯麺って言ってる。湯麺、中華そば、ラーメンってだいたい同じものだけど、店が出来た時の名前の事が多いな。ちゃんちゃんこ、チョッキ、ベスト、ジレのようなもんだ」


 ちゃんちゃんこはなんか違う気がするが。ジレって何だ? まあ、全部チョッキ系のものの言い方なんだろう。そう言えば、うちの女の子達はチョッキって言わねーな。


 コトン、コトン。


「あいよ。熱いうちに食いな」


 オッサンがカウンターのテーブルに丼2つ出す。おい、早すぎるだろ。僕たちの目の前の丼には茶色のスープの中に麺、その上にネギとチャーシューが乗ったものが湯気をたてている。まだ夜は少し暑いが、旨そうな匂いに耐えられず、僕とアンは箸をとる。柔らかい麺に優しい味のスープ。ほろ酔いの僕が今求めているものだ。一気にかっ込み、汗をかきながらスープも飲み干してしまった。


「けど、出来るの早いな」


「まあな、酔っ払いはせっかちだろ。麺はあらかじめ茹でてて、お湯で戻すだけで、スープは返しに鶏ガラスープを注ぐだけだ」


「返しって何だ?」


「返しってもともとは、醤油、みりん、砂糖を合わせた調味料で出汁でとくものだが、同じような使い方するから、うちの秘伝の調味料も返しって呼んでる。うちの返しには醤油、みりん、砂糖に老酒ラオチュウ、あ、老酒ってのは故郷でつくってる餅米で作った酒だな。それにオイスターソース、これは牡蠣って貝で作った調味料だにニンニクがほんの少し入ってる。これを鶏ガラスープで割ったらうちのスープの出来上がりだ。だからうちの湯麺は注文を受けて1分で出来る」


 よく喋るおっさんだな。ヒマなんだろう。


「店主、それってこの店の秘伝じゃないのか? そんなにベラベラ話していいのか?」


「ああ気にすんな。醤油ラーメンってあんま人気ないだろ。作るの簡単だから家とかで作って食べて欲しいんだよ。ま、家で作ってもうちほど美味くつくれねーと思うからな。うちの味の決め手は新鮮な鶏を使った鶏ガラスープと隠し味の秘伝のオイスターソースだからな」


 まじ、よく喋るな。アンは聞き流している。そしてキラキラした目で僕をみている。しょうがないな。


「そうか、じゃ、もう一杯づつ頼む」


「ありがとよ」


 そして、僕らはお替わりをいただいた。また、麺はすぐ出てきた。やっぱ個人的にはとっても美味くて時間かかるものよりも、早くて美味いものの方が好ましいな。今度はマイも連れてきて、この店の味を再現してもらおう。


 

 

 お湯に醤油とオイスターソースほんの少しと顆粒の鶏ガラスープかコンソメで簡単に美味しい醤油ラーメンのスープが作れます。ゴマ油たらしてもいいですね。あと麺と好きな具材で醤油ラーメン完成です。すぐに作れてリーズナブルです。よかったら是非試してみて下さい。


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