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 腐食の息(後)


「なんか痒いな」


 体を掻きながら起きる。さっき食らったオブのブレスのせいか? ほんの少しの痛みは痒く感じる。軽く海でひと泳ぎ(いや、泳ぐと言っても実は浸かるだけだが)してシャワーで塩を流してまたゴロゴロする。アンとオブは仲良く遊んでいて、やっとマイ達が僕を迎えに来た。


「ザップ、今日は外食するわよ」


 何故かマイは顔をしかめている。僕にはマイの機嫌を損ねた記憶がない。望みの物が買えなかったのか? 


 ん、ジブルとノノもなんか表情が固い。どうしたんだ? 何か悪い事したか? 買い物について行くべきだったか?

 何か違和感を感じながら、僕たちはシートルの市街地に向かった。


 街中でもなんか人が僕たちをジロジロ見てくる。マイ、アン、ノノはかなり目を引くのでいつもの事であるが、なんかおかしい。なんか顔をしかめたり、目が合ったとたん逸らされたり、明らかに好意的な視線じゃない。そうだ、猿人間を見る者の目だ。僕が猿人間時代には仲間以外の者は僕を侮蔑とも軽蔑ともなんというかそんな目で見ていた。けど、今の僕は普通の恰好のはずだ。水着のトランクスにシャツ。今の季節のこの街ではありふれた恰好のはず。マイ達も一緒だ水着の上からシャツとかを羽織ったここでは違和感が無い恰好だ。


「なあ、マイ、なんかおかしくないか?」


 マイに近づくと、マイが少し下がる。


「別におかしくないと思うわ」


 マイは目をすぐ逸らす。やっぱり何かあるな。マイに嫌われる何を僕はしたのだろう?


「ジブル、どうかしたのか?」


『別に何にもないわ』


 いつの間にかジブルはスケルトン形態に変身している。いつもはベタベタしてくるのに僕から距離をとっている。訳が解らない。


「ザップ、臭いのかしら」


 僕の横でノノが鼻を摘まんでいる。え、臭い? 僕が?


「だ、駄目よノノ。傷つくでしょ」


 マイがノノの口を塞ぐ。そして後ずさる。傷つく? 誰が?


「え、俺が臭いのか?」


 僕は力無く右手をノノの方に伸ばす。


「臭えんだよ。脇を空けるなワキガ野郎!」


 ノノはマイを振りほどくと、どっかに駆けてった。


「え、僕が、ワキガ……」


 僕は力無くその場に崩れ落ちる。


 そうだったのか。初めて知った。僕は臭いのか……


 そうか、今まで我慢してたんだなみんな。


 今までいろんな所で注目されてたのは、僕の知名度じゃなくて臭いだったんだな。そう言えば、着ているシャツの脇の所に黄色いシミが出来てたりする事も。


「だびじょうぶよ、ダップ、ぎにして無いから」


 マイが僕に優しく手を伸ばす。けど、君、鼻で息してないよね……


「うわぁぁぁぁぁぁーっ」


 気がつくと僕は駆け出していた。




 ……そうだよな。特にマイは鼻がいいからな……


 僕は波打ち際で膝を抱えて座っている。確かワキガは汗によって引き起こされるはず。そうだ、夏の間は1時間おきに臭いを押さえる薬湯に入ろう。それなら、臭いを少しでも減らせるはず。それに、ワキガがうつるっていうのは都市伝説らしいから、そこも説明すればそこまで邪険にはされないはず……


浄化ピュリファイ!」


 僕に白い光が降り注ぐ。浄化の魔法? 


「ザップ、やっと見つけたわ」


「臭いからって浄化は酷くないか?」


「違うのよ、それって一時的なものなのよ!」


 マイの声に振り返ると、マイと元大神官のシャリーが駆けて来る。


「どういう事だ?」


「確かにザップは汗臭いけど、いつもはそんなに酷くないわよ」


 シャリーがしれっと毒を吐く。グッサリくるわー……


 ゴンッ!


「シャリー! ぶん殴るわよ」


 マイがシャリーに拳骨くれてる。言う前にドついてるよね。


「ザップ、思い出して、オブのブレス浴びたでしょ。それが汗を腐らせてすっごい臭いがしてたのよ。シャリーが浄化したからもう大丈夫よ」


 まじか?


「やべーな。オブのブレス。食らったのが俺でまだマシだったな。女の子が食らったら……」


 それは悲惨なものだろう。浄化の魔法じゃないと消えないのか。


 とりあえず、オブ、ぶっ飛ばす!




 

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最強の荷物持ちの追放からはじまるハーレムライフ ~
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