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 スカウト


「兄さん、解るか? ほらなんかそこにあるだろ」


 眼帯をした出っ歯のオッサンはコツコツと箱の鍵穴の横を叩く。


「よーく耳をすましてみな。目を閉じると解り安いって言う奴もいるな」


 僕はオッサンに言われた通り目を閉じる。


 コツ、コツ、コツ、カツ、カツ、カツ。


 ん、あとの3回は音が高かったような?


「解ったか? 外側から叩いていったんだが、中に何かあったら音が変わる。鍵穴の横になんかついてるんだよ。宝箱についてるものっつったら罠しかねー。なんかが震えるような音がしただろ。弦だ多分クロスボウだな。横にどいてな」


 僕が移動するとオッサンは箱を横から開ける。


 シュッ。


 カツッ。


 箱から放たれた矢は壁に突き刺さる。


「ほらな。クロスボウだ。俺たちくらいになると叩くだけで中身が解る。けど、素人は気をつけな。振動を与えたら爆発する奴もあるからな」


 宝箱の中には一振りの煌びやかな剣。オッサンはそれを手にする。


「ほらよ、俺が役に立つってのは納得行っただろ。まけといて4割でいいわ」


 本当は半々でもいいが、それはやり過ぎだろう。


「いや、2割だ」


 まけなくてもいいけど、ここは気分だ。


「兄さんケチだな。そうだな。お試しだから3割で勘弁してやるよ」


「わかった。よろしく頼む」


「へへっ。そうこなくちゃな」


 歩く僕にオッサンは付いてきた。





「新しい迷宮が見つかった!」


 僕が偶々ギルドに顔を出すと、喧々囂々。新しい迷宮の事の話で持ちっきりだった。見つけたのは駆け出しパーティーで探索せずに戻って来たらしい。今日は一人だけど、受付で場所を確認して早速突入する事にした。王都のそばで新しい迷宮がみつかるのは久しぶりの事だ。未探索の迷宮は上手く行ったらかなり稼げる。落ちてる金は拾わないとな。


 そして迷宮の入り口に差し掛かった所、胡散臭いオッサンが話しかけてきた。盗賊スカウトを雇わないかと。断ったがしつこく付いてきて、ファーストエンカウントでゴブリンの一団を退け、宝箱が出た所でしゃしゃり出てきた。




「俺の名前はラットだ。アンタは?」


「ザップだ」


「そうか、アンタがねー。じゃあ俺が戦う事はほぼ無いな。変わりに色々教えてやるよ」


 そしてそれから、僕はラットに色々盗賊のイロハを教えて貰う事になった。



「1番いいのは、罠が無い事だが、次は罠が有り過ぎる事だ。罠ってのはな、あるか無いか解らないから引っかかるんだ。この部屋みたいに足の踏み場も無いくらいなのは素人の仕事だ」


 僕らの目の前の部屋は沢山の罠が仕掛けられている。ラットが遠くから棒でつついたり石を投げたりして作動させた。


「どうやって行くんだ? 歩けないぞ」


「歩けないなら、歩かなければいいだろ」


 ラットはそう言うと鉤爪付きのロープをぶん回して放る。それは上手く部屋の反対側にあった扉の縁に引っかかり、手元のロープを杭に結びつけてピンと張られたロープを普通に歩くように扉の前まで歩いていく行く。そして扉の前に音も無く降り立つ。スカウトすげぇな。


「おい、ザップ。早く来いよ」


「できるかっ!」


「しょうがねーな。ぶら下がって来いよ」


 まあ、僕は収納のポータルや風でなんとかなるんだが、探索を楽しむためにロープをぶら下がって伝って行った。



「これが最後だな。ザップ、調べてみろ」


 僕はぶっ倒したフロアボスが落とした宝箱に耳をあてて優しく叩いて見る。もう慣れたもので、中味がだいたい解るようになった。宝物は入っているが、罠は無い。


「罠は無さそうだが」


「けど、なんか気配がするだろ」


「そう言えば、なんかな」


魔力探知ディテクトマジック


「え、お前、魔法使えるのか?」


「スカウトの必需品だ。魔法の罠があるかどうかこれで解る。魔力でっけえな。こりゃ開けられねぇ。テレポーターだ」


「え、解るのか?」


「そりゃプロだからな。漏れてる魔力の大きさでだいたい見当つく。魔法の罠って存外種類は少ねーんだ。じゃ諦めて帰るか」


「じゃ持って帰って開けて貰うか」


 僕は宝箱をそのまま収納に入れる。


「うわ、まじか、荷物持ちってすげぇな」


「スカウトだってすげぇよ」


 その後、街に帰って僕らは酒を酌み交わした。報酬は4割払った。物理だけが強さじゃないな。

 

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