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 ビーチフラッグス


「ザップ。今日はあたしが勝つわ」


 焼けた砂浜にうつ伏せのマイが顔をこっちに向ける。胸が地面で潰されてるのをついチラ見してしまう。脇と胸の間くらいが盛り上がってるのが尊い。


「ご主人様、私はこう見えて体幹には自信あるんですよ」


 首を回して反対を見ると、アンがうつ伏せで不敵な笑みでこっちを見ている。奴は体幹って意味知ってるのだろうか? けど、アンはバランス感覚に優れてるのは確かだ。足場が悪い所でもこけたりするのをあまり見ない。まあ、一応ドラゴンだしな。


 僕もうつ伏せでマイとアンに挟まれている。今何してるかと言うと、臨海都市シートルをブラブラしてるときに、ビーチフラッグスと言うビーチでやるスポーツの大会がやってるのを見つけて参加した次第だ。やった事の無いスポーツだったけど、優勝賞品が最高級のスイカ10個というのに惹かれてついつい参加した。今年は暑さのせいかスイカが高いだけでなく、あんまり売ってない。スイカ、しかも最高級。男ご自分のプライドを賭けて戦うには十分な理由だ。


 ビーチフラッグスとは砂浜にうつ伏せになって、号令で立ち上がって走り、20メートル先の旗を取るという簡単なものだ。僕、マイ、アン、3人とも参加して、別々の予選グループだったのでみんな勝ち残り、決勝は僕たち3人になった。僕たちはスポーツを楽しむために、魔法とスキルは禁止している。それでも高い身体能力は他を寄せ付けなかった。

 今までの結果からみて、普通にやったら普通にマイが勝つだろう。走るトップスピードは僕の方が早いが、立ち上がって走り始めるのはマイが圧倒的だ。アンはまあ頑張ってはいるけど、僕らの敵ではない。


 僕たちを遠巻きで見守る大勢のギャラリー。巻き込まないように距離を取るように運営には言っている。僕は最強の荷物持ちザップ・グッドフェローとして出場してるから、それを一目見ようと沢山の人が集まっている。これですんなりと負ける訳には行かなくなった。


 僕らはうつ伏せで号令を待つ。


「それでは、レディー、ゴー!」


 号令と共に立ち上がって僕はゴールと反対に向かって立ち上がる。そして振り返る。赤いビキニのマイと、緑のワンピースのアンの背中が見える。マイがやはり早いか。けど関係無いな。


 ドゴーーーーン!


 僕はスキル無しの全力で砂浜を殴る。そして海の方に大きく飛ぶ。砂が大きくまるで柱みたいに打ち上げられ僕が居た所には大きなクレーターが出来ている。こんな時もあろうかと砂浜で練習しまくった技だ。ゴールの旗の所は無事なはず。威力調整も完璧だ。アンが砂と一緒に吹っ飛ばされたのは見えたがマイは見えない。砂に巻き込まれてはいるはずだ。僕は砂柱を迂回してゴールを目指す。急がば回れってやつだ。観客も息をのんでいる。よし、いい感じでスピードが乗ってきた。旗が見える。え、まじか、マイも反対側から迂回して駆けてくる。あと少し、僕は頭から飛び込む。マイもぶち当たるのお構いなしに飛び込んでくる。マイが早い。


 ドゴン!


 マイが旗に触れる直前に再び大地を殴る。僕たちを包みこんで砂が巻き上がる。咄嗟に目を瞑る。なんとかマイとは正面衝突はしなかったが、舞い散る砂の中揉みくちゃになる。目が見えない中なんか布に触れる。


「とったどー!」


 僕はその布を握り立ち上がる。


「あたしの勝ちよ!」


 えっ? 目を開けるとマイも砂が降りしきる中、布を右手で掲げている。


「キャア」


 マイは即座に蹲る。僕が手にしてるのはブラジャー……


 マイが手にしてるのは……


 砂が晴れて仁王立ちの僕。スースーする。即座にミノタウロスの腰巻きを装備する。マイも予備の水着をつけている。まさか、間違って女の子の水着を剥ぎ取るというお約束を実演する事になるとは……


「確かに夏は開放的になりますけど、そう言うのは岩陰でやって下さいね」


 旗をフリフリ真顔でアンが歩いてくる。ゲッいつの間に旗を?


「これ、丁度飛んで来ました。スイカは私に食べられたいみたいですね」


「優勝、アイローンボーさんです!」


 運営のアナウンスで、割れんばかりの歓声と拍手に包まれる。僕はしばらく何が起こってるのか解らなかった。



「なあ、悪かったってば」


「ザップのばか!」


 アンから貰ったスイカを口にしても、マイの機嫌はしばらく斜めのままだった。はしゃぎすぎた……

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