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 子供族(ホップ)のお見合い


「それで、私がなんでお前なんかと茶ーしばかにゃあかん訳?」


 早口でまくしたてる、黒いワンピースのクリッとした目の可愛らしい女の子。見た目的には10才前後に見える。けど、全てのイメージをぶち壊しているのが、頭にかぶった黒い三角帽子。それだけなら魔法使いを目指してるのかなってくらいだけど、その中央で存在感を誇示するかなりリアルな髑髏の徽章。魔道都市の学園の魔道戦闘科に所属してる証だそうだ。

 彼女は魔道都市アウフの導師にして教師。魔物変化で不死身を誇る導師ジブルだ。子供族ホップという種族で見た目も体格もずっと子供のままで、実際はアラサーらしい。

 敵としては厄介で、味方としては役に立たないというか全てをかき乱す、台風のようなヤツだ。うちのパーティーの魔法戦力としてスカウトしたのだが、思い起こすにコイツの魔法に助けられた記憶がない。そろそろ家から卒業してほしいものだ。


「それはこっちのセリフだい。何が悲しくて導師だかせいしだか知らないが、こんなちんちんくりと同衾しないといけないんだよ」


 コイツの名前はパム。良かったコイツらをマイ達と離しておいて、なんかアウトな言葉を今のセリフでかなり吐きやがった。よくもまあこうポンポンと卑猥な言葉を吐けるものである。毎日イメトレしてるのか? マイがそばに居たら間違いなく制裁案件だ。

 まあ、ヤツは居ない事を見越して自由に話してるんだと思うが。

 こちらも子供族の男の子。アロハシャツにショートパンツにサンダルという格好で結構似合っている。王都の最強パーティー『地獄の愚者フール・オン・ザ・ヘル』の一員、自称吟遊詩人バード、実際はエロ盗賊シーフだ。王都ではその愛らしい姿を隠れ蓑に子供のイタズラと見せかけてセクハラしまくり、それがバレて最近はしばらく留置場に入ってたらしい。筋金入りのおばかだ。


 ビーチにポツンとビーチパラソルにテーブルと椅子。そこに足をプラプラしてる愛らしい子供2人がお互いを見つめ合いながらトロピカルジュースのストローに口をつけている。まるでメルヘンな絵画みたいな微笑ましい風景だ。けど、実際行われているのは汚い罵倒の応酬だ……


 今何が行われているかと言うと、俗に言うお見合いみたいなものだ。毎日僕の入浴をジブルが覗くのに耐えかねた僕がマイに相談した所、誰か男の子を紹介したらどうかという事になって、試しにパムを紹介してみる事にした。同じ種族だし。

 ジブルとパムは面識はあると思われるけど、2人で顔を突き合わせるのは初めてのはずだ。性格的に似通った所がある2人なので、うまくくっついてくれたら御の字だ。少し世界が平和になるのでは?

 危険な劇薬2つを混ぜると何が起こるのかわからないので、ムードがあって辺りに何もない所という事で、まだ一般開放されてないポータービーチをチョイスした。


「それは、私のセリフよ。何が悲しくてアンタなんかと同衾する事になるわけ? 私のタイプは背が高くて、年収が高くて、筋肉もしっかりついていて、強くて優しい男よ」


 ん、ジブルが僕の方をチラ見したような?


「アンタのようなちびっ子には微塵も興味ないわ」


「なんだとー。オイラのどこがちびっ子なんだよ。オマエだってちびっ子じゃないか」


「ふーん、私の何処がちびっ子かしら?」


 ジブルは挑発的に腕で胸を寄せ、ワンピースの襟を指で下げてその谷間を披露する。痴女かよ。けど、意外にデカいんだよね。


「ほう! 中々やるじゃないか。オイラだってまけねーぞ。オイラのドラゴンを見せてやる!」


 椅子から降りてショートパンツに手をかけるパム。


 ベチン!


 僕はパムの頭をはたく。あぶねー、子供かよ。すぐに脱ぎたがる。


「出さんでもよろしい。そんな事よりお前らもっと仲良くできないのか? 数少ない仲間なんじゃないのか?」


 王国には子供族はそこまで多くない。彼らは基本的に放浪してる者が多く一所に留まらないからだ。冬は温かい所、夏は涼しい所にいるのを見る。


「そうね」


「そうだよね」


「けど、私は強い男にしか興味ないわ。て言うか弱い者とは話す価値もないわ」


「おい、オマエ。オイラが弱いって言ってるか?」


「そうよ、なんなら試してみる。私の誇る魔道の深奥を見せて差し上げるわ」


「上等だ。ヒィヒィ泣かしてやる!」


 同時に椅子を蹴り立ち上がる2人。やっぱこうなるのね。ビーチを選んで正解だった。


「フフフッ。最大戦力で行かせてもらうわ。さすがに裸は恥ずかしいから。水着は勿体ないけど……」


 ジブルは収納に服をしまい、水着になって僕らに背を向けて海の方に駆けていく。


「逃げるのか? ちみっこ」


 ちみっこがちみっこにちみっこ言ってる。早口言葉みたいだな。


 そして、ジブルの姿が弾け……


『ジブルちゃん、銀竜バージョン降臨!』


 風の魔法にのり聞こえてくるジブルの声。ん、魔法見せるとか言ってなかったか? 完全に物理でやる気まんまんじゃねーか。目の前には巨大な銀色の鱗を光らせてるドラゴン。そうだアイツ、骨、ヒドラだけじゃなくとうとうドラゴンにも変身出来るようになったんだったな。なんか魔物が成り上がってく話みたいだな。


「げぇー。昔見たドラゴン……」


 パムが全身で驚いている。そっか神竜王の時に見た事があるのか。けど、全くジブル活躍してなかったな。


「オイラの四十八手でオマエを調教してやりたい所だけど、やっぱりオイラはジェントルマン。女の子に手を上げる事なんて出来ないや。オイラ、急用を思い出し出した。悪いが帰るぞ」


 言うなりパムはジブルに背を向けて掛け出す。しかもめっさ早い。多分僕が本気でも追いつけない。けど、言ってるセリフにジェントルマンの欠片もねーよ。


 しばらく沈黙が辺りを支配した。


『ザップ、遊ぼ』


 銀竜ジブルが小首を傾げる。可愛くねーよ。


「遊ばんわ」


『えー、いけずぅ。裸の女の子の誘いを断るなんて。鬼よ鬼っ』


「なら、私がいっきまーす!」


 いつの間にかそばに来たドラゴン娘アンがジブルに掛け出す。そして弾けてもう一体のドラゴンが現れる。そして2体は海に向かい水を掛け合ったりボール遊びに興じ始めた。




「夏だね……」


 マイが海を見つめる。


「うん、夏だね……」


 僕も海を見つめる。いつの間にか、ドラゴンはもう一匹増えている。水竜王シルメイスだ。

 そして、僕とマイとノノはビーチで甲羅干ししながら、ドラゴン達が戯れるのをずっと見ていた。今日も平和だ。


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最強の荷物持ちの追放からはじまるハーレムライフ ~
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