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 カツレツ


「今夜の晩御飯はカツレツよ!」


 マイがなんか棒読みのセリフをはく。僕の目の前にマイとアンが立つ。ん、なんなんだ?


「マイ姉様、なんて言ってるか解りにくいですぅー?」


「アンちゃん、それは滑舌が悪い。似てるけど違うわカツゼツじゃなくてカツレツ」


「マイ姉様、メッチャお腹すきました」


「それはかつえる。カツレツとかつえる、確かに似てるけどあんまり使う人の居ない言葉だわ」


「ん、いきなりどうしたんだ?」


 僕は心配になって2人を見る。


「マイ姉様、やっぱり止めときましょう。ご主人様にさえ全くウケて無いですよ」


「そうね、苦手なことを無理矢理やる必要は無いわよね。真面目にいきましょう。真面目に……」


 少しマイが沈んでいる。もしかしてさっきのって笑うべき所だったのか? けど、正直全く面白くなかった。しいて面白かった所と言えば、だだ滑りなのにマイが真面目にやり抜いた所だろう。それとさっきの2人はそこはかとなく可愛らしかった。オッサン相手ならウケるだろう。


「それで、なんなんだ?」


「あのですね、今度隣のレストランでお料理教室をマイ姉様とやる事になりまして。その前にショートコントでお客さんの心をガッチリ掴もうという話になりまして」


 え! さっきの茶番、ショートコントのつもりだったのか? 危ない危ない。そんな事言ったら2人が傷つくところだった。


「ほう、そうなのか」


 無難な事を言っておく。


「それで、まずは食べてみて」


 マイはキッチンに走って言って、僕に料理を差し出す。きつね色の衣の薄い揚げ物みたいな料理だ。多分これがカツレツなんだと思うけど、カツレツって名前を聞いた事はあるが食べた事は無い。お店とかに行ってメニューにあってもついついステーキやハンバーグを頼んでしまう僕がいる。ナイフで切り分けてみんなで味見する。


「へー、柔らかいな。うん、美味い。こんなのが家で作れたら最高だな。いい料理教室になるんじゃないか? けど、こんなに美味いのにうちで食べるのは初めてだな」


「そう、それなら良かったわ。そうね、うちではあんまり作らないわね。まあ、手間がかかるっていうのはあるけど、これって固いお肉を叩いて伸ばしてるのよ。うちでは固いお肉はだいたいハンバーグにしちゃうから」


「へー、叩いて伸ばしてるのか。見てみたいな」


 そして、僕たちはキッチンに移動する。マイがまな板に乗った肉を小さなハンマーで叩き始める。みるみるお肉が広がって大きくなっていく。たまにレストランのキッチンとかにある小さなハンマーだ。叩いた時に当たるところがギザギザなヤツだ。何に使う調理器具かと思ってたら、お肉を叩くヤツだったんだな。


「けど、マイ、その小さなハンマーって普通の家には無いんじゃないか?」


「そうね。お家では代用品になるものをここで言う事にするわ。普通に木の棒とかでもいいし、ちょっとコツいるけど、包丁の背中でもいいわ。割れにくいコップでも瓶の底でもいいし、最悪綺麗に洗った手でもいいわ。あと、軽く表と裏に切れこみを入れてたら伸ばしやすいわ」


 素手で肉を叩くマイを想像する。直近ヤンデレっぽくて怖い。


「あと、このあとパン粉をつけて、多めに油を入れたフライパンで焼くのだけど、揚げ物と違って大量に油を使わない所も家計に優しいわ」


 マイは下味をつけたお肉に小麦粉をつけて溶き卵にくぐらせてパン粉をつけて焼き始めた。美味しそうな匂いが充満する。


 そして、晩御飯のメインはカツレツだった。美味しかったけど、僕とマイはソースは何が合うかで、意見が分かれた。マイはトマトソースがいいって言ってたけど、僕は普通に茶色いソースの方が美味しく感じられた。

 それと料理教室は大好評だった。例のショートコントがウケてたのは謎だった。

 

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