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 海賊


「ここから先に行きたいなら、積荷の1割置いて行って貰おうかーっ!」


 髑髏の描いてある海賊帽子に眼帯、右手にかぎ爪、右足には棒の義足。そしてその肩にはでっかいオウムが乗っている。男は船の舳先に立って叫んでいる。船首像は体を抱いた骸骨。あとマストにも黒地に白の骸骨の旗。


 海賊。海賊船と海賊だ。僕は感動で打ち震える。海賊、海賊は本当に存在したんだ。舳先に立ってる彼は、例えば町中などを歩いていても、見た誰もが海賊だと思うだろう。おとぎ話や物語の中に出てくる海賊そのものだ。



 僕たちは今、ポータービーチから臨海都市シートルへ向かう豪華客船に乗っている。動力は古竜シルメイス。シートルにあったでっかい鈍足魔道遊覧船を改造して、シルメイスの水を操る能力により走る高速船にした。普通だったらザップ海からシートルまでは船で1ヶ月はかかる所がなんと3日で運行する。しかも運賃は往復で大金貨2枚。頑張れば庶民でもなんとかなる金額だ。船の名前はクィーンシルメイス号。意外にシルメイスは自己顕示欲旺盛でこのネーミングに喜んでいる。目的はシートルへの観光客の誘致。王国、魔道都市アウフ、臨海都市シートルの三国提携の事業だ。

 今回は処女航海なのでシルメイスが直々に乗り込んでいるが、次からは部下に運行させるそうだ。ちなみに、何故僕が居るかと言えば保険だ。水を操るシルメイスの前では水棲の魔獣だろうが、海賊だろうが無力だ。けど、一応何かあった時に対応するために僕らが雇われて乗っている。お金を貰って贅沢できる最高の仕事だ。


 

 そして、高速移動する船の前に無理矢理海賊船が割り込んで来た。問答無用で排斥しようとするシルメイスを止めて船を止め、せっかくなのでこのイベントを楽しむ事にした。乗客の皆さんもそろそろ航海に退屈してきた所だろう。




「断る! 我々は海賊には屈し無い!」


 僕は海賊さん同様船の舳先に立つ。今2つの船は丁度船首を突き合わせている形だ。


「何、何言ってやがる。お前達の船は全く武装してないだろ。1割払うだけで安全にここを通れるんだぞ。払わないなら船に火をかけるぞ、運が悪かったら船が沈没するかもしれないんだぞ」


 ん、なんか海賊の癖に弱気だな。もしかして戦う気が無いのか? そうか、メッチャ海賊っぽい解り易い格好してるのは脅しだな。ただ通行料をせしめるための。

 なんか期待して損した。けちぃしヘタレな奴らだな。通行料払わないなら皆殺しにして積荷を全部奪ってやるくらい言えないのかよ。せっかく船上のバトルが楽しめると思ったのにガッカリだ。


「面倒くさい。消えろ」


 ボチャ、ボチャ、ボチャ、ボチャ、ボチャ。


 どんどん海に落ちていく海賊たち。とりあえず目の前の海賊船をまるっと収納に入れてやった。泳ぎやすいように服まで全部奪ってやった。陸は近いし泳いで行けるだろ。一応海賊だし。

 良いものを手に入れた。海賊船はザップ海に浮かべてなんかのアトラクションにしよう。


「覚えてろよー!」


 さっきの船長っぽい海賊さんが泳いで去っていく。頭にオウムを乗ってけて。両手両足もちゃんとある。義手のかぎ爪と、棒の義足はフェイク、細部にこだわる人だったんだな。

 そしてまた僕らは優雅な旅を続行した。


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最強の荷物持ちの追放からはじまるハーレムライフ ~
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