パーティーバトル
「よーく見とくんだぜ。荷物持ち。オメーも頑張りゃ俺みてーなスカウトになれるかもしれんぜ」
鷲鼻の痩せて背が高いスカウトのオッサンはそう言うと駆け出した。
前に一緒に冒険した中堅パーティー『ザ・モール』のメンバーに荷物持ちとして、また雇って貰った。前回、色々な事を学べたので、また勉強させて貰おうと思う。
今回の依頼は南の町の傍の森でオークを見たという情報があり、その真偽の確認と可能なら討伐というものだ。彼らが選ぶのは報酬がよくて危険度が少ない依頼。あと失敗条件が緩いもの。例えば今回は可能なら討伐。ヤバかったら逃げてもお金は入ってくるというものだ。失敗したらお金にならない依頼を受けると、生活に支障をきたす。一日で最低銀貨5枚は稼ぐというのがルールだそうだ。
ちなみに『ザ・モール』のパーティー構成は、戦士のおっさんのルークさんと、ドワーフの神官戦士のミシェルさん、魔法使いのおっさんのマイケルさん、スカウトにして武闘家のおっさんジョージと言う、おっさんしかいない。しかも普通の名前で覚えにくい。
そしてスカウトを先頭に森を探索して、オークの一団に遭遇した。その数3体。軽く打ち合わせして、難なく勝てるという事で、戦士と神官戦士が突撃した。そして、僕に一言言ってスカウトも向かった。
「オラオラ来いやブタ野郎どもっ!」
ガンガンガンガン!
戦士が盾を棍棒で打ち鳴らして威嚇する。
3匹の豚は興奮して戦士に向かう。
「あーあ、盾ぶっ壊すなよ。勿体ねーからな。ああやってヘイトを稼いでまずは敵を引きつけるのが、アイツの役目だ。攻撃はからっきしだが、防御はぴか一だ。俺達はその役割をタンクって呼んでいる。ほら見て見ろ豚の攻撃をことごとく盾と鎧で受け止めてるだろ」
魔法使いのオッサンが顎の無精髭を撫でながら解説してくれる。豚の武器は剣と槍と棍棒だ。しかも生意気に皮の鎧も帯びている。戦士は鎖帷子の要所を守る板金の鎧と盾で上手く攻撃を受け止めている。相手の攻撃を上手く潰す間合いで攻撃を受け、そのまま押し返したり、武器で牽制したりして同時攻撃を受けないようにしている。そして、一匹の豚が盾で押し返されて大きく下がる。
「ミシェル! やれ!」
スカウトからどこからか声が飛ぶ。完全に気配がしない。どこに居るんだ? 下がった豚に神官戦士が遅いかかる。その得物のハンマーで豚の側面からその足を横から薙ぐ。豚は転倒して起き上がれない。
「まずやるのは、こういう時は剣持ちだ。怪我は魔法で治せるが、失った血は戻らない。出来るだけ血を流さないで戦うのが安全に戦う秘訣だ。あと、俺達はまず一撃では魔物は倒せない。だから足を狙って鈍くしてやるんだ」
神官戦士は豚を一方的に攻め立てている。精彩を欠く豚の攻撃をかわして、着実に攻撃を加えていってる。
戦士の方を見ると、相変わらず防御一辺倒。攻撃は押し返したり牽制するだけだ。けど守るのだけに専念したら、そうそういい攻撃は受けないだろう。豚達がイライラし来てるのが手に取るように解る。そして急に一匹の豚が動きを止める。倒れた豚の後ろにはスカウトのオッサン。その手には血塗られたダガー。気配を殺して後頭部を一撃で貫いたみたいだ。戦士に集中し過ぎた豚の虚を突いたのだろう。凄ぇな。
「うおおおおーっ!」
それから一転戦士は攻撃に転じる。後ろからスカウト、前から戦士の猛攻を受け、豚はしばらくすると地に伏せた。神官戦士の方を見ると、そっちも片が付いていた。
「中々の連携だろ。俺達は個々じゃ弱い。タイマンじゃオーク一匹狩る事も出来ない。けど、見ての通りだ。俺達はほぼ無傷で、オーク1匹なんてほぼ無傷だ。こりゃ戻ったらいい酒飲めるぜ。少しはいい勉強になっただろ」
「それで、アンタは何してたんだ?」
魔法使いのオッサンに素直な疑問をぶつける。
「え、俺か? 俺は保険だ。魔法の回数には限りがあるからな、本当にヤバい時にしか使わない。ここからはお前の仕事だ。しっかり運んでくれよ。『最強の荷物持ち』さん」
ゲッ、ばれてーら。けど、態度を変えない所から魔法使いは言いふらすつもりは無さそうだ。ただの荷物持ちとして接してくれた。それから獲物を収納に入れて、再び森を探索した。最終的には新しい迷宮の入り口を見つけて、オークはそこから出てきたものだと解った。そして、報告に街に戻った。
安定して仕事をこなすプロフェッショナルの彼らが、むさいオッサンばかりなのに少し格好よくみえた。
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