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 ボディガード (7)


「ムール伯は、お前に公衆の面前で大恥をかかされた事でのお返しだそうだ」


 ザザは目を細めてアタシを見る。


 公衆の面前で大恥? 思い浮かばないわ。


「まだ、思い出さないのか? かつら伯爵だ」


「あー、思い出した。ムール伯って言うのね。あのハゲ伯爵」


 アタシはやっとムール伯という人物を思い出した。アタシのコンサートの後、下心丸出しで花束なんか持って来たから、手にキスしようとした時に貰った花束で頭のかつらをぶっ飛ばしてやったんだ。前々からキモい手紙なんかも送って来て迷惑だったのよね。あれ以来見なくなったから忘れてたわ。


「それにしても心せまいわね。それくらいで暗殺者やとうなんて」


「私は忍者。暗殺者は廃業した」


 ピオンってヤツが答える。


「それで、ムール伯ってヤツはお前に何か悪い事したのか?」


 ザザがアタシに尋ねる。


「手紙送って来たり、花くれたわ」


「で、お前は何したんだ?」


「かつら剥いで、ピッカピカの頭をご開帳してやったわ」


「そりゃ、お前が悪いな」


「なんでよ。キモい手紙送ってきたのよ。何か『女神のように綺麗だ』とか『世界一美しい』とか」

 

「じゃ、止めてくれって言えばよかっただろ。わざわざ相手に恥かかせる必要は無い。おい、ピオン吊してやれ」


「待ってよ、ソイツ、アタシんちに無断で入って来たのよ。ソイツこそ犯罪者よね」


「それがどうした? それならお前がピオンを捕まえればいいだろう。衛兵でも呼びに行くか? けど、その前にお前は伸されて吊されるだろな」


「ザザ、あんた正義の冒険者でしょ。悪いヤツやっつけなさいよ」


「正義? そんなもん知らん。俺は俺が好きなようにやるだけだ。悪いヤツをやっつけて欲しいのか。解った。目の前のヤツをやっつけてやろう。ピオン、加勢するぞ」


 ザザは指をポキポキ鳴らしながら立ち上がる。


「ええーっ、なんでアタシが悪者?」


「ザザ、私に任せろ。全身に恥ずかしい言葉を書いて外に吊す。ザザには荷が重い」


 ピオンってヤツも立ち上がり、アタシににじり寄る。


「待って待って、どうすればいいのよ」


「自分で考えろ」


 ザザはそう言うと、また座って面白くない雑誌に目を落とす。ピオンってヤツに任せるって事? アタシは目まぐるしく考える。どうすればいいの?


「ごめんなさい、ごめんなさい。謝るわ」


「誰に?」


「ムール伯に!」


「解ったピオン許してやれ。ライラ、まずはムール伯とやらに手紙を書け。あとで直接謝りに行け。あとピオンに依頼の前金分に色つけて払うんだな。それでいいかピオン?」


「まあ、私的にはそれで損はしないから良いだろう」


「解ったわありがとう。けど、不法侵入分は金額へらしてくれないかなー?」


「ああん」


 ピオンってヤツがめっちゃメンチ切ってくる。


「ごめんなさい、冗談よ冗談……」


 そして、手紙を書いてお金を払い、なんとか裸で吊されずにすんだ。

 けど、ザザはムカつく。アタシの護衛じゃないのかよ。何しに来てんだよ。

 そういえば、初めてライラって名前を呼ばれたような……



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