ボディガード (6)
アタシは脱衣所で服を脱いで、露出が多い時用の布面積が狭いアタシの肌の色に合わせた下着をつける。コレを着てシャワー浴びながら、叫んでザザに助けを呼んで、飛び込んで来たヤツを驚かす予定だ。ヤツは女性への免疫が無いっぽいからどんな驚き方するか楽しみだ。
シャアーーーーーッ。
今日のシャワーは少しぬるめで。この暑さの中、あっついシャワー浴びたら上がったあとに暑くなる。あの朴念仁はまださっきのつまらなさそうな雑誌に夢中なのかな? そろそろいってみるか。
「キャアアアアーッ!」
アタシは叫ぶ。デラックス歌姫ボイスだ。めっちゃ通るはず。
ダダダッ!
うん、駆けてくる足音。
バタン!
扉をひらくザザ。アタシは下着を手で隠す。これで全裸に見えるはず。
「どうした?」
「なんか物音が……」
フフフッ。アタシのパーフェクトボディにザザは釘付けなはず……はず……はず? え、どこ見てんの? 足元?
「キャア!」
アタシの足元に蛇が。なんなの? 透けてる。水で出来た蛇?
キシャーッ!
水で出来た蛇はアタシに向かって飛んでくる。なんなのよ? けど、アタシに近づいてきたザザが叩き落とす。
「どっから見てやがる? 上か」
ザザはアタシの手を取り引っ張る。
ドサッ!
風呂場の上から埃を立てながら誰かが落ちてくる。黒装束だ。え、風呂場の天井が無い。
「チェックメイトだ」
ザザがそう言った時には、黒装束の首に首輪がついていて、それから伸びた紐がザザの手に握られている。何、何が起きたのか訳わからない?
「さすが、強いなザッ……ムグッ」
話し始めた黒装束の口をザザが塞ぐ。声が高い。ちっちゃいと思ったけど女の子だわ。この黒装束とザザは知り合い?
「どういう事? ザザ、説明しなさい」
「ん、そうだ、それよりも、お前、歌姫って下着つけて風呂にはいるものなのか?」
「ばか、何ジロジロ見てんのよ。さっさと終わらせるからその人連れてって待っとくのよ」
不覚だわ。ザザを驚かす積もりが、アタシが驚いてばっかだわ。下着を脱いで、ちゃっちゃとシャワーを浴びて着替えて戻る。
「コイツの名前はピオン。忍者だ。殺し屋アブソリュートじゃない」
戻るなり、訊いてもいないのに、ザザが話し始める。なんか怪しいわね。なんなのか解らないけど何か隠してるわね。アタシ達はリビングの机につく。
「私の依頼主はムール伯。内容は歌姫ライラに恥をかかせる事。私はお前を裸で外に吊す予定だった。ザザに感謝するんだな」
黒装束が口を開く。
「アンタ、なんて事しようとしてんのよ。ザザ、コイツをぶっ殺して!」
「やりたいなら、お前がやれ。ピオンは強いぞ。多分吊されるぞ。俺の仕事はお前の命を守る事。裸で吊されようが生きてるなら問題ない」
「問題大有りだわ。裸で吊されたら、アイドルとして死ぬわ!」
「で、お前、やるのか? やらないのか?」
黒装束が腰を浮かす。やる訳ねーだろ。
「幾ら? 幾らで、その依頼キャンセル出来るの?」
「きたねーヤツだな。金で解決する気か? その前にお前なんで狙われてるのか考えないのか?」
「ムール、ムール伯? わかんないわ」
「ピオン、説明してやれ」
ザザはヤレヤレポーズを取る。