番外編SS 荷物持ち少女たちの荷物持つ(前編)
「誰か荷物持ちいないっすか? 銀貨5枚、日帰りで銀貨5枚だすっすよ!」
赤毛の活発そうな少女が声を張っている。新しい鎧に身を包み、言葉使いもだけど、見習い騎士って感じだ。初々しいな。
まあ、だけど、銀貨5枚は安いな、野良仕事よりも安い。畑で一日雑草抜いてるのといい勝負の金額だ。
そばには仲間っぽい者もいて、よく見ると珍しい事に少女四人のパーティーのようだ。
「たった、ゴブリン5匹の討伐の荷物持ちっすよ。寝ててもお金もらえるっすよ!」
さっきの赤毛の戦士スタイルの少女がまくし立てる。
なにっ、ゴブリン!
ゴブリン退治なのか!
僕の脳裏に先日のゴブリン退治の事が蘇る。ゴブリンは危険だ。いたいけな少女たちには荷が重いのではないか? 僕は素材を売りに来てたのだが、ついついお節介を出してしまった。
「話を聞こうか?」
僕は女の子達の身を案じ、荷物持ちの依頼を受ける事にした。決して女の子達が可愛かったからではない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
少女達は、戦士がアンジュ、赤毛でショートヘア、スレンダーでメリハリボディだ。たゆまず訓練してると思われる。
魔法使いのルル、金髪でおかっぱで胸がでっかい。
エルフのレンジャーのデル、びっくりするくらいの美形で金髪ロングで貧乳だ。
それと神官戦士のミカ、黒髪ポニーテイルでちっちゃいけど爆乳だ。誓って僕は胸と体ばっかり見てた訳では無い。正直、みんな個性的で可愛い。全員16才だそうだ。間違いなく駆け出しの冒険者だな。僕たちは打ち合わせして、現場へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「光よ!」
薄暗い洞窟の中が魔法使いルルの光の魔法で煌々と照らされる。
中は広めの空間で、五匹のゴブリンの姿が光にさらされる。ボロボロに錆びた武器をもち、全員ガリガリに痩せているのが見て解る。
「行くわよ」
戦士のアンジュが小盾と広刃の片手剣、神官戦士のミカが戦槌を手に前に出る。アンジュはゴブリンの攻撃を盾でいなしてチクチク剣でゴブリンを傷つけていく。ミカは攻撃をかわしながら、一撃をいれるチャンスを狙っている。
大丈夫かこいつら、このままだと実力的に誰かやられるぞ。しょうがないな。僕は荷物を置き走り出す。
「ファイヤー・ボルト」
魔法使いルルの魔法が一匹のゴブリンの頭にあたる。ゴブリンは倒れのたうちまわっているけど致命傷ではない。
「荷物持ち、下がれ! ていっ!」
レンジャーのデルが弓で魔法のあたったゴブリンを射貫く。やっと一匹。
浮いた二匹が一目散に魔法使いルルを目指す。ゴブリンはいつでも迷わずに一番弱そうな者を狙う。どうするか? 手伝ってもいいが、彼女たちのためにならない。死にかけたら治療してやる事にして、まだ見とく事にする。
「キャッ」
魔法使いルルは一匹目の攻撃をかわすが、二匹目の攻撃が掠める。レンジャーのデルがそれに体当たりをする。
「前衛、早くしろ!」
レンジャーのデルが叫ぶ。デルはいい動きだ。2匹相手なのに上手くかわし続けている。だが、ゴブリンはより弱そうな魔法使いのルルに向かい、それをデルはかばい負傷する。
「グギャーッ」
神官戦士のミカが一匹を倒し、レンジャーのデルの方に走る。
「アンジュ! 何時まで遊んでるんだ!」
神官戦士のミカはデルとゴブリンの間に入り二匹のゴブリンを牽制するが、息が上がっている。魔法使いルルは倒れていて、レンジャーのデルは怪我を押さえている。
「ギャギャー」
「待たせたな。いくぞ!」
戦士のアンジュがなんとか一匹を屠る。けど、数カ所怪我してるみたいだ。
「あうっ!」
神官戦士のミカが殴り倒される。
「ファイヤー・ボルト! あたって」
倒れたまま、魔法使いルルが神官戦士のミカを殴ったゴブリンに炎の矢を命中させる。
「ギャギャーッ!」
魔法が当たったゴブリン叫び蹲る。
「トウリャーッ、くたばれぇい!」
神官戦士のミカに攻撃しようとしたゴブリンに、後ろから戦士のアンジュが飛びかかり頸に致命傷を与える。
あと一匹、どうにかこうにかだけど、もう大丈夫だな。
「グギャーッ!」
戦士のアンジュが最後のゴブリンにとどめを刺した。
僕は手にかいた汗を服で拭うと、荷物を持った。僕の心臓はまだ鼓動が早い。良かった、全員無事で。神官戦士のミカが順番に回復魔法をかけて、戦士のアンジュが討伐証明部位のゴブリンの右耳を切り落としていく。
「終わったーっ」
戦士のアンジュは床に大の字で寝っ転がる。
「そうね、よかった全員無事で、怪我もあたしが治せる程度だったし」
神官戦士のミカも床に横になる。
「まだまだ、頑張らないとね」
レンジャーのデルも寝っ転がる。
「何はともあれ、大成功ね。休んでるとこ悪いけど、もうじき光の魔法が切れるわ」
魔法使いのルルは杖にもたれかかっている。
「「「まじか!」」」
三人は億劫そうに立ち上がる。
僕は四人のやり取りを微笑ましく見ていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「覗かないでよ、覗いたら報酬へらすわよ!」
戦士のアンジュが僕を睨む。銀貨5枚で美少女たちの裸が見られるのか? それって格安だと思ったが、僕は紳士なので我慢する事にする。
洞窟のそばには天然の温泉があり、僕たちはそこに来ている。やたら荷物が多いと思ったらその中は着替えが入っていた。始めからこれも目的だったんだな。たかだかゴブリン退治に荷物持ちを雇った理由は入浴中の荷物番が欲しかったのか。
「ああ、わかった」
僕の後ろで、少女たちはキャッキャ騒ぎながら服を脱ぎ始めたみたいだ。
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