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 屋台


「くぅあーっ。沁みるーっ」


 僕はノンアルコールのエールを一気に喉に流し込む。ガラスのジョッキは凍ってるかのようにキンキンで、エールもとっても冷えている。今日も1日暑い中肉体労働だったので、マジで美味い。正直幸せを噛み締めてしまう。


「プッファー。んんー、美味しい!」


 僕の隣ではマイが普通のエールを一挙に流し込む。少し羨ましい。マイは正直うわばみだ。あんまり酔ってるとこを見た事が無い。


 残念な事に僕は普通のエールで一気飲みすると、一撃で酔いが回って、記憶が無いので解らないが、人格が豹変してしまうらしい。

 最近、王都では、ノンアルコールのエールが流行っている。魔道都市アウフの特産品で普通のエールから魔法でアルコールを抜いているらしい。値段は普通のエールと同じだが、そののどごし、味ともに普通のエールと遜色なく、お酒に弱いけど好きな僕には有難い。最初2杯はノンアルで、そして最後の1杯は普通のエールというのか、最近の僕のスタイルだ。


 今、僕らは家の隣の食堂『みみずくの横ばい亭』の外に期間限定で出店している屋台にいる。簡易テントにカウンターで、メニューは串焼きとエールのみだ。オープン記念でドリンク1杯サービスというのに惹かれて今日はここで夕食を摂る事にした。けど、僕とマイ以外は暑さに耐えきれず、店内で食事している。


「じゃ、串焼きお任せで」


「あいよ」


 串を焼いているのは、食堂のウェイトレスの1人、忍者ピオンだ。ピオンの後ろには焼き台があり、その上で焼かれている串から、食欲をそそる煙が出ている。今日はまだ早いから僕たちだけだけど、連日大盛況らしい。忍者2人が交代で切り盛りしているそうだ。忍者って串も焼けるんだな。便利な職業クラスだな。

 ピオンが何も言わずに僕たちの前に山盛りの野菜を出す。一口サイズに切ったキャベツだな。食べろという意味か?


「ザップ、キャベツはね、消化を助けたり、胃もたれしにくくなるのよ。いただきましょう」


 相変わらず、マイは食べ物について博識だ。とりあえず、キャベツを口にする。酸っぱくて癖になる味だ。

 僕とマイは串が焼けるのを見ながら、もう1杯づつエールをたのむ。


「ザップ、マイ。焼けるたびに置くから食え。串はコレに入れろ」


 ピオンは木のコップみたいなのを置く。それにしても、コイツ大丈夫なのか? サービス精神皆無だな。店に入って『食え』って命令されたのは初めてだ。けど、ピオンは小っちゃな女の子なので、嫌な気はしない。

 ピオンは何も言わず、キャベツの山の上に焼きたての串を置く。鶏ももだ。それにしても、雑だなぁ。ま、食うか。


「…………」


 う、美味い。なんだこりゃ。普通に焼いた鳥は美味いものだが、何というか、そう、香ばしさ、香ばしさに溢れている。即座に食べ終え、エールを口にするとつい飲み干してしまった。串焼きに冷えたエール。最高だ!


「ノンアルエールおかわり」


「あたしもおかわり」


 ついつい、予定より飲み過ぎてしまいそうだ。


「なんか、とっても香りがいいわね」


「さすが、マイ、解るか。木にこだわってる。ドングリの木だ。ドングリの木は香りがいい」


 なんかピオンが饒舌だ。褒められて嬉しいのか?


 そして、それから僕たちは串焼きと冷たいエールを堪能した。暑い中だけど、その暑さがより美味しさを引き立てている。次は無理矢理でも他のメンバーにも楽しんで貰いたいと思う。

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