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 熱帯夜


「うぉ、あっちー。眠れんぞ、コラァ」


 僕はノロノロとベッドから転がり降りる。全身汗だくだ。あとでひとっ風呂浴びよう。

 いかん、これはダメだ。全く眠れない。窓は全開で、団扇で自分を煽ぎながら寝ようとしていたのだが、今日は無理だ。いや、逆に今までこれで凌いでいた自分を尊敬する。昔は村に住んでたので、夜になるとそれなりに涼しくなってたものだが、町中は夜もあんまり涼しくならない。

 本当は、個人的には寝るときは魔法に頼らずに自然のまま寝た方が、体調が良いような気がするが、上手く寝ついたら魔法が解けるようにしていたら問題ないはずだ。

 僕は導師ジブルの部屋をノックする。


「ザップかしら? 入ってもいいわよ」


 返ってきたのはノノの声。超絶美少女サイコパスのハイエルフ様だ。


「どうしたのかしら?」


 ハイエルフ様は薄いネグリジェで下着をつけてないように見える。その童顔に似つかわしくない背徳的な姿を出来るだけ目に入れないようにする。

頭の中さえまともなら、美少女なのにな……


「いや、暑すぎて眠れないから、ジブルに魔法でもお願いしたいと思ってな」


 なんか部屋の中から微妙に風が流れてくる。


『ん、ザップ眠れないの? しょうが無いわね。私たちと一緒に寝る?』


 ベッドから起き上がって来たのは、一体の小柄なスケルトン。導師ジブルの第2形態、スケルトンジブルだ。そういえば、コイツは、骨になったら暑さ寒さを感じないって言ってたな。

 

「いや、それは無いから。それより、俺の部屋に魔法の氷出してくれないか?」


『ごめんね、今日は魔法いっぱい使ったから、もう元の姿には戻れないわ』


 なんと、氷は出せないのか。あてが外れたな。


「ノノ、お前はどうしてるんだ?」


「私は、風の精霊に風を送ってもらってるのかしら。妖精王の名前は伊達じゃないわ」


 腰に手を当ててドヤるノノ。


「そうか、なら、その精霊貸してくれないか?」


「嫌よ。ノノがそしたら暑くて眠れないわ。お前も頑張って精霊を捕まえる事ね」


 まあ、そうだよな。コイツらに期待する方が間違いだった。


「所で、なんでお前ら一緒に寝てるんだ?」


『そりゃ、魔法の節約のためよ。一緒にいたら1つの魔法で涼めるでしょ』


 少しコイツらと同じ部屋で寝る事も頭をよぎるが、追っぱらう。コイツらのそばにいたら、何されるか解らない。


 そうだ、マイ、マイはどうしてるんだろうか? 僕はジブルの部屋を後にする。


「マイ、大丈夫か?」


 なんて言ったらいいかいまいちいい言葉が浮かばないので、そう言ってみた。


 ガチャリ。


「暑いわ。暑くて死にそうだわ……」


 虚ろな目をして部屋からマイが顔を出す。なんかいつもより、髪がボサボサ気味で着衣も乱れている。


「どうしたのザップ?」


「いや、今日は暑いなと思ってな」


「うん、暑いわ。けど、気合いで寝るしかないわ」


 ガチャリ。


 そう言うと、マイは扉を閉じた。相変わらず気合いで乗り切るつもりみたいだな。間違い無く暑さでバグっている。触らぬ神にたたり無しだ。


 アン、あのヘタレドラゴンはどうしてるんだろか?


「おい、アン入るぞ」


 アンの部屋に入ると、ヒンヤリだ。


「お前、それ、どうしたんだ?」


 ドラゴン娘は薄着で氷で出来たベッドに寝ている。なんて生意気な。けど、普通の人間がしたら凍傷まっしぐらだろう。


「あ、ご主人様。とうとう私の魅力に抗えなくなったんですか?」


「寝言は寝て言え」


「私、今寝ている所ですが?」


「ググッ……」


 最近聡くなりやがって、なかなか切り返しが鋭い。


「その氷、どうしたんだ?」


「聞きたい? 聞きたいのですか?」


「うぜぇ、早く言え」


「フフッ。なんとですね。私は冬のうちに収納にたっくさんの氷を入れてたんですよ。夏になったらベッドにしたりかき氷にして食べたりしようと思って」


 ジャリジャリジャリジャリ!


 ドラゴン娘は手慣れたようにベッドをガリガリすると、それをお椀に盛って収納から蜜をかける。


「ご主人様、食べますか?」


「いらんわ!」


 やっぱりもっと教育が必要だ。なんで、コイツがベッドにしてたものをくわにゃアカンのだ……


「じゃあな、お腹こわすなよ」


 僕はかき氷を食ってるドラゴンの部屋を後にする。


 むぅ、どうするか。そういえば、迷宮に行ってた時は涼しかったな。そうだ。迷宮。迷宮を作ればいいんだ。僕はぽっちゃりドラゴン小僧のオブの所へ行く。


「おい、オブ起きろ」


 さすがオブ。暑いとか関係なく寝てやがる。


「どうしたんですか?」


「今すぐ家の下に迷宮を作れ」


「なんですか、藪から棒に……」


 僕は事の次第を話す。


「まあ、迷宮はおいとくとして、涼むのなら深い地下室でいいんじゃないですか?」


「ああ、俺がほっただけだと崩れると思うからお前も手伝ってくれ」


「いいですよ」


 そして、僕は深い穴を掘って涼しい地下室を手に入れて、やっと涼しく寝る事が出来た。

 けど、それはすぐに崩れて危うく生き埋めになる所だった。


 何か暑さ対策考えないとな……



読んでいただきありがとうございます。


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