番外編SS 荷物持ちドラゴンと炬燵に入る
「お前、年、幾つくらいなんだ?」
僕は前々からの疑問を、毛布にくるまって炬燵に入っているドラゴンの化身アンにぶつける。今、僕も炬燵にお邪魔している。掘り炬燵というやつで床には穴が掘ってあり、中には木炭が入っている。
これはやばい。抜け出せなくなるのがよくわかる。
「ご主人様、人間の間ではレディーに年を聞くのは失礼な事と聞いてますよ」
お茶などすすっている。老人みたいだな。
「お前、ドラゴンだろ」
「レディーです」
「ドラゴンだろ」
「レディーですよ」
アンはくるまってる毛布を軽くはだける。白い胸がちらっとみえる。
「ああ、確かにレディーだな……お前寒いならまず服を着ろ。人間の常識語る前に、人間の常識を学べ!」
僕は炬燵からでて部屋を出る。
「マイ、マイ、またこの変態ドラゴン服着てないぞ」
「なんですって、アンちゃん今日こそは許さないわよ!」
速攻マイが現れる。手にはアンの下着とメイド服を持ってる。早いな。すぐ出せるように準備しているのか?
マイがアンの部屋に入ったのを見届けて、部屋の扉を閉める。
「いやー、勘弁して、ブラジャー嫌い、パンツも嫌い。締め付けられるのいやー」
「何言ってるのよ、女の子でしょ」
「やめて、くすぐったい。ドラゴンの力みせてやるわ」
「…………」
中はおとなしくなった。少し見てみたい気もする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ザップー、入ってもいいわよ」
僕はまた炬燵に入る。アンはメイド服を着てる。似合ってるな。なんかマイの服が乱れてる気もする。なにをしてたんだ?
「なあ、アン、そう言えば、お前行きたいとことかないのか? 故郷とか」
「ご主人様、私は悲しい事に昔の事はほとんど忘れてしまいました。覚えているのは西の方にとってもワインが美味しい国があったのと、東の方に美味しい魚料理がある国があったという事くらいですかね」
家族や仲間より、食べ物の方が心に残っているのか。なんか理性のある生き物としてどうかと思う。
「美味しいワインは魅力的だけど、ザップにお酒は危険過ぎるわね」
「そうですね、けど、ご主人様が俺様俺様って言うのもまた見てみたい気もしますね。あ、ご主人様にお酒飲ませたら、マイ姉様の願いが叶うのではないですか?」
「それもいいかもね、って何言ってるのよ」
「マイ、願いってなんだ?」
「それは……」
マイの顔が赤くなる。僕がお酒を飲んだら叶うマイの願い。何だろう。
「解った、また、『ゴールデン・ウィンド』を追放されてからの、俺の戦いの話が聞きたいんだな。それなら、酒が無くても話してやれるぞ」
「ザップのばか、朴念仁! おたんこなす!」
マイは、顔を真っ赤にして炬燵から出て部屋からも走って出て行った。ぼくねんじんてなんだ? 猿人間の親戚か?
「ご主人様は、乙女心がわかってないですね……」
僕はしばらくアンから訳の解らない講義を受けた。なんなんだ?