スライム祭り あと
「アン、今日はドラゴンはそこまでだ。あとは地道にプチプチ潰せ」
「えー、せっかく盛り上がってたのに」
「暑い。暑いんだよ。お前涼しいブレスは吐けんのか?」
「すみません。吐けません」
まあ、そうだろな。もし冷たいブレスが吐けるのなら、コイツはもっと涼しく生きていけるはずだ。
「という事だ。暑いからドラゴン無しだ」
僕は今日のパーティーメンバーを見渡す。マイなき今、僕、アン、廃エルフのノノだ。けど、ノノの姿がさっきから見えない。
「なんか、一気に殲滅するいい方法ないのか?」
「そんな事より、ザップ、よく見るのかしら」
ノノがスライム二匹をつかんで引きずってきてる。赤色と青色の奴だ。
「それがどうした?」
「見とくのかしら」
ノノは二匹のスライムを思いっきりぶつける。すると、二匹はくっついてしばらく赤と青のグラデーションを描くと、混じり合い、一回り大っきな紫のスライムが誕生した。
「凄いでしょ。こういう風に合体させると違う色になるのよ」
「それがどうした?」
「せっかちな奴ね。アレを見るのよ」
ノノが指さした方向には大っきめな黒いスライムがプルプルしてる。
「全ての色を混ぜ合わせたら、黒いスライムになるのよ。スライムの色も絵の具と同じようになるのよ」
なんかノノは興奮している。
「要するに、色んな色のスライムがいるけど、多分、赤、青、黄色の三色のスライムが混じり合ったりして、あそこまでカラフルになってると思われるのかしら」
「ほう、そうなのか。それで、それが殲滅の何に役立つんだ?」
「グッ、痛い所つくわね。ザップ、お前には学術的な探究心は無いのかしら? 人として疑問に思った事は全て究明していくべきよ。それはそうと見ときなさい」
ノノは黒いスライムの方に駆け出す。
「グラトニー」
ノノの手から溢れた光が黒スライムに突き刺さる。あれは、地獄の魔法、確か人をぽっちゃりにするヤツでは?
「止めろノノ」
何考えてるんだ。スライムを強化する積もりか?
思った通り、黒スライムはブクブク大っきくなる。
「コイツは私になついてるわ。行くのよ、クロスラ!」
ちっちゃな家くらいの大きさになったスライムは迫ってくるカラフルスライムの群れの方に意外にスピーディーに移動していく。そして、蹂躙が始まった。次々にクロスラは他のスライムを呑み込んでいく。
「クロスラ、人間とスライムは一緒に暮らせないのよ……森へお帰り」
ノノは悲痛な面持ちでクロスラを見上げる。もうスライムと言うより山だ。全てのスライムをヤツは飲み込みやがった。なかなか便利なヤツだ。ちなみにアンは退屈してそこらでクカーっと寝てる。
「ギャーーーッ!」
ノノの叫び声がして、そっちを見ると、ノノがいない。クロスラだけだ。あ、食われたんか。やっぱり懐いてなかったんだな。
「絶剣、山殺し」
僕は剣長30メートルはある、化け物大剣を収納から出すと、一閃してクロスラを両断する。黒い液体がほとばしり、あとには真っ黒に染まったノノが立ち尽くす。どんな美少女でも全身黒染めだと、妖怪にしか見えない。
「ありがとう、ザップ。あと少しで消化されるとこだったわ」
「解ったから、寄るなきたねー」
「女の子にきたないは酷いのかしら」
僕ににじり寄るノノ。人まで巻き込むな。
「それより、お前、またさっきのヤツ頼む」
僕はこっちに向かって来る黒い波を指差す。あれスライムだな。しかもさっきのと違って合体しまくったヤツだな。
「ええーっ。まだいるの?」
「次は俺も戦うから。アンも起こせ」
「はあー……やるしかないわね」
そして、僕たちは、とめどなくスライムを狩り続けた。空を仰ぐと入道雲。もうじき夏だな。