スライム祭り まえ
「なんじゃこりゃあ!」
なんか、最近叫んでばかりな気もするが、ついつい叫んでしまう。
僕たちに向かって動くいや雪崩て来るケバケバしい色彩の奔流。赤、青、黄色、紫、緑。様々な色の球体。まるで瓶の中のジェリービーンズみたいだ。あのクソ甘い砂糖の塊のような味が口の中に広がった気がする。じわじわとそのサイケデリックな物体がこちらに近づいて来る。
むぅ、どうするか?
「あたしは、何て言うか、対個人特化だし、なんか汚れそうだからヨロシクッ!」
マイはそう言うと一目散に逃げ出した。
「殲滅するぞ!」
僕は自分自身と、ドラゴンの化身アンを鼓舞する。
「はい、任せて下さい。へーんしん!」
そう言うとアンは服を脱ぐと駆け出して、その姿が膨れ上がり、目の前には巨大なドラゴンが現れた。あ、あいつまた下着つけてなかったな。夏の日差しの中、真っ白なアンのお尻は眩しかった。
『スライム大発生! 求む冒険者!』
長く続いた雨によって、今年もスライムが大発生したみたいだ。そして、そのスライムたちは導かれたかのように同じ方向に移動し始める。まあ、スライムは大したことないから、普通は数組の新米冒険者で事足りるのだが、今年は勝手が違った。たまたま偶然に複数のスライム大移動が合流してかなりの数量になってしまった。それで、緊急依頼として、王都全域の冒険者に召集がかけられた。その無限と言われても納得するようなスライムの群れは、このままだと王都になだれ込む恐れがある。スライムの大軍が通った後には石や砂しか残らず、しばらくはペンペン草も生えなくなる。さすがにそれはまずいので、僕たちも協力する事にした。
そして、僕らの目の前にはジェリービーンズみたいなスライムの群れが大地を埋め尽くしている。おいおい、何種類のスライムの群れが合流したんだよ。
「ゴオオオオオオオオーッ!」
ドラゴンアンはその自慢の強力なブレスを吐く。首を振りながら満遍なくスライムを焼き尽くしていく。いかん、これはいかんオーバーキル過ぎる。
よくよく考えてみる。今回貰える依頼料と、本気を出したアンのその後の食事料金を考えると、トントンか下手したら赤字だ。コイツ、スライム食べて腹満たしてくれないかな。暑い中、更にアンが辺りを暑くして、正直地獄だ。地獄な思いして、儲けが無いのは辛すぎる。
「アーン! ストップストップ」
アンがこっちを向いて口を開ける。なんか食べさせてくれるの? って顔してる。違うわ!
「アーンじゃない、アンお前の名前だ。とりあえず人間に戻れ!」
アンは絞んで人間に戻り、魔法の服を身に纏い戻ってくる。