深淵を見るもの
「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」
僕がなんとなくぽっちゃり少年のオブを見ていると、いきなりプニプニドラゴンに変身して、奴が低い渋い声で僕に語りかけて来た。オブ、それは黒竜王オブシワンの化身。ぽっちゃり少年とぽっちゃりドラゴンの姿を行ったり来たりしてる、残念な生き物だ。
今、僕はリビングのソファで寛いでいる。部屋には少女冒険者4人の魔法使いルルと、僕の妹分のラパンがだらっと本など読んでいる。なんか珍しい組み合わせだ。
それにしても、なんの事言ってるんだオブは? なんか変なものでも食ったのか?
「なんだ? その深淵って?」
「深淵は我、我はこそは深淵。深淵とは闇、闇とは深淵。我こそは深淵が顕現し者。黒竜王オブシワン」
プニプニドラゴンオブはパタパタと僕の目の前に飛んで来ると、そのちっちゃくて短い羽をプリッと広げた。格好つけてるむもりか? 言ってる事を翻訳すると、オブを見るとオブも見てるよって事か? 訳が解らん。
「キャー可愛い!」
ソファで本を読んでいた魔法使いのルルがオブに近づき抱き締める。ルルと言えば超絶巨乳。羨ましい奴だ。僕もプニプニドラゴンになりたい。プニプニがでっかいプルプルに埋もれている。しかもオブはさりげなくルルの胸に手を伸ばす。さ、触ってやがる……
「僕も抱っこしたい」
ラパンがルルからオブを取ろうとするが、オブはルルから離れない。さすがオブ、ドラゴンなのに邪念の塊だ。
「汝にはまだ深淵は尚早。深淵をいだきし者は円熟なりし者のみ」
ん、要は、お前にはまだ早い。胸が小さいものは抱いちゃ駄目って事か? 翻訳してみると、かなりゲスい事言ってやがるな。
「何言ってるのかわかんないよ。とりあえず抱っこしてやる」
ラパンは強引にオブを引き剥がして抱き締める。
「うん、可愛い可愛い。柔らか柔らか」
ラパンはオブを抱き締める。そうなんだよな。オブの抱き心地って赤ちゃんだっこしてるみたいなんだよな。
「深淵は深淵より来たりて深淵に至る」
相変わらず訳が解らない事言ってやがる。けど、オブはラパンにしがみついている。まんざらではないらしい。しかも軽くまた手を添えている。可愛らしい姿して、エロい奴だ。ラパンは満足してオブを開放する。
そしてオブは僕の所にフヨフヨ飛んでくる。
「我を封じし猿の如き魔王よ。深淵より汝を見ているぞ! ん、何してたんだ僕?」
なんか訳解らない事言ったあと、オブの声が普通に戻る。けど、たしか『ましら』って猿の事だよな。遠回しにディスってるのか?
「あ、そうか、もしかして、うん、そうだ。今僕は少しだけ本体とリンクしてたみたいだ。ザップ、僕は何か変な事しなかったか?」
変な事? 十分してただろ。
「お前、さりげなくルルとラパンの胸触ってたぞ」
「ええーっ、そんな馬鹿な僕はそんな事する積もりは無いのに……ゴメンねお姉ちゃん達。僕の本体が変な事して」
オブは可愛らしく頭を下げる。本当なのか? なんとも言えないな。そんな事する積もりが無いって言うのがなんか嘘臭い。
そして、オブはマイに同じ事をしてタコ殴りされていた。泣きながら、たまには本当に本体を受信してるって言っていた。けど、そうだとしても、正直やってる事はいつもと変わらない。黒竜王、やれやれだ。
「オブ君は深淵の化身って言うか、真エロね……」
マイにしては上手い事言ってると思った。
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