番外編SS 荷物持ちと猫耳少女
あたしの名前はマイ。少し前までは冒険者の荷物持ちをしていた。
あの日は熟練の冒険者パーティーの荷物を持って原始の迷宮に入って三日目、順調に30層まで進んだ所で悲劇は起きた。
パーティーは『オリハルコンの盾』と言う名前で、鋼の盾バーディーと言う、あたしの体が隠れる位の大きな盾をもった無口なリーダーに、エルフの格好いい弓使いさん、気のいい魔法使いのおじさん、優しい神官のお姉さんの4人だった。みんないい人だった。獣人のあたしにも優しくしてくれたし。
リーダーが攻撃を一手に引き受けて、他の3人が倒す堅実な戦い方。それまでは、ずっとうまくいってた。トロル四匹ですらも倒してた。
けど、終わりは突然だった。トロルと戦ってる時にリーダーが盾を落とし殴り倒されて、仲間達も次々に倒される。そして、あたしはトロルに殴られた所までしか覚えていない。
今だから解るけど、リーダーの盾は使いすぎて限界だったんだと思う。あたしがもっと賢くて、あの時もっと早く引き返してたら……
目が覚めたら、新種のモンスターが目に入った。前傾姿勢に刺のついた大きな鉄球のついた棒をもち、腰と肩に汚らしい皮を巻いている。ぼさぼさな髪に伸びかけた髭、目がやたらギラギラと光っていた。
助けを求め辺りを見渡すと、そこは地獄。見る影もない冒険者たちと、頭のないトロルの死骸。多分、トロルはあのモンスターがやったんだ。次は多分あたしの番。
「キャアアアアアッ」
気がついたら、口から悲鳴が出てた。あたしはこの時は気づいてなかった。殴られた怪我が治っていた事を。また、あたしは気を失ってた。
次に目が覚めると、モンスターと思ってたものは、目を瞑り頭を垂れていた。黙祷してる? 冒険者たちに?
あたしは、夢中で去って行った彼を追いかけた。
そして、彼、ザップとの生活が始まった。
始めのうちはとっても怖かった。臭いし汚いし粗野だし。
けど、ザップは優しい。ばかみたいに優しい。
助けてもらったから、少し位エッチなことされても我慢しようと思ってたけど、そんな事は全くなかった。あたしが着替えたり水あびしてたりしても、背中を向けてるか見えない所に行ったりする。あたしに魅力がないのか、それともザップは男が好きなのか本気で悩んだ。
けど、あたしは知っている。たまに起きた時に寝たふりしてると、ザップがあたしのいろんな所をジロジロ見てる事もあるのを。奥手、ザップは女の子に慣れていないんだと思う。
気がついたら、あたしの頭の中はザップでいっぱいになってた。
けど、なんか悔しいから好きって絶対に言わない。あたしはザップに好きって絶対言わせてみせる!
そんな事を考えながら、あたしは今日も宿屋の調理場を借りてみんなのご飯を作っている。
多分ザップは外で鍛錬をしてる。今日も美味しいって言って貰えたらいいな。
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