姫と筋肉 姫と骸骨
「で、お前がなんでいるんだ? 畑耕してたんじゃないのか?」
僕の名前はラパン・グロー。チャーミングな赤い目がトレードマークの少女冒険者。南の開拓村から王都に帰る途中だ。
ここは、王都に向かう乗り合い馬車の発着所。他にも待ってる人は居るのだが、レリーフが来るなり逃げ出し、遠巻きにこっちを見ている。一緒に来たそこそこ強い冒険者だったと思うけど、その強さ故にレリーフの召喚した者たちの強さが解るのだろう。
僕は目の前で腕立て伏せしてる巨人に一応声をかける。奴の名はレリーフ。自称ダークエルフの死霊魔術師だけど、実際は変態筋肉お化けだ。奴は仕事が早く終わって開拓村の手伝いをしてたはずなのに、もしかしてついてきやがったのか?
奴は瘴気を放つ黒騎士2体の肩に手を起き、足をもう1体の黒騎士の肩に乗っけている。なんか、騎士の宴会芸みたいだ。そして、先頭にはストローが入った小瓶をもったローブの骸骨が控えている。小瓶の中はヒールポーションだろう。レリーフは筋トレしてヒールポーションを飲むを繰り返してそのヤバい筋肉をさらに成長させようとしている。先頭の骨は確か口が悪いリッチエンペラーとか言う奴だ。
「すまんが、忙しい。後にしてくれないか?」
どこが忙しいんだ? 筋トレで忙しいのか?
「そうだ。主様は、つるペタ貧乳の小娘などには興味無い。主様のタイプはもっとバインバインってしたおなごだ。とっとと家帰って牛乳飲んで寝ろ」
リッチ野郎! つるペタ貧乳は許せん! 強調しやがって! たしかに牛乳は飲んでるさ。けど、デカくなんないんだよー!
「ぶっ殺す! この腐れ骨ヤロー」
僕は得意な炎の術式を組み立てる。
「やれやれ、我はアンデッド。もうとっくの昔に死んどるわ」
やるな、奴は一瞬にして魔法停止を被せてきた。コイツは遠距離だけでなく近接場でも戦える魔法使いなのか!
「お前たち、それくらいにしないか。周りのみんなに迷惑だろ」
一番迷惑の元凶が僕と骨を宥めている。
「申し訳ございません。主様。きやつめが主様の聖なる儀式の邪魔をするものですから」
「レリーフ、もっと部下をしっかり指導しろ。こんど妙な口ききやがったら骨共の一族郎党地獄に送り返してやるからな」
「ほう、小娘がデカい口叩きよる。ナリは細い癖に」
「そうか、そんなにやり合いたいのか。2度と口利けないように骨も残さず成仏させてやる!」
「だから、止めんか。子供かお前たちは」
正直、アンデッドの騎士に担がれてる奴にそんな事言われたくない。
ん…………
いかんいかん、コイツらに構ってたら僕も同類と思われる。大人になれラパン!
「それより、お前さ、周りのみんながドン引きしてるだろ。日中堂々とアンデッド出すな」
「細かい奴だな。夜ならいいのか?」
「夜も駄目だ。街中では禁止」
「ここは村だが?」
「村でも禁止!」
「相変わらず、面倒くさい奴だな。そんな事より羨ましいだろ。これなら移動しながら腕立て伏せを出来る」
レリーフは円を描いて歩く黒騎士の上で腕立て伏せを披露する。遠巻きにしてた人たちはさらに下がる。なんかの祭りか?
「羨ましい事あるか。だから邪魔なんだよみんな迷惑してるだろ」
「ん、誰か迷惑してる奴がいるのか」
黒騎士たちが回り、レリーフは遠巻きの人たちを見る。
「威圧するなや! お前に睨まれて話せる奴いねーよ」
「やれやれ、ラパン、もっと女の子らしい口のきき方した方がいいと思うぞ。まあ、そんなに言うのならしょうがないな」
黒騎士は消え、レリーフはスタッと着地する。ん、骨はまだ消えてない。
「おい、コイツは?」
「私は疲れた。しばらく寝る。頼んだぞ」
「有難き幸せ」
骨は頭を下げる。
「おいおい、こいつもしまえよ」
「問題ない。運賃は2人分払う。しょうがないな、リッチエンペラー、人化しろ」
「承知致しました」
リッチエンペラーを黒いもやが覆ったかと思うと、そこにはやたらプロポーションが良くて、目鼻立ちがはっきりとした小顔のお姉さんが現れた。やべ、かなりの美人さんだ。まじか、コイツ女だったのか!
「「「おおっ!」」」
ギャラリーからどよめきが起こる。
「クカー」
うわ、レリーフ、立ったまま寝てやがる。自由な奴だな。それをお姉さんはヒョイと担ぐ。
そして、馬車が来て乗り込み、僕はお姉さんと魔法について深く話しながら帰路についた。最初っからこうしとけば良かったのに。見た目って大事だな。
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