姫と筋肉 死霊魔術
「なあ、お前ってさ、なんでそんなにマニアックな魔法を知ってる訳?」
僕は木の根っこに背を預けて座っている巨漢、自称死霊術士のマッスルダークエルフのレリーフに問いかける。
僕たちの目の前では数十体のスケルトンウォーリァーが畑の雑草を抜いたり、耕したりしている。全てレリーフが死霊魔術で召喚した者だ。スケルトンウォーリァー1体でだいたい王国の騎士3人位に匹敵する戦闘能力を持つと言われている。よく見ると、それの上位種である、ハイスケルトンウォーリァーも居やがる。ハイはハイなだけあって、他の奴らの3倍くらいのスピードで草を抜いている。要は疲れ知らずの王国騎士の百人隊が野良仕事に全力を注いでいるようなもんだ。なんだかなぁ……
僕の名前はラパン・グロー。普段はウェイトレス、お休みの時は冒険者の二足のわらじをはいている。普段は休みが一緒になった元大神官のシャリーちゃんや、妖精のミネア、忍者娘2人とかと冒険に出てるのだけど、たまたまソロの時は高確率でコイツと遭遇する。とは言っても同じ冒険者だから行動が被るからだと思う。もしかしてレリーフが僕を追っかけてるのかと思った事もあるけど、それは無い。奴の頭の中には筋肉しかない。今だって、木にぶら下がって懸垂を終えた後だ。
僕たちが何してるかと言うと、王都の南の開拓村のそばで魔物の暴走が起こったそうで、暴走した魔物から村を守るという緊急クエストを高ランクの冒険者パーティー数組と引き受けて向かったところ、先行したレリーフがもう片付けていた。それで帰ろうとしてたところ、レリーフが金額分働いてないとゴネ初めて、困った村長さんから無理矢理雑用を引き受けて今に至る。そして、僕や他の冒険者パーティーも巻き込まれて、みんなで仲良く野良仕事に精を出している。
「ハァハァハァハァ……」
レリーフは激しい懸垂で目が若干ラリってる。言いだしっぺのお前が働けよという言葉を呑み込む。今日はまだマシな方だ。まだあまりレリーフは人様に迷惑をかけて無い。コイツには大人しく筋トレさせとくに限る。とりあえず、収納からエリクサーを出してかけてやる。
「うっしゃー、染みるうっ!」
嬉しそうにそれで喉を潤して、レリーフは立ち上がる。
「ラパン、ありがとう」
そう言うとレリーフは再び木の枝にぶら下がる。
「おいおい、お前、少しは人の話聞けよ」
「ん、なんだ?」
レリーフがぶら下がったまま答える。
「だから、お前って、死霊魔術を何処で手に入れたんだ?」
「ああ、拾った。それより、お前も懸垂しないか? お前、今日は全く戦って無いだろ。若いからと言って油断してたら太るぞ」
そうだ。今日は荷馬車に揺られてただけだ。帰りに少し走るにしても、間違いなく運動不足だ。
「少しだけ、やってみようかなー」
そして、僕らは大っきな木にぶら下がって懸垂しながら、キリキリ働くスケルトンウォーリァーと冒険者たちを眺めた。
何してんだ? 僕……
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