リバースレインの森(後編)
「絶剣山殺し! 秘剣山嵐!」
亀は別に悪さしてる訳では無いが、一刀両断真っ二つになった。それを収納に入れる。マジ小山くらいあった。その亀の跡地の広場の中央に穴がある。
「くるわよ。伏せて」
ノノが伏せる。マイとルルもしゃがむ。
「え、何、何っ?」
ゴゴゴゴゴッ!
地揺れがしたと思うと、穴から金色の光が天にむかってうねりながら駆け上がった。
「竜、細長い竜の形してたわね」
マイが立ち上がって空を見上げる。
「あれは竜の形をした大地のエネルギーの塊。こうやって天に昇る事で、ここら一帯に奇蹟が起こるのよ。けど、その前に」
ノノはそう言うと穴の方へ進み右手を上げる。
「暴食者」
その手から出た光が穴のまわりに降り注ぐ。
ピチョン。
ピチョン。ピチョン。
え、雨、下から?
ザザザザーッ。
なんと、大地から水が染み出して空に向かって昇っていく。しかも土砂降りだ。
ワンピース姿だったノノとルルのスカートがふんわりと上がっている。あとみんなの髪の毛もふんわりと浮いている。
「ウゴッ、ゲホッ、ゴホッ」
咄嗟に鼻を押さえた。鼻に水が入って来た。あー、涙目になる。けど、なんで僕だけ? みんなも下からの雨に晒されてるはず。あ、そっか胸が盾になってるのか。
「なんか、すごいわね。どうやっても濡れちゃうわ。なんか変な感じ」
マイは手を広げてクルクル回る。僕も片手を広げてみる。下から打ちつける雨が新鮮だ。
「ああ凄いな。こんな事もあるんだな」
僕たちは濡れるのも忘れて、しばしリバースレインに打たれ続けた。
「『凄いわね、どうしても濡れちゃうわ』割れた亀、ほとばしる力の前にマイ姉様はそう言った」
「ルル、メモれてないだろ。お前、言いたくて言ってるだけだろ」
「ザップさん、いやですね。何言ってるんですか。私は頭の中にメモってあとで書き写すんですよ」
「お前、薄い本にしたらマイにチクるからな」
「なーに言ってるんですか。そんな訳無いじゃないですか。ハハハハッ」
僕をネタにするのはいいとしても、マイをネタにしたのがマイにバレたら制裁される事だろう。けど、この感じはやっちまってるな。
「栄養が足りないかしら。しょうが無いわね」
ノノはそう言うと合掌して目を瞑る。浮き上がるスカートと髪の毛。幻想的だ。
「天地の別れしときより紡がれし、大地の恵みよ♪ 土よ、風よ、水よー♪」
ノノの口から今まで聞いた事のないような澄んだ唄が聞こえる。ノノはその場で流れるように淀みなく踊り始める。僕たちはついついその姿に見とれてしまう。
「あれは古代魔法の舞踊魔法。踊りの1つ1つのポーズが言語で因果に働きかけるそうです。多分、豊穣とかそんな効果だと思われます」
今日、初めてルルがまともな事言ってる。やっぱこいつは置いて来た方が良かったな。
そして、地面からニョキニョキ何かが生えて来る。きのこ? それは大きくなると傘を開くがその傘は上下逆だ。『さかさキノコ』だ。
まるで、神霊の化身のような澄んだ唄を口ずさみながら舞う美少女。そしてその周りにワシャワシャ生え始めるキノコ。むぅ、何とも言えない。
「美少女のエキスを吸いまくったキノコをゲットー!」
ルルが逆さ雨の中、元気にキノコを狩り始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「で、なんのお薬が出来るの?」
僕たちが報酬を受け取ってる時にマイがノノに問いかけた。ここはリビング。雨に濡れた体をお風呂で温め終わったところだ。意外な事にノノは結構な額の報酬を払ってくれた。
「ああね。貧血のお薬よ。血流が良くなる薬かしら」
「え、そんな薬でそんな儲けるのか?」
「何言ってるのよ、ザップ。貧血は女の子にとっては死活問題なのよ」
「けど、ザップさんの言うとおり、それにしては高額な報酬ですよね」
ルルは腕を組んで考え込む。その凶悪な胸が強調されてるので目を逸らす。あんま見てたらマイにどやされる。
「あっ、わかった。血流が良くなるんですよね。『さかさキノコ』を使ってるだけあって、キノコを逆さにする効果があるんですね!」
あっ、そう言う事か。それなら納得だな。
「キノコを逆さ?」
マイには通じて無いみたいだ。ノノがマイに耳打ちする。
「ルル、さすがにおふざけが過ぎたようね」
「ごめんなさい、マイ姉様!」
逃げるルルに追っかけるマイ。どんなお仕置きをされるのか興味が湧くが、それよりも、僕も少しだけ件の魔法薬を購入しておこう。もしもの時のために。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。