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 雨と言えばカタツムリ


「なっげー雨だな。何も出来んな」


 僕は家のリビングで独りごちる。雨が降っても冒険者ギルドには依頼はあるのだが、何をするにしても雨だと余計な手間がかかる。


「そうよね、この前雨降った時は悲惨だったわ。半分濡れたザップの靴がすっごい臭い発してたわよね」


 僕の呟きにマイが答える。そうなのだ。この前冒険に出た時、雨が降って地面が泥濘んでいて、しかもブーツに穴が空いてたので水が入って悲惨な事になった。家に帰ると足はふやけて真っ白になってるし、しかも、メッチヤ臭い事、臭い事。足を洗うまで僕が歩く所歩く所が臭くなるという悲惨な目に遭った。マイは悪臭で涙目になっていた。


「あの時はすまない。それにしてもなんとかならないのか。ジメジメしてて気が滅入る」


「ご主人様、まあ、ですけど、雨が降らないと作物が育たないですからね」


 ドラゴン娘のアンが当然の事を言う。雨に悪態ついてると、誰かこういう事言うんだよね。


「おいおい、逆に雨が降りすぎたら、お前の大好きな野菜とかが水で腐るんだぞ」


「そうなんですね、そりゃ勘弁して欲しいです。あ、そこにマイマイがいます」


 アンが窓枠を指差す。


「え、呼んだ?」


 マイマイにマイが反応している。


「マイ姉様の事じゃなくて、マイマイ、カタツムリですよ。うわ、でっかいですね。これって食べられるんですか?」


「お前、それ見て食べたいって思うのか? まあ、焼いたら食べれない事は無いけど、土臭くてジャリジャリしてるぞ」


「え、ザップそのまま食べたの? エスカルゴって言う西方の料理があるけどとっても美味しいのよ」


「え、マジか? 俺は出来るなら、飢えて無いなら二度と食べたくないけどな」


「あ、そう言えば、隣のお店に新メニューであったわよ」


「えー、本当に美味しいんですか? 何でも食べるご主人様が美味しくないって言ってるから、かなり不味いんじゃないですか?」


「お前には言われたくないわ!」


「まあ、騙されたと思って食べてみて」


 マイに促されて僕たちはしぶしぶエスカルゴを食べる事になった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「「「いただきます」」」


 僕とアンは目の前の料理を見つめる。つい躊躇ってしまう。

 丸い鉄板に2個3個2個と六角形のような感じに丸い穴があいたものの中に、カタツムリが入っている。

 ちなみに導師ジブルと竜小僧オブとハイエルフのノノは数日間魔道都市に実験で行ってて不在だ。

 マイは先が丸いペンチみたいなので、カタツムリの殻を押さえると、細いフォークみたいなので、クルクルッと中の身を取り出して口にする。そして、その顔がほころぶ。え、美味いのか?


「もう、何見てるのよ。早く食べてみて」


「ああ」


 僕とアンもぶきっちょながらマイを真似る。そして、恐る恐る口に入れる。あ、美味いわ。そうだな、なんていうか、まるっきり焼いた貝だ。しかも臭みもない。ヤバいこれ好物だわ。


「このカタツムリはね、食べる前に穀物を食べさせたり、絶食させて、体内の美味しくないものを出させてから調理してるそうよ」


 そっか、そこらに転がってる奴らを食べても美味しくないのか。


「ブルゴーニュバターって言って、バターに刻んだパセリを入れたもので焼いてるなよ。これって魚介系なんでも合うから今度この味で何か作ってみるわね」


 僕とアンは無言で頷く。何故なら食べるのに夢中だったからだ。


「待って食べ終わらないでね。今日は特別よ」


 僕たちのテーブルにグラスに入ったワインが運ばれてくる。飲みやすい赤ワインで、それを口にすると、エスカルゴがさらに美味しくなった気がする。


「だいたい、魚介類には白ワインを合わせるんだけど、エスカルゴは陸の貝だから赤ワインもあうのよ」


「なんで、マイはこんなに詳しいんだ?」


 僕は疑問を口にする。


「えへへ。マリアさんに教えて貰ったのよ」


 マイは微笑む。マリアさんとは、ここの店の店長さんだ。さすがだと思う。けど、エスカルゴを選んだのもワインを選んだのもマイだ。


「ありがとう」


 そしてさらに、お肉などの料理が運ばれて来て、僕たちは豊かな食事を楽しんだ。




 

 読んでいただきありがとうございます。


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