ジューンブライド
「あなたは、ザップ・グッドフェローを永遠に愛する事を誓いますか?」
神父様があたしに問いかける。あたしの横には最愛の人、ザップ・グッドフェローがいる。
ここは教会。あたしたちの知り合い全員が集まって祝福してくれている。
あたしはザップを見上げる。ビシッとした髪型と服装のザップは別人に見える。本当にザップなの? けど、その優しげな目は間違いなくあたしのザップだ。ザップはゆっくりと頷く。
「はいっ! 誓います」
あたしは高らかに宣誓した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
あたしの名前はマイ。様々な紆余曲折と長い時間をかけて、やっと最強の荷物持ちザップ・グッドフェローの伴侶の座を射止めた者だ。
思えばここまでの道のりは険しかった。執拗にザップを狙う幼女導師ジブル。それとなくザップを誘惑するドラゴン娘のアンちゃん。実力行使でザップを攫って自分のものにしようとする北の魔王リナ・アシュガルド。隙あらばザップにアピールするあたしの妹分達の少女冒険者4人。過激な愛情表現でザップの心を揺さぶるメイド忍者のピオンとパイ。あたしと猫耳枠で争うケイ。数多のライバルを引き離しようやくザップの心を掴む事が出来た。
けど、1番最強最悪のライバルは精霊王の名前を冠する超絶美少女のハイエルフのノノだった。
「マイ、お前はザップの事どう思ってるのかしら」
ある日ノノがあたしに話しかけて来た。こっちを見ずにソファに寝っ転がりながらなんかお菓子を摘まんで雑誌を読んでいる。なんなのよ唐突に?
「お前がどう思ってるかは置いとくとして、最近ザップに対しての娘たちのアピールが激しいわ。もしかして『さかり』なのかしら? このままでは、奴らの誰かザップをかっさらってくのじゃないかしら?」
「え、その話詳しく聞かせて!」
ノノ言うには、最近、隣の忍者2人や、冒険者4人のミカやルルがザップに食べ物をあげたりして餌付けしてるそうだ。ルルに至ってはザップと2人っきりで食事もしてたそうだ。その全員に当てはまるのは、みんなあたしより胸が大っきい。
「やっぱり、ザップって胸が大っきい方が好きなのかな……」
あたしは胸に手を当てる。もうもっと大っきくならないわよね。
「なんだ、マイ、胸を大っきくしたいのかしら? 方法はあるにはあるが」
「え、本当! お願い、教えて教えて!」
「慌てるでないわ。ノノの魔法にかかればそれくらい造作ないかしら」
「お願い。その魔法あたしに使って」
「いいわよ。じゃ、目を瞑って力を抜くのかしら」
「わかったわ」
「では行くぞ。暴食者!」
え、ぐらとにー?
魔法に抵抗しなかったから、すんなりと魔法にかかってしまった……
バスッ、ボフッ!
目を開けると、あたしの服が爆ぜた。もしかして……
「え、ナニコレ!」
信じられない。これがあたし、下を向くと前掛けみたいになってる服の下に明らかに大っきくなった胸とそれより大っきくなったお腹。パンツはなんとか持ちこたえたみたいで食い込んで痛いけど、お腹が邪魔で下が見えない。とりあえず大っきめのマントを出して羽織る。嘘でしょ、もしかしてあたしおでぶになったの?
「ノーノ、ぶっころす!」
「マイ、何いってるのかしら。お前が望んだ結果でしょ。胸でっかくなってるわよね」
「どうした!」
部屋にザップが駆け込んでくる。1番見られたくない人に……
けど、もしかしてザップなら太っててもあたしの事を……
「ザップ!」
あたしはザップを見つめる。
「え、どなたですか?」
ザップが怪訝そうな顔であたしを見ている。あたしが解らないの?
「あ、あれはマイよ。マイの願いを叶えてあげたのよ」
ノノがあたしを指差す。
「え、マイなのか。変わったね」
ザップはそそくさと立ち去った。
あたしは居てもたっても居られなくなり、そっから走り去った。それから1ヶ月、山に籠もった。
そして、体型がもどって家に帰ったら、あたしのポジションにはノノがついていた。そうか、ノノもザップを狙ってたのね!
そして熾烈な争いを繰り広げ、なんとかザップの心を手にいれた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それでは誓いのキスを」
神父様に促されて、あたしとザップは見つめ合う。ああ、やっとこの時が来たんだわ。天国のお父様、お母様、それと育ててくれたおじさん、おばさん、マイは幸せになります。あたしは目を閉じる。
「何してるのかしら? タコのものまねかしら?」
え、ノノの声?
あたしが目を開けると、そこには超絶美少女。
「え、あたし……」
「そう、そうなのね。楽しい未来が見られたみたいね」
「え、どういう事」
「マイがノノに頼んだのかしら。『精密な世界』を使って欲しいって。貴重な触媒まで手に入れてきて」
そうだ、あたしはノノにザップに前に使った予知の最高位魔法、『精密な世界』の魔法を使って貰ったんだった。さっきまでのは夢のようなもの。けど、うまくいったらあたしはザップと結ばれる。けど、そのためには……
「ありがとうノノ。それと、お願いがあるの。死ぬのと森に帰るのどっちがいい?」
「マイ、どうしたのかしら。ノノはなんも悪い事してないわ」
「今からするのよ!」
「待って待って、話し合うのかしら」
ノノにあたしには悪意がある魔法を使わない事を約束させて、なんとかあたしたちは仲直りした。これで、多分、あたしのゴールインは早まるはず!!
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