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 驚愕の再会


「マイさーん。お風呂入りに来ました」


 ラパンちゃんの声がする。隣のお店『みみずくの横ばい亭』で働いてる女の子に、家の温泉を解放している。ただ1つのルールは入る時に入浴中の札をかける事。もしこれを忘れてザップと混浴した者はお風呂の利用禁止になる。


「あたしも入るわ」


 今日は一緒に入ろう。けど、ラパンちゃんって一時中身がザップだったのよね。なんかその時の事を考えると複雑だ。

 そして、あたし達はお風呂でその時の事を語り合った。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「え、ザップ? ここはどこ?」


 あたしは辺りを見渡す。草原? え、何で?


「ご、ご主人様?」


 アンちゃんもキョロキョロしている。


 確かあたし達は迷宮の中で、アカエル大公にザップが串刺しにされて、助けようとした所で魔法を食らって……


「マイ! アン!」 


 誰かが駆け寄ってくる。高い声だけど懐かしい感じ。敵意を感じないと思った時にはあたし諸共アンちゃんに抱きついて来た。誰? あたしよりちっちゃい女の子。あ、ラファ姫様。けど何で泣いてるの? うわ、待って待って、アンジュ達が駆け寄って来たと思ったら抱きついて来る。金色のビキニ、リナちゃんも来るし、なんか見たことの無い下半身お魚の人も来る。ナニコレ押しくら饅頭ってやつ? みんな泣きながらあたしやアンちゃんにすがりついて来る。ちょっと、待って、どうなってるの? それよりザップ、ザップは?


 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 あたしの名前はマイ。最強の荷物持ちザップ・グッドフェローの片腕だと自分では思っている。ザップの周りには女の子ばっかり集まって来るから、何としてもその右腕ポジションは守ってみせるわ。話が逸れたけど、あたし達は魔道都市アウフの依頼で、ありもしないと思われるエリクサーを求めて、迷宮都市の地下迷宮を探索していた。そして地下50層で現れた漆黒のドラゴンの出した石の槍にザップが貫かれた。黒竜が人の姿をとったと思ったら、それは魔道都市の王様の甥にあたるアカエル大公だった。あたしとアンちゃんはザップを助けるべく飛び出したら、泥沼に足を取られて、魔法の餌食になった所で記憶が途切れている。


 しばらく揉みくちゃにされた後、ザップは一応無事という事で、早くどうなってるのか知りたかったけど、あたし達を助けてくれた神官の女の子がぐったりしてるので、休ませるためにあたし達は一端お家に帰る事にした。リナちゃんと人魚ちゃんは国に帰って、神官の女の子と妖精と冒険者のミカとアンジュは疲労で眠ってしまった。当然、あたし達を儀式で助けてくれた人達にはアンちゃんと頭を下げた。そしてリビングでラファ姫様が語り始めた。

 その話を聞いたところ、あたしとアンちゃんは呪いで石になっていて、ラファ姫様の収納に入っていて、さっき魔法の儀式で元に戻ったらしい。それからザップとラファ姫様の話をしてくれたけど、正直訳が解らない。ラファ姫様の姿の女の子はラパンちゃんと言うそうだ。そして、中身は記憶を無くしたザップ? そんな事あるのだろうか? 


「と言うことは、あなたが記憶を無くしたザップで、ザップと入れ替わったラファ姫は迷宮都市の迷宮の下層で石になってるって訳?」


 ラパンちゃんの目をじっと見つめる。嘘ついてるようには見えないわ。この目、達観してるようだけど、たまに見える弱々しさ。ザップ、ザップの目だ。荒唐無稽な話だけど、あたしは信じる。ザップ、ザップ。一応無事だったんだ。嬉しさがこみ上げてくる。けど、何とも言えない。ザップが女の子になってるの?


「それにしても相変わらずご主人様の私に対する扱いは酷くないですか? ドラゴンの口のつっかえ棒代わりは酷すぎます。それに、うう、角も…」


 やっぱりアンちゃんもラパンちゃんをザップって認めてるみたい。


「それについては本当にごめんなさい。まだ収納の使い方に慣れてなくて……」


 ラパンちゃんが頭を下げる。なんかザップが丁寧な言葉を使ってるのに違和感を感じるけど、ザップって根っこの所では気が弱いのよね。


「まあ、私はドラゴンですから少しの傷くらいはなんともないのですけど、ご主人様に買って貰った服が台無しですね……」


 アンちゃんは悲しそうに俯く。そうよね、ザップから買って貰って気に入ってたやつだもんね。


「服ならまた僕でよければ買ってあげるよ」


「ありがとうございます、ご主人様。でもなんかラファ姫様の体だと、なんていうかワイルドさが無くてドキドキしないですね、少しだけ寂しいですね」


 ん、ドキドキしない?


 アンちゃんももしかしてザップの事を……


 今のザップは記憶が無いって言ってたわよね。もしかして、これってチャンス?


「あたしは、まあ、たまにはこういうザップもいいわね」


 あたしは我慢出来なくて、ラパンちゃんを抱き締める。可愛い、ザップなのに可愛いスリスリしてしまう。いつものザップには逆立ちしても出来ない事だ。


「んー、可愛い、可愛い。けど、早く格好よくて逞しいザップに戻ってね」


 このザップもいいけど、早く元に戻って欲しい。けど、今は少し堪能させてもらう。心ゆくまでギューして解放する。なぜか少し目頭が熱くなる。


「とりあえず、私は温泉に入ってきますタオルで拭いてもなんか血なまぐさくて」


 ん、温泉? そうよ、今のザップは女の子。一緒に入れるわ!


「じゃ、みんなで入ろう!」


 ラパンちゃんの目が見開かれる。ザップ、ザップだわ。この女の子耐性の無いリアクション。いくじなしなザップだわ!


 ラパンちゃんは力いっぱい首を横に振る。その姿がザップと重なる。


 可愛いザップ。絶対に元に戻してみせるけど、その前にたーっぷり可愛いがってあげるわ!





 第二部『第232回 再会』のマイSIDEです。下にそこへのリンクも張ってますのでよろしければ行って見てください。



https://ncode.syosetu.com/n8450gq/232/



 読んでいただきありがとうございます。


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