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 黒竜王の終焉

 マイちゃんの回想録シリーズ、第二部からです。


 あたしの名前はマイ。今日もザップやみんなに美味しいものを食べて貰おうとキッチンで奮闘している。あらかた準備も終わったので、ちょっと一息つこうとリビングに向かう。そこにはソファに寝ている小さな黒いドラゴンがいる。とっても可愛らしく、たまらずギューしたくなる。けど、我慢。こう見えてもこの子はとってもエッチだ。寝てる時はとっても可愛いのに……

 けど、この子って、あの黒竜王オブシワンの化身なのよね。今じゃ全く面影ないけど。あの時の事は今でも時々思い出す。本当に大変だったから。 



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 魔道都市アウフの近郊で、あたし達は黒竜王オブシワンと死闘を繰り広げ、ザップが収納のスキルを使って大地に大きな穴を作って、黒竜王もろとも沈んで行った。ザップの事だから何か考えがあると思うんだけど、大丈夫なの?

 そして、しばらくすると、穴の中に現れた巨大な建物。あれは確か迷宮都市の魔道士ギルドの大きな塔。まんまタワーって名前だったと思うけど、そう言えばザップはアレを収納に入れたままだったわね。それにしてもなんていう使い方してるの? まさかタワーを武器にするなんて……

 低い地鳴りのあと、タワーは沈み込み動かなくなる。もしかして、ザップは自分もろとも黒竜王をタワーの下敷きにしたんじゃ? あたしはいてもたってもいられなくなり、塔の屋上に飛び降りる。


「マイ姉様、危険ですよ!」


 アンちゃんの声がする。


「アンちゃん、あとはよろしく」


 あたしは屋上の扉を開けて中に入る。中は真っ暗、即座に松明を出して生活魔法で火をつける。通路を駆け抜け建物の中央を目指す。あった。魔道昇降機の扉だ。やっぱり動いてないわね。扉を蹴破ると、下に伸びるロープ。躊躇う事なく、あたしは松明を手に下にローブを伝いスルスル降りる。


「ザップー! ザーップ!」


 あたしは叫びながら降りて行く。けど、答える者はいない。それでもあたしは叫び続ける。


「ザップー! ザップー!」

 

「マイー! 何処だー!」


 良かった。ザップの声だ。ここね、あたしはザップの声がした所で止まる。扉があり、その後ろにザップが居るに違いない。


「待っててー! 少し下がって」


 ドゴン!


 はしたないかもしれないけど、あたしは即座に扉を蹴破る。そして反動をつけてそこに飛び込む。そこには松明を手にした見慣れたあたしが望んでいた姿。


「ザップ、無事だったのね」


 あたしは問答無用でザップに抱きつく。温かい。間違いなくザップだ。良かった。無事だったんだ。


「マイ、何で来たんだ?」


 何当たり前の事聞いてるの?


「ザップに逢いに決まってるでしょ。黒竜王は?」


「ここの下敷きになってる。大丈夫だと思うけど、ここも埋めてしまいたい。早くここを出るぞ」


 まだ、こうしていたいけど我慢。ザップはまだやり残した事があるみたい。


「魔道昇降機を上げ下げしてる魔法のロープが最上階まで続いているわ。それを登るのと階段を上るのどっちが速いと思う?」


 ザップは少し考える。


「松明持ってるから、階段だろう」


「じゃこっちよ」


 多分屋上から伸びていた螺旋階段は下まで続いているはず。名残惜しいけどザップから体を引き離して、その手を引いて走り始める。あった。やっぱり階段は上まで続いている。あたしはザップの手を引いて走る。その手から確かな温もりを感じる。けど、時々手が引っ張られる。やっぱりザップ疲れてるんだ。それでもザップは必死に走る。あたし達は無言で走り続けた。

 ようやく階段は終わり、扉を開くと屋上に出た。真っ暗だった外は朝焼けで赤く染まり始めている。空に一際輝く星が1つ。朱の明星だわ。


「綺麗ね」


 あたしはザップを振り返る。ザップも赤く照らされている。あたしはザップもとっても綺麗に見えた。

 あたしはまた空を見上げる。辛い戦いだったけど、やっと終わったんだわ。あたしはこの光景をずっとずっと忘れないと思う。


 第二部『第305回 封印』からです。下にリンク張ってますので行って見てください。



https://ncode.syosetu.com/n8450gq/305/



 読んでいただきありがとうございます。


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