荷物持ち鶏もも肉を切る
「え、まじか。こんなに切るのか……」
僕たちの目の前には山のような肉。鶏のもも肉らしい。明日ある地域の祭りに出店する事になったのだが、そこに出すから揚げの肉の仕込みをマイに頼まれて、2つ返事で了解した結果がこれだ。多分、100キロはあるのではないだろうか? いつもは少女冒険者4人に手伝ってもらってるので、僕が肉を切る事は無かったが、今回は彼女たちは彼女たちでなんかの屋台を出すそうで、手伝いは見込めない。正直、多すぎだろう。こんなに沢山の鶏肉が並んでいるのは初めて見る。もしかしてマイは養鶏場一軒分の鶏もも肉を買ったのでは無いだろうか? 激しい大人買いだ。
「あのね、ザップ。まず鶏ももはね、このぴらぴらしたのがついてる方が下でだいたいそっちが細くなってるわ」
マイは開いてある鶏もも肉を巻いてはくっつけると、鶏の足の形になった。真ん中が細くなっていて、なかなかのマッスルレッグだ。
「ここが関節よ」
マイはそのマッスルレッグを真ん中から曲げ伸ばしする。おあ、鶏の足だ。少し可愛いっぽい。
「まずは、関節の所に骨や固い筋がついてたりするからそれを取り除きます」
マイは鶏もも肉から小っちゃい骨の欠片と、白っぽい筋を取り除く。
「骨は捨てて、筋はとっといてね」
マイは小さな筋を小皿に置く。
「そして、足の上の方の厚い所に包丁を横から削ぐように入れて開いて、肉の厚さを均一にします。そして、その時上下に走っている血管を取り除きます。これが歯に詰まったりするのよ」
マイは細い紐みたいなのを上手く包丁で取ってそれも小皿に入れる。
「そして、ぴらぴらしたのの大きいのも切り落とします」
肉の下の方についている、結構太い筋を切り落として、それも小皿に入れる。
「鶏もも肉の筋肉の繊維は上から下に走っているので、それに垂直にだいたい15ミリくらいの間隔で、皮まで切り落とさないように目を入れます。これで、縮みにくくて、柔らかくなります」
マイは皮を下にまな板に置くと、スピーディーに切れこみを入れていく。
「これであとは、膝から上と下に2つに切り分けて、下は2つ、上は3つに切り分けて完成です。あとは、秘伝のタレに一晩漬け込んで味をしみこませたら完成です」
まじか、ただぶった切るだけかと思ってたのに、結構手間かかってるんだな。そういえば、マイのから揚げを食べて、口に筋が残った事が無いな。素直にマイに対して感謝の気持ちが湧いてきた。
けど、ぶきっちょな僕にはこりゃ無理だ。
「マイ、スマンがあんまり解らなかった。もう一度一緒にやろう。それと、俺だけじゃ時間がかかり過ぎると思う。みんなでやろう」
そして、アンとノノとオブを呼んで、マイと一緒に何度かやってコツを掴んで鶏もも肉を刻みまくった。
いっつもこんな面倒くさい事をマイは1人でやってたんだな。今後はみんなで手伝う事にしよう。