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 地獄の愚者 競争


「じゃあ始めるっす。シンプルにとどめを刺した者が勝者って事で。あと、攻撃のヒット回数が1番少なかったのが敗者で。ジニーがんばるっすよ」


「はいっ!」


 私はアンジュさんの方を見ると、プイッと顔を背けられた。まだ、昨晩の事を根に持ってるのかしら。ただ、1人で寝るのは寂しいから後ろから抱きついただけなのに。はあー……

 まあ、いいわ。勝てたらアンジュさんと一緒にスイーツ食べに行けるんだから。デート、デート。

 私の名前はジニー。ただの神官だったはずなのに、いつの間にか戦える神官になってしまった。アンジュさんのトレーニングはとっても厳しいていうか地獄だった。四六時中魔物かアンジュさんと戦い続けた。そして気が付いたら、かなり上手に片手剣と盾を扱えるようになっていた。どっかの国の騎士の戦い方らしい。元々まったく戦いの下地が無かったから、がむしゃらにアンジュさんの真似をしていたのが功を奏したんだと思う。片手剣と盾での戦い方はシンプルで強い。ただ相手の攻撃を盾で受け止めて、剣で攻撃するだけだ。私の修行は両手剣、片手剣、斧、ハンマー、槍、ランスなど一通りの戦い方を伝授されて、それからしばらくはでっかい両手斧で戦い続けさせられた。ある程度強くなったところで、片手剣と盾をメイン武器にする事を提案されて今に至る。アンジュさん言うには、私は性格上前に出ていくタイプではないから、後の先、相手に攻撃させてカウンターや反撃する戦い方が合ってるのでは、との事だ。私もそう思う。

 私たち4人は前に進みミノタウロス王と対峙する。

 私は変わり果てた仲間たちを見る。好青年とも言えたデュパンは今はチンピラみたいな目つきになっている。私たちは結成して間もない駆け出しなのに、その風貌はまるで百戦錬磨の傭兵みたいだ。パムは相変わらずニコニコしているけど、子供のような風貌に似つかわしくない、やたら筋肉が発達した手足がアンバランスだ。かなり可愛さ減だ。レリーフに至っては、あんた誰って感じ。ガリガリで吹けば飛びそうだった体が、今はハーフオーガやオーガと言われても納得するくらいのはち切れんばかりの筋肉の塊になっている。目の前のミノタウロス王と良い勝負だ。


「行くぞ!」


 デュパンの掛け声と共に私たちはわれ先にとミノ王に駆け寄る。確かにミノタウロスは恐ろしい魔物だけど、アンジュさんに比べるとスライムくらいの驚異しか感じない。ここで最下位をとったら、間違いなく地獄の訓練が待っている。


「グゥオオオオーーッ」


 ミノ王が斧を水平に薙ぐが、先行したパムは屈みそれをギリギリかわしながら中段にカウンターの突きを放つ。真っ向勝負、決して盗賊スカウトの戦い方じゃないわ。たたらを踏んで下がるミノ王の下がった頭にデュパンが強烈なかちあげるようなハイキックを放つ。ミノ王の体は今度は武器を手放しながら、頭を後ろに反らして仰け反る。そういえば、私たちは誰も武器を手にしてない。多分、みんな考えは一緒だ。今回は相手へのヒット回数が勝負を決めるから、武器は邪魔だと思ったんだ。仰け反ったミノ王に今度はレリーフが近づいたと思うや否や、胸板に頭突きをくらわし、そのまま強烈なタックルでミノ王の腰を掴み倒れ込む。ミノ王は地面にしたたかに頭を打ちつける。さすがは一応魔法使い頭を使った戦い方だわ。けど、甘い。ミノ王がもがくのを見て、私は地面を蹴る。そして、宙返りしながら両足を突き出しミノ王の顔面に着地する。これが私の奥の手。全方向型ドロップキック。修行の末、私はどこに対しても正確無比なドロップキックを放つ事が出来る。私は非力な神官。1番力があるのはその両足。自重とその脚力を生かしたフィニッシュブロー。ミノ王はそのまま私の足と地面に挟まれる。どんな生き物でも後頭部を強打して無事ではいられない。多分レリーフのタックルでいいとこまで持ってってたんだと思うけど、とどめは私だ。後の先、状況を見て最強最適な攻撃を選んだ私の勝利だ。後方宙返りで跳び退り着地する。


「うっしゃーあああっ!」


 私は拳を天に突き上げる。


 やった、アンジュさんとデートだ!




 

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