悪銭苦闘
「マイ、何してるんだ」
夜眠れずにキッチンに飲み物を取りに行ったら、リビングからなんかジャラジャラ音がするから行ってみたら、マイが机について、魔法の灯りの下お金をいじっていた。
「何って、撰銭よ」
「撰銭ってなんだ?」
「刻印が削れてたり、ギザギザが無くなってる粗悪なお金を分けてるのよ」
「なんで、そんな事してるんだ?」
「粗悪なお金、悪銭は普通のお金より価値が低いのよ。ギルドの依頼とか、しっかりした商人から貰うお金には悪銭は無いんだけど、屋台とかで物を売ったりした時に紛れ込んでくるのよ。悪銭はしっかりとした取り引きの時には受け取って貰えないの。悪銭は不純物が少ないものはまとめて金属の素材として買い取って貰えるけど、価値が3割程下がるわ」
マイは悲しそうな顔をして小金貨を選り分けている。見ても解る。マイが悪銭として分けているのは、もう表面がスベスベでお金には見えないのや、金貨の周りのギザギザがなくてツルッとした奴とかだ。
「そういえば、なんで、お金ってギザギザがついてるんだろう」
僕はギザギザがツルツルになったのを取って撫でる。うん、なんか違和感だな。
「それは、周りを削られるのを防ぐためよ。ギザギザが無くなったらお金としては取り扱って貰えないのよ。それでも金貨のギザギザを削る人はいるのよ。例えば100枚の金貨の中の10枚がギザギザを削られてても解らないでしょ。そしたら削った分だけその金を売れば何もしなくて儲ける訳。この前盗賊団のアジトを壊滅させたでしょ、その時見つけたお金が全部そんな感じてなのよ」
ハアッとマイは溜息をつく。そっか、マイは僕の知らないところで色々と骨を折ってくれてるんだな。
それにしても盗賊ってロクな事しないな。こんな事に頭使えるなら、もっとまっとうな仕事をしても成功するんじゃないだろうか?
「マイ、手伝うよ」
「ありがとう」
僕はマイの向かい側に座る。目の前には小金貨の山。それを僕たちは1つ1つ確認しながら2つに分けていく。沢山あるけど、2人で頑張れば2倍の早さだ。山は少しづつ小さくなり、分け終わり、それを収納にしまう。おもったより悪銭は少なかったので少し嬉しい。
「じゃ、マイ、もう寝るか」
「ザップ、あたしはね、ご飯の時にはまずは美味しいものから食べる主義なのよ」
「???」
マイは何言ってるんだ?
けど、薄々気付く。美味しいもの=金貨。という事は……
ジャラジャラジャラ。
テーブルの上に広げられる銀貨。あと銅貨もあるって事か……銀貨も銅貨も削ってたのか盗賊団。マメ過ぎるだろ。ちゃんと働いた方がもっと稼げるだろ。
「おーい、みんな起きろ」
僕は声を張り、みんなを起こしに行く。単純作業はワイワイしながら人海戦術に限る。アン、ジブル、オブを叩き起こしてやぅた。そして、僕たちは楽しみながら夜遅くまで撰銭を続けた。