ハンバーグを作る
「ザップ、今日はハンバーグ作ろうと思うの。手伝って」
エプロン姿のマイがリビングに来て口を開く。フリフリがついて可愛いエプロンだ。とっても似合ってる。
僕は今日は雨なので、家の中で読書中。導師ジブルと妖精王ノノは魔道都市でお仕事、ドラゴン娘アンとドラゴン小僧オブは僕と同じくゴロゴロ読書。
それにしても、珍しいな、僕に手伝いを頼むなんて。それに、ハンバーグは外で食べる事はあるが、家で作るのは記憶に無い気がする。
「ハンバーグって珍しいな」
「そうなのよ、隣でミンチを買ったのよ。余ったらしくて。あたし的にはハンバーグって固いお肉とかを美味しく食べる料理だからあんまり作る事無いのよね。ミンチ作るの手間がかかるし、固いお肉でも切れ目をいれたら美味しく食べられるからね。あたしはハンバーグよりステーキ派なのよね」
「まあけど、ノノやオブは食べた事無いんじゃないのか? だいたいジャリはハンバーグ好きだよな」
「そうね、子供ってハンバーグ大好きよね。じゃあ頑張って作っちゃいましょう」
僕はマイに文字通り背中を押されてキッチンへ行く。
「これをね、白っぽくなるまで揉みまくって」
マイがボールに挽肉が入ったのをテーブルに置く。その時下を向いたマイの胸元に目がいってしまう。マイの視線はミンチにいってたからバレてはないはずだ。正直、ミンチよりもソレを揉んでみたいと思ったけど、口に出したら抹殺される事だろう。
僕は手を石鹸でしっかり洗う。そして揉み揉みしまくってやる。
「これはね、ミンチに塩だけ入れてるの。ミンチを塩で揉むと、肉の繊維がからまって壊れにくくなるってジブルが言ってたわ。ジブルって料理は出来ないけど、そう言う事って色々知ってるのよね」
「これでいいのか?」
さすが僕、揉み揉みのプロだ。しばらくすると、お肉が赤からピンクっぽくなって粘度が出てきた。
「はい、次は、玉子と牛乳と黒胡椒とナツメグとパン粉よ。また、もみもみして」
むむっ、マイはまだもみもみして欲しいらしい。いかん、その言葉だけで少しドキドキしてしまう。
「ありがとう、もういいわよ。さすがザップ揉むの上手すぎ。あたしの半分くらいの時間で終わったわ」
そうか、僕は揉むのが上手いのか。少し嬉しい。
「あとはしばらく冷蔵庫で寝かせるから。夜楽しみにしててね」
なんと、家には魔道都市特製の冷蔵庫がある。これって幾らしたのだろう。
「せっかくここまで手伝ったから、仕上げもやりたいな」
「うん、わかった。じゃあまた後でね」
そして、僕はまたリビングに戻る。
「ザップ、じゃあ手伝って」
ジブルとノノが帰ってきて、晩御飯の準備だ。僕はマイとキッチンへ行く。
「まずは、全部を12個に分けてね。1人2個づつね」
マイは僕がこねたハンバーグの素を出す。
「あ、手に油つけてね。くっくきにくくなるから」
僕とマイはハンバーグを分けて丸める。そして、マイはハンバーグを右手左手でキャッチボールみたいにペチペチする。
「何してるんだ?」
「空気抜きよ、空気を抜いたら割れにくくなるのよ」
僕はマイを真似るけど、上手くいかない。
「両手で軽く握る離すを繰り返すだけでも空気は抜けるわよ」
マイはハンバーグを両手でペチペチする。僕もそれを真似る。
「後は焼くわね。油多めで、横まで焼くと、旨味が逃げにくいのよ」
やっぱり、僕はここまでだ。後はマイに任せた方がいい。
そして、完成したハンバーグを食卓に運ぶ。
「今日はなんと、俺とマイが作ったハンバーグだ!」
「ご主人様何言ってるんですか、どうせほとんどマイ姉様が作ったんでしょ」
「まあな、けど、肉をたくさん揉んだんだぞ」
「肉を揉んだ?」
導師ジブルが食いついてくる。
「まあ、それより、早くたべよう!」
なんとか、ジブルの暴走を防ぐ。
「「「いただきます!」」」
予想通り、オブとノノには大好評。ハンバーグはとってもジューシーで美味しかった。自分で作ったというのもあると思うけど。ステーキかハンバーグ。僕の中では優劣つけがたいな。